
~ハマの下町野毛で洋食の歴史訪問?!センターグリル~
[ 魔女が行く!ハッピーグルメ ]

桜木町、みなとみらい
桜木町の駅を降りると一番に目に入るのがこのみなとみらいの光景じゃないでしょうか。
写真中央に写っているゴンドラは2021年に開業したばかりのYOKOHAMA AIR CABIN。
桜木町駅から運河パークまでを結んでいる世界最先端のロープウェイです。
昔から文明の発達は海や川などの水辺からというのはそうなんですが、この現代においても横浜という街はわかりやすく一歩前へ進んでいる気がします。
近未来的なヴィジュアルにふらふらとゴンドラに乗り込んで行きたくなりますが、今日の目的地はこちらの近未来的なみなとみらいな横浜ではありません。

ハマの下町、野毛
近未来的なみなとみらいの反対方向に広がるハマの下町ディープゾーン野毛。
戦後の闇市から小規模の店舗が立ち並び、発展してきたのがこの場所。
ざっくりと歴史を調べてみると…。
1859年に横浜が開港して以来、元々は東海道と横浜港を繋ぐ通りとして山を切り通してできた地区で、お隣の関内は文字通り関所として、野毛は交通の要所として発展が始まります。
その後桜木町駅(当時は横浜駅として)の開業や、造船などの工場ができたことでさらにそのにぎわいは加速しました。
戦後、焼け野原となった横浜に米軍が進駐し、関内や伊勢佐木町、港湾施設など横浜の大部分が米軍に押収され外国人のための街になっていく中、野毛に追いやられた日本人達がひっそりと闇市や屋台を出しはじめ、そのにぎわいに人が人を呼び、日本のほとんどの地域が貧困に喘(あえ)ぐ中で「野毛に来ればなんでもそろう」と謳われるほどに人が多く集まる場所へと発展していったのだそうです。
あの、昭和の歌姫と呼ばれる美空ひばりが生まれたのも、ジャズの日本最古の発信地(喫茶)として営業している「ジャズ喫茶ちぐさ」があるのもこの地域で、掘れば掘るほど歴史が深く、とんでもないポテンシャルの街というのを思い知らされます。

人が多く集まれば何かしらがあるように、当時の野毛は決して治安が良いとは言えず、娼婦や職にあぶれた浮浪者、賭博場に集うごろつきなど、悪いイメージの部分もありました。
ですが、誰もが貧しい中、あらゆる人々がなんとしてでも生き残っていくためにこの場所にたどり着いたのだろうなぁと思うと、その人々の足掻(あが)いた場所である風景を思い起こさせてくれる野毛という地域は戦後の光と闇の片鱗を感じることができる「生ける(行ける)戦争の遺跡」と言えるんじゃないかな、なんて思ってしまいます。
掘れば掘るほど深く興味がわいて、もっともっと野毛について調べて知りたくなっちゃいますが、ひとまず歴史についてはこれくらいにして、本題へと進んで行きましょう。
実は、以前書いた占い記事でナポリタンの歴史に触れた際に発祥のお店として挙げた「センターグリル」という洋食屋さんがこの野毛地区に存在するのです!
それを知ったからには行くしかないと、横浜方面の用事もそこそこに、桜木町駅下車でトコトコと野毛までやってきたというワケなのです。

やってきましたセンターグリル
グーグルマップで場所を確認しながらたどり着いた先にあったのは、昭和21年創業の昔ながらの洋食屋さん。
青い看板兼屋根が印象的な昭和21年創業とは思えない綺麗な外観ですが、実はお隣の棟と合体し、広くなってリニューアルオープンしているんだそう。
お店の外観など事前情報を何も入れずに探していたので、もっと古めかしいお店を想像していて、最初は通り過ぎてしまいそうになりました(笑)。

店内に入るとすぐに2階へと案内されました。
ドキドキしながらちょっと狭めで急な階段を上がると、なんとも雰囲気のある小洒落たカフェのような開けた空間が広がっていて、思わず「おぉ…」と、声が出てしまいました。
この空間を見た時、洋というより和で古民家感があるなぁと感じたのですが、それもそのはず、どうやらこの場所に建っていた日本家屋を再利用しリニューアルしたんだそうです。
ちなみに訪問した時間はお昼のピークは完全に過ぎたであろう14時半~15時くらいだったので、解放的な店内をお写真に収めるコトができる程度にはのんびりとした空気が漂っておりました。
ゴールデンタイムはこの空間も人で埋まってるんでしょうね。


