~舌の肥えた人も唸る、社会福祉施設の焼き菓子はいかが?~

[ 天羽水音がチャリで行く!『デリシャスと占いの花道』 ]

その昔、私が関西でOLなんてものをしてた時代。
大阪に住んでいた私は休日になれば京都や神戸にお出掛けしていました。
関西に暮らしているというより、それこそ長い長い旅行をしている気分だったんですよね。

仕事は内勤なので服装も髪型も自由。ついでに業務中のお菓子とお茶も自由に食べてOKな職場だったので、月末で忙しくみんなの息が詰まりそうになる時は自前の茶葉を放出してお茶を煎れ、強制リフレッシュタイムを実施したりしていました。

そうすると他の人も自分の引き出しの中に潜ませているお菓子を出してきて、作業をしながらホンワカムードでお菓子のお裾分け大会が始まったりして、しんどい月末を乗り越えることができた…なんて思い出があります。

そんな私の引き出しに入ってたのはGーclefの紅茶、そしてお菓子のひとつが今回ご紹介する「さくさく工房」さんの焼き菓子たちです。

どうもこんにちは。天羽水音(あもうみずね)です。
私がさくさく工房さんのお菓子と出会ったのは、もうかなり前のこと。京都の嵐山にあった障害者福祉施設の委託販売所で、「随分と安いクッキーが売ってるなぁ…会社で食べるおやつにしよ~♪」と、軽い気持ちで手に取ったのがきっかけでした。

京都市紫野障害者授産所内にある「さくさく工房」さんへ!

さくさく工房さんの外観。京都市北合同福祉センター1Fにあります。

さくさく工房さんのクッキーのファンではあったものの、なかなかタイミングが合わなくて実店舗にお邪魔したことがなかったんですよ。
OL時代、委託先でさくさく工房さんの商品を手にするたびに「いつか、実店舗に行けたら…」「実店舗ならもっとたくさんのお菓子たちが…」と、想いを募らせていましたが、その「いつか」が、10年近くの時を経て訪れました…!

工房があるのは京都府京都市。
北大路駅というバスターミナルがある駅から歩いて13分ほどの場所です。
扉を開けた瞬間甘い香りが漂い、クッキーやパウンドケーキ、ブラウニー、ビスコッティなど、さまざまな焼き菓子が並んでいて、今まで委託販売所でクッキー数種類しか見たことがなかった私は、その光景を目の当たりにして「ああ…やっと実店舗に来ることできた…」と、嬉しさに胸がいっぱいになりました。


さくさく工房さんの実店舗は、焼き菓子だけではなく、手作りのマスクや小物入れ、アクセサリーなど障害を持つ方が作成した作品も多く展示、販売していて、ハンドメイドのマーケットに来たような楽しい気分になれます。

これまでの文面からお察しの方もいらっしゃるかとは思いますが、今回ご紹介するさくさく工房さんは20年も続く障害者授産所・就労継続支援B型(※)の焼き菓子屋さんなのです。

障害者雇用支援のお店としてはクロネコヤマトの福祉財団が運営する「スワンベーカリー」が一時期話題になった記憶があります。
昔は、障害者福祉施設が販売しているモノといえば陶器や布製品、缶バッチ、小物などが多く、区町村の催事・お祭りの町内会のスペースなどで販売していたイメージがありました。

ところが、今はその取り扱い商品や委託先が変化してきていて、パンや焼き菓子、漬物、おつまみナッツなど、実用的な食品の作成をする施設も、福祉施設の作成物の委託販売を受けているお店も増えているように思えます。
少なくとも私の認識では昔よりもたくさん、障害者さんが手を掛けて加工した食べ物をいろんなところで見掛けるようになったのは間違いないです。

福祉施設自体も委託だけでなく施設の一部を販売スペースに改造して「実店舗」として営業する所も見受けられますし、いつかの記事でも書きましたが、今は個人が自分のお店を持つと言う夢が叶えやすい時代。
その流れがさまざまな場所に来ているのかなぁとしみじみ考えてしまいます。

