
感情と行動の間に「感情の受け入れ→正体の突き止め」を必ずかませよ
[ 最も付き合いにくい「恥」という感情を味方につける方法 ]
実の娘による殺人事件の最たる原因も、感情の押さえつけだった
先回の記事「感情は生理現象。出さないと一大事。無駄な感情など存在しない。」で、感情は生理現象と同じであり、感情を良い・悪いに区別はできないとお伝えしました。
そういわれても、怒りなどネガティブな感情は良くない、抑え込まなくてはと考える人は多いのではないでしょうか。
もちろん、「馬鹿ヤロー、お前、何考えてるんだ!」と感情を爆発させ、相手を傷つければ、仕事ならパワハラとして問題になります。
とはいえ、「怒らないように」と我慢して自分の怒りを抑圧していくと、溜まりに溜まっていつか爆発します。
「いい子がキレる」と表現されることがありますが、押さえつけられていた感情が爆発した一つの例なのです。
9浪して医学部受験に失敗した女性が、母親をメッタ刺しにした事件がありました。母親を殺害した娘は20歳を超えても携帯電話禁止、入浴も母と一緒。国立大学の医学部に合格することを目標にひたすら机に向かわされる毎日。

娘が医学部を不合格になった事実を母親は受け入れられず、「合格した」と親戚には嘘をつき、娘に口裏を合わせるように強要。
9浪の末、母は娘を看護学科へ入学させたが、看護師ではなく助産師になるように誓約書まで書かせる。そして、看護師として就職が決まっていたが、母は辞退させ、助産師学校へ進学するように迫った。その受験に落ちると母は娘を夜通し罵倒。
今まで、母の命令にひたすら従ってきた娘は、ついに我慢の限界を超え殺害。教育虐待ともいえる状況の中で起こった悲劇です。
自分の思い通りに動かすと、子どもはこう育ってしまいます
抑圧された感情、我慢には必ず、限界が訪れるのです。
もちろん、こうした事件になるだけでなく、スパルタ教育により、無理やり勉強させられた子供が、ある日、字を書くことすら拒否する行動をとるなど、抑圧された感情はさまざまな行動として爆発します。
だから、感情は抑え込むものではなく、放置せず、向き合い、大切に扱う必要があるのです。
事件を起こした娘も事件後、閉鎖的で外部とのやりとりを断たれた中で、自分が母に虐待されているとも考えておらず、「うざい、死ね」と言われることも仕方ないと受け入れてしまった。そして、助けを求める状況であったのに、求める発想もなかったことがよくなかったと語っています。
自分の感情に気がついていれば、助けを求めることもできたかもしれません。
お母さんが笑うと子供が笑うように、お互いの感情の波長をあわせることを「情動調律」といいます。
子供が転んだ時に、親が「痛かったね。痛いの痛いの飛んでいけ〜」「頭をぶつけて、おどろいちゃったね」など声をかけることは、親子の情動調律となり、子供はこうして自分の感情を知り、大人になるに従い、自分自身の情動調律を行なうようになります。

しかし、親が子供の感情をうまく汲み取れないと情動調律ができず、自分の気持ちがわからない人になります。
「なぜだかわからないけどイライラする」
「なぜだかわからないけど満たされない」
という感じです。
きっと、この事件の母親は、娘をコントロールするために、娘の感情を汲むのではなく、罵倒し、恥をかかせることで自分だけに忠実な操り人形に仕立てようとしたのかもしれません。
だから娘自身も、自分の気持ちを知り適切に対処する方法を、学ぶ機会がなかったのかもしれません。
感情は抑圧するのではなく、感情に気づき面倒を見ていく、感情コントロールが重要なのです。
「何だかむしゃくしゃする」。その後の行動で結末は大きく変わる
私たちの行動は全て、感情をコントロールするために存在するともいえます。言い換えれば、どの行動も感情のコントロールがセットになっているということです。
「お茶を飲むのは水分補給ではありますが、ホッと一息入れるため」
「お風呂に入るのは体を洗うことではありますが、気持ちを休めるため」
という具合です。
そんな状況の中、上手な感情コントロールとは
「なんかむしゃくしゃするな」が良いか悪いか、とジャッジするのではなく、その感情があることをまずは認める。
その上で、
「友達と喧嘩したからかな?」
「なんであの言葉が気になるんだろう?」
「冷たく感じたからかな」
など様々に考えを巡らせ、場合によっては誰かに話を聞いてもらったりすることで、感情の正体を突き止めることです。
最後に、その感情から逃げず、上手に対応します。
しかし、反対に
「なんかむしゃくしゃするな」と同じくなった場合に、感情に向かうことなくいきなり、「悪口をネットに書きこむ」「暴飲暴食をする」「衝動買いしまくって散財する」「ギャンブルにのめり込む」
といったことで気持ちを晴らそうとすると、自分の気持ちに向き合っておらず、一時凌ぎで、根本的なケアができていないので、結局はうまくいきません。
しかも、財産や健康にダメージが残ることにもなりかねません。

感情のままに行動してしまうことは、自他ともに誰かを傷つける可能性があります。ある感情に突き動かされているのに自分で気がついていないのは、非常に危険なのです。
「今、自分が何を感じているのか?」を常に自分に冷静に問いかけていくことが大切です。
そして、何か行動したときに、「なぜ、自分はこの行動をしたのか?」と、常に自分の感情に気を配ることも大切です。
次回は、なかなか気づけない「恥」の感情についてご紹介します。

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資格・専門分野
国家資格 キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、色彩検定1級カラーセラピストパーソナルカラーアナリスト、米国NLP協会認定NLPマスタープラクティショナー日本交流分析協会認定インストラクター、協会認定骨格診断ファッションアナリスト。藤本梨恵子さんの紹介ページは→こちら
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