お店の端々にレトロアイテムなどが配置されているんですが、昔はこれらも現役で使われていたであろうと思いますし、今でも動かそうと思えば動くものもありそうな気がします。
日本家屋の再利用のことなども思うと、センターグリルさんが「古き善きを受け継ぐこと・守り繋ぐこと」を大事にされてるお店なんだろうなぁというのがよく伝わります。
店員さんもすごく親しみのあるおねえさんばっかりで、お店の内装の雰囲気や店員さんのお話など、みなさん本当にこのお店や街が好きなんだろうなぁと感じました。
そんなセンターグリルさん。ズラリ並んだ昔ながらの洋食メニューに目移りしながら頼んだのはやっぱりナポリタン。
さっそくご紹介していきたいと思います。

これが元祖・ケチャップナポリタン!
銀のプレートにしとやかに盛られたナポリタン。
パラッとかかった粉チーズ、香ばしいケチャップの香りに食欲が踊ります。
今でこそただの洋食メニューのひとつであるナポリタンですが、これが全ての始まりのレシピのナポリタンだと思うと、食べる前から胸がいっぱいになりそうです。
感動し過ぎなんじゃない?と思いますが、当時は高級品でホテルのレストランでしか食べられなかったスパゲッティナポリタン(こちらは生のトマトやローリエなどを使用したトマトソース)を庶民でも気軽に食べられるようにと生み出されたのがケチャップを使ったナポリタンで、センターグリルさんがやらなければナポリタンは一生高級品だったかもしれないんですよ。
それを踏まえ考えてみると、センターグリルさんは高級洋食が庶民レベルに、大衆食堂的な洋食へと舞い降りてきた瞬間に実在し、明確な記録もある歴史的なお店。
当時の歴史的な瞬間に生み出されたレシピのままの物が今だに食べられるなんて、こんなの感動しないわけないじゃないですか…。
と、いろいろ語りましたが、こんなおいしそうなものを前に感動だけでお腹をいっぱいにするわけにはいかないので、話を本筋にもどしていきますね。

添えられたポテトサラダ、キャベツ部分にはフレンチドレッシングが掛かっています。
ナポリタンで口がケチャップモードになってしまった時、合間合間に食べるポテトサラダやキャベツサラダがいい箸休めになります。
ナポリタンはもう見た目からわかる具だくさんっぷり。
センターグリルさんの「安くて栄養のあるおいしいものを、たくさんの人に気軽に食べてもらおう」というモットーが反映されているのがよくわかります。
ではさっそくいただきます!

甘味を出すためにクタッと焼き目が付くほどまでしっかり炒められた玉ねぎ、ケチャップの酸味はたっぷりのマーガリンを炒め油として使うことで、まろやかな味へと昇華しています。
この味の土台のおかげで、他の食材がナポリタンの登場人物としてしっかりと前に出てきてくれるのです。
厚切りのハムは歯応え抜群、薄いものは麺に絡めてもヨシ!歯応えがあるピーマンの苦味が良いアクセントになっていて、幼少期ピーマン嫌いだった私がピーマンを克服したメニューがナポリタンだったなぁと思い出させてくれました。
味の強さ的には今流行りがちなガツンとくるようなナポリタンではなく優しめですが、ホテルのレシピから降りてきたものなのできっと調理法も丁寧だったりするんだろうなと感じさせてくれる味なんですよね。
当時、国産マッシュルームはありはしたものの、生のものはホテルや高級レストランなどにしか出回らず、アメリカ産の輸入缶詰のマッシュルームが主流だったそう。
そういう意味でも缶マッシュルームを使っているというのは戦後、日本がアメリカ文化や物を受け入れた証拠でもあるのかなと思います。
全部ひっくるめて、この味付けが始まりと思うと胸が熱くなるナポリタンでした。

過去と未来の風景が交わる場所で
みなとみらい方面と野毛。陰と陽のような全く正反対とも言える世界が体験出来る桜木町は面白い街ですね。
実は私、生まれは横浜で、野毛にある動物園によく連れて行ったと母は言いますが、どうにも記憶がないんですよね。
センターグリルさんのメニューも、オムライス、チキンカツ、サラダがワンプレートで楽しめる浜ランチや、つなぎをほぼ使ってないお肉がぎゅっと詰まっているというハンバーグなど、他にも気になるものが沢山あって、野毛動物園共々再訪しなければと思う次第です。
それでは、次回の「魔女が行く!ハッピーグルメ」でお会いしましょう!

今回紹介したお店
米国洋食レストラン センターグリル
住所:横浜市中区花咲町1-9
TEL:045-241-7327 FAX:045-241-7396
横浜市営地下鉄「桜木町駅 徒歩5分」
京浜急行線「日ノ出町駅 徒歩5分」
みなとみらい線「馬車道駅 徒歩7分」
※駐車場ナシ。付近に有料駐車場アリ。
営業時間:11:00~22:30(L.O.21:15、ドリンクL.O.21:30)
定休日:月曜日・毎月第一火曜日
※月曜日が祝日の場合は火曜日が振替休日。
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