先にお話したスワンベーカリーを立ち上げたヤマト運輸の創業者、小倉昌男さんは「作品」ではなく、きちんと売れる「商品」を作ること、そして障害者の自立と社会参加の支援することを目的に、ベーカリーを運営していたそうですし、その影響もあるのかもしれませんね。

思い出の味、実食

OL時代、私の愉しみとしてティータイムに華を添えてくれた思い出の味。
それが今でも食べれることにまず感動。
なんせ、私がお世話になっていた関西方面のお店の半数以上が、業態が代わっていたり、閉店していたり、当時のメニューとはまったく違うものを扱っていたりと、変化していたから。

というわけで、思い出の味。さくさく工房さんのクッキーを食べていきます!

初めてさくさく工房さんと出会い、そのクッキーを食べたとき、強く印象を残してくれたのがこちらの抹茶クッキー。
なんとも鮮やかなグリーンは濃厚な抹茶の風格を漂わせ、遮光パッケージを開けた瞬間、上品な抹茶の香りがふわっと立ち昇ります。
若干のシャリシャリ感が心地いいクッキー生地はそれなりの甘さがありますが、甘さの後に抹茶のほろ苦さがやさしくやってきて、おいしい甘苦さが口の中にひろがり「そうそう! これだよ!」と、思わず唸ってしまいました。

この絶妙なバランスの抹茶クッキーの味に一瞬でトリコになったOL時代の私。
ここのクッキー目当てで京都駅や嵐山にある販売所までわざわざ足を延ばしたこともあったんですよ…。
そんな思い出の味はまったく色あせておらず、当時より肥えた今の舌で味わっても、やっぱりおいしかったです。
抹茶は非常に繊細な食材で、光で変色や風味が変わってしまうのですが、さくさく工房さんではちゃんと遮光パッケージを採用されているのもまた素晴らしさを感じるポイントです。

ふんわりとした優しい見た目のチーズクッキーは封をあけるとほんのりとチーズの香りがします。
少し厚めの成形ながら軽い口当たりで、サクサクした食感が楽しめるクッキーです。シンプルなナチュラルチーズがベースになった生地はクセもなく、おやつの時間が楽しくなるようなやさしいチーズ味。
チーズが食べられる人であればどんな人にでもお勧め出来るクッキーです。

先月ご紹介した西荻のカルフさんのチーズクッキーはちょっと特別な日に1枚1枚お酒やコーヒーなどとペアリングとしてじっくり味わうクッキーならば、さくさく工房さんのチーズクッキーはおやつの時間にザーっとひろげて、パクパク食べる日常使いのクッキーという感じ。食べ出したらなくなるまで止まらないおいしさ! 毎日食べられます!

花型がカワイイかぼちゃのクッキーは濃厚なかぼちゃ味!とまでいきませんが、ほっくりとしたかぼちゃの風味をしっかり感じる事が出来る味。
噛めば噛むほどじんわり来るやさしいかぼちゃの味と香りは、OL時代の私のおやつのひとつとして、抹茶の次に活躍した記憶があります。
かぼちゃの風味豊かで食感もサクサクなクッキーは毎日でもおやつにしたいおいしさ。何かに特化してるわけではないけれど、信頼と実績。安心安定。という言葉をカタチにしたような、手放しでお勧めできるクッキーです。

ほかにもいろいろ!

