
日本は「世界で最も気遣いの訓練ができる地」である
[ 気遣いこそ現代最強のサバイバル術である ]
日本では、言語化されていない情報までもくみ取る力が問われる
先回まで気遣いの基本についていろいろとご紹介してきました。今回は気遣いのルーツに迫ります。
突然ですがあなたは、自分自身が気遣いは苦手だと思い込んでいませんか? しかし日本で生まれ育った人は誰もが、そこまで苦労せずとも、気遣いの達人になれるのです。
日本は島国で、文化や人々の価値観が近いので「あうんの呼吸」「ツーカーの仲」などといわれるように、多くを語らずに理解し合う暗黙知の文化があります。反対に人種のるつぼといわれるアメリカなどでは、はっきりと言葉で伝えることがコミュニケーションでは重要となります。
人類学者であるエドワード・T・ホール氏は、日本や中国のような空気を読む文化を「ハイコンテクスト文化」。欧米のように言葉で伝え合う文化を「ローコンテクスト文化」と提唱しました。
「ハイコンテクスト文化」では、直接的表現より単純・あいまいな表現が好まれます。言葉だけでなく「行間を読む」というコミュニケーションスキルが必要になります。つまり、想像力が要るのです。
「あれ取ってくれる?」「この前の件だけど」など普段の会話の中で、背景、前後関係、状況や脈絡がカットされていても、雰囲気で相手の言いたいことを理解することって、よくありますよね? それが「ハイコンテクスト文化」なのです。
仕事でもこんなことありませんか?
同僚「あー伝票計算が多くて、今日も残業しなきゃいけない…」
あなた「大丈夫? 何か手伝おうか?」
同僚「いいの? ありがとう!」

これも、同僚から直接的に「手伝ってくれる?」と聞かれたわけでありません。それでも、相手の雰囲気から「手伝った方がよさそうだ」と空気を読んだわけです。これがまさに「ハイコンテクスト文化」です。
海外では言語化しないほうが罪となる
一方、「ローコンテクスト文化」では直接的・明示的な表現が好まれます。
元客室乗務員で現在はインバウンド研修講師の友人は、次のように語っていました。「日本人は、仕事でも先輩の行動を見て、次に何が必要なのかを察して、進んでやる。そういう文化があるから、客室乗務員時代はいつも先輩の仕事の先読みをして、サポートができるように気遣っていた」。
しかし、現在は外国人向けにサービスの研修を担当すると、この常識は通じないといいます。海外の人は、やるべき仕事を具体的にはっきり教えてくれないのは不親切と考えるからです。日本人の上司が外国人スタッフに指示を出す場合、直接的で明確に行なうスキルが求められるのです。
例えば、日本で上司が、ミスが多い部下に「少しは考えて仕事をしなさい」といったら、部下は行間を読んで、「すいません。今度から気をつけます」と答えます。
しかし、外国人の部下の場合は、「何について考えるのですか?」と言われてしまいます。
ご主人がカナダ人の友人も「夫には、何でもはっきり言わないといけなくて。察するってことを夫はできないから」と言ってました。

外資系企業で活躍してきた友人は、論理的にしっかり説明しますし、相手にして欲しい行動について、明確に言葉でお願いし、察してもらうことを期待しません。
海外では、島国の日本と違って、前提となる共通する価値観が少ないからだといえます。日本人がよく使う「普通、こうするでしょう?」がないのです。だから、「ローコンテクスト文化」では、言語表現だけで情報全てを伝える工夫が必要なのです。
日本は気遣いレベル世界最高クラス
日本の「ハイコンテクスト文化」は、空気や相手の言葉の行間も読んでコミュニケーションをとるので、言われたことをやるのではなく、言われていないことを察して行う必要があります。ですから、気遣いの難易度が高いのです。
だからこそ「ハイコンテクスト文化」のコミュニケーションでは、キャリブレーション(調整)を繰り返し、相手の表情などから状況を察し、相手の言葉の行間から気持ちを汲むという想像力を鍛えることができます。日本は気遣いの訓練に最も適した地だといえるのです。
次回は、日本人のおもてなしの心についてお伝えします。

著書『なぜか好かれる人がやっている100の習慣』(明日香出版社)は4万9千部を超え、現在も重版中。「今、読むべき本」ランキング1位を総ナメにした話題作の続編として、待望の2冊目『なぜかうまくいく人の気遣い 100の習慣』(明日香出版社)が出版された。この新刊は発売前から重版がかかる等、今、注目のベストセラー作家である。複数ジャンルの心理学をベースとした独自の手法を持ち、婚活から就活、人間関係まで、語れないテーマはないと誇れるほどの活動幅を持つ。企業・大学・公共機関での登壇や個人カウンセリングは予約が取りにくい状況である。
資格・専門分野
国家資格 キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、色彩検定1級カラーセラピストパーソナルカラーアナリスト、米国NLP協会認定NLPマスタープラクティショナー日本交流分析協会認定インストラクター、協会認定骨格診断ファッションアナリスト。藤本梨恵子さんの紹介ページは→こちら
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