
季節感とゆとりを重視し、不測の事態と一期一会を意識 ~利休に学ぶおもてなしの心
[ 気遣いこそ現代最強のサバイバル術である ]
前回、わび茶の創始者こと千利休がまとめた茶道の基「利休七則」をご紹介しました。これが、日本のおもてなしの心を簡潔に表していることもお伝えしました。
前回の記事:「準備を怠らず、でも臨機応変に、そしてシンプルに ~利休に学ぶおもてなしの心」
「利休七則」
一、茶は服のよきように点て
二、炭は湯の沸くように置き
三、花は野にあるように
四、夏は涼しく冬暖かに
五、刻限は早目に
六、降らずとも傘の用意
七、相客に心せよ
前回は上記の一から三までをご説明しましたので、今回は続きとなる四から触れていきます。
四、夏は涼しく冬暖かに
「夏は涼しく冬暖かに」とは、季節感を大切にすべく五感に訴え、心地よさをつくることです。
料理ならば、夏は涼しげなガラスの器で、冬は暖かい土鍋で料理が出てくるとうれしくなりますよね?
病院で食事を作る栄養士さんたちも、行事食を作ることを大切にしています。入院中の患者様にとって、食べることは唯一の楽しみだからです。
ひな祭りならちらし寿司、ハロウィンの時期はカボチャグラタンなどに出会えれば、季節を感じるひと時となり気分が明るくなります。

私は婚活セミナーの講師も担当していますが、エアコンの「暑い・寒い」など温度に敏感で「寒くない?」などさりげなく相手を気遣える人はモテます。
五、刻限は早目に
これは、「ゆとりをもって、事にあたる」という意味。
千利休が伝えたのは、茶を出す側の心得だけではありません。自分がお客様の立場になった場合の心得も含みます。茶会を開いてくれたのに、自分はお客様だからと遅れて行っては、茶会の準備を台無しにしてしまいます。
お茶のお稽古の時間より早めにいくと、先生が畳を水拭きしたり、炭をちょうどよい温度にしたり、本当に心のこもった準備をされています。人は時間に余裕がないと、大業を成すこともできず、他人を気遣う余裕もなくなってしまうからです。
子供の頃、親から「早く、早く!」と急かされて育てられた人は、交流分析でいう「急げのドライバー」をもっています。急げのドライバーが一旦起動すると、気持ちは焦り、イライラし、物事を冷静に行なったり、他者を気遣うのは不可能になります。
車の運転もイライラするのは、時間のない時です。

就職活動の準備でも、応募書類の添削を提出期限ぎりぎりにもってくる人は、うまくいきません。
提出期限が迫っているので、完成度が高まるまで何度も添削することもできませんし、本人も焦っています。
何より、「この企業に入るために、しっかり準備し、心を込めて書類を書く」という誠実さが足りないため、採用担当者にそこは見透かされて、書類選考に通過しません。
前回も申し上げましたが、人の潜在意識はガラス張り。目には見えなくても、応募書類の上に本人の情熱がのって初めて、採用担当者の心に響くからです。
六、降らずとも傘の用意
不測の事態に備えること。これが「降らずとも傘の用意」の意味するもの。
友人と買い物へ行ったときのことです。エコバックを忘れた際、友人が「余分にあるから使って」とエコバックを貸してくれたことがあります。自分が困らないように傘やエコバックの用意をしている人はたくさんいますが、他人の分まで考えることができるのが気遣いです。
人望を集めている人やビジネスで成功している人は、自分のためだけではなく、他人のために準備をしています。
トップセールスパーソンで、経営者と仕事をすることが多いAさんは、経営に関する勉強会に参加し、経営に役立つ心理学も勉強しています。
私が「忙しいのに、どうしてそんなにもたくさん勉強するのですか?」と聞くと、Aさんは
「勉強したことが、お会いした誰かの役に立つと思うから」
と答えました。
誰かに出会う前から相手の役に立とうと勉強している人と、出会って必要になってから勉強しようという人では、戦う前から勝負はついています。出会う前から準備するという相手への気遣いが、相手の潜在意識に届くからです。
七、相客に心せよ
いよいよ最後となります。「相客に心せよ」とは「一期一会」のこと。もともと、茶道の心得であった一期一会は、「茶会は一生に一度のものと心得て、お客様に誠心誠意尽くせ。一生に一度の機会であると自覚して大切にせよ」という意味です。
お茶の世界は、その日招いたお客様を正客、正客に伴って来た方や急遽参加された方を相客と呼びます。お茶会では正客をもてなすのはもちろんですが、相客に粗相があってはいけません。
例えば、ビジネスでも本当に成功する人は、企業の社長から、その会社で掃除を担当している人にまで、分け隔てなく挨拶しますし親切です。
婚活パーティーでも、自分の目当ての女性にだけ優しく、その友人に冷たい男性はモテません。
女性同士でお手洗いに立った時に、その友人が「なに、あの人…。性格悪くない?」と、お目当ての女性と話していることはよくあります。筒抜けになっているのです。
逆に、友人にも感じよく接している人は「あの人いいよね!」と友人が加勢してくれるのです。人に放った気遣いは、ブーメランのように自分に返ってきます。

自分に得がありそうな人、自分のお目当ての人だけに意識が集中している人は、お茶会で言えば、正客だけをもてなしています。それではレベルが低いのです。
正客だけでなく相客にも配慮して茶会をする人が、「この茶会は最高だった!」と、参加者から喜ばれます。「相客に心せよ」は、普段から相手によって態度を変えない人ができることなのです。
以上、何度かにわたって気遣いについて、ご紹介してきました。
拙書『なぜかうまくいく人の気遣い100の習慣』(明日香出版社)では、心理学に基づいてさまざまな気遣について紹介しています。ご興味のある方はご覧いただければ幸いです。

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資格・専門分野
国家資格 キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、色彩検定1級カラーセラピストパーソナルカラーアナリスト、米国NLP協会認定NLPマスタープラクティショナー日本交流分析協会認定インストラクター、協会認定骨格診断ファッションアナリスト。藤本梨恵子さんの紹介ページは→こちら
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