手前レモン。奥右側ジンジャー。左側紅茶。


実は今回、事務方の女子の皆さんにもお土産にひと通りのクッキーを食べてもらったんですが、紅茶のクッキーがいちばん好評だったように思います。
遮光パッケージに包まれた紅茶のクッキーは封を開けた途端にアールグレイの香りがふんわり。食べてみるとアールグレイの香りもモチロンなんですが、クッキーの生地も心なしかミルク感があって、ミルクティーのような印象に私もすっかり気に入ってしまいました。

レモンのクッキーはレモンピールがふんだんに入ってるタイプ。
他の物に比べたら最初の口当たりが堅めでガリガリ食べれる感じのクッキーでした。酸味はなく、レモンピールの香りが感じられるので、コーヒーにも紅茶にも合いそうです。

ジンジャークッキーはハッキリとしたショウガ味。
ショウガを甘い物と一緒に食べられるか食べられないかで好みが分かれるかも。
後味にハッキリとショウガの辛みを感じるので、苦手な人は苦手かもしれません…(そもそもショウガ苦手な人がショウガクッキー食べるかってのも疑問ですけども)。
ミルクティーに浸して食べても良さそうと感じました。

さくさく工房さんのクッキー、どれもこれも歯応えが良くて食べやすいので、ザクザク噛みたい人は特に気に入ると思いますし、お勧めしたいです!

クッキーは今回ご紹介したモノの他にもいろいろな種類があるので、好みに合うものも絶対あるはず! 他にもパウンドケーキ、ブラウニー、ビスコッティとお菓子としてのバリエーションも豊富。どれもこれも国産の小麦粉やバターを使用するなど、素材にこだわっています。

クッキーのお値段は大サイズは300円(+税)で、小サイズは100円(+税)というなんとも控えめなお値段。
これ、どう考えてもお値段に対してクォリティが釣り合わないんですよ…。
このレベルなら+100円~200円は取れると思うので、かなりお得です。

小サイズも1パックに4~5枚ほど入っていて、1回食べ切りとして大変優秀なサイズ感。毎日1袋…みたいな感じでおやつコントロールに有用そうだなと思いました。

おやつセットの通信販売もされていますが、イベントで大量にお菓子を発注したい、ギフトでバッチリ包んで欲しい…なども予算に応じて対応してくれるそうなので、気になるという人はお問い合わせしてみてくださいね。

障害者福祉施設、利用のススメ

市町村によってその数はまちまちだと思いますが、障害者福祉施設はそれぞれの得意とする作業をカタチにし、世に送り出しています。
製作以外にも受注作業としてチラシ折りや封入・封かんなどの内職から、ポスティング草むしりや清掃などの軽作業、施設によってはPCによるデータ入力作業ができる方がいるところもあるようです。

私の住んでいる地域の障害者福祉施設にも、素材にこだわったハイレベルなパンを提供してくれるベーカリーがあり、営業日や開いている時間が短いながらも、ご近所では「知る人ぞ知るパン屋さん」になっていて、こだわりの国産小麦とモルトを使った生地は素朴だけれど素朴ゆえに素材のよさがしっかり伝わる味で、パンにうるさい親戚も「これ、どこのパン?買ってきてみんなに配りたい」と言ってしまうほどです。

ほんのちょっと成形がいびつだったりすることもありますが、それも個性。
上質な素材を使ったおいしいものが安価で提供されているのですから、利用しない手はないですよね。

皆さんの家のご近所に障害者福祉施設はありますか? その施設はどんな活動をしている施設でしょうか。
知らない、自分には関係がない、興味がないと言う方もいるかもしれません。
けど、今回この記事を読んで、周囲の福祉施設の活動やお仕事を知ろうとする人が増えたら良いなぁと思います。

今回紹介したお店

さくさく工房
住所:京都市北区紫野雲林院町44番地の1
営業時間:10:00〜15:00(時間短縮営業中)
定休日:土曜、日曜、祝日休、12/29~1/3
電話:075-492-8821(Fax075-491-2138)
H  P:https://www.sogofukushi.jp/murasakinoj/shop-info/
Instagram:https://www.instagram.com/sakusakukoubou/

(※)就労継続支援B型とは、年齢や体力などの面で雇用契約を結んではたらくことが困難な方が、軽作業などの就労訓練をおこなうことができる福祉サービス。作業の対価をもらいながら、自分のペースで働く事が可能。

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