取扱超注意の「恥」。しかしこれも、必要不可欠な感情。

[ 最も付き合いにくい「恥」という感情を味方につける方法 ]

「恥」は、規範を守る役目として重要

先回の記事「感情と行動の間に「感情の受け入れ→正体の突き止め」を必ずかませよ」では、「自分の感情を抑圧せず、その感情に丁寧に向き合うのが大事であること」についてお伝えしました。

その先回の記事では、「9浪して医学部受験に失敗した女性が、母親をメッタ刺しにした事件」を題材としました。
簡単に振り返りましょう。母親は自分が高卒で学歴コンプレックスあったことを「恥」としており、娘を国立大学に入学させ、医者にすることで払拭しようとしました。娘に対しては、いい成績が出せないこと、親の期待に応えられないことは恥だと叱責することでコントロールしようとしたのです。
娘を自己実現の道具、人形として無自覚に利用しようとしたのでした。


本来は「恥」は、自己イメージを守るべく、仲間の和に属するための警告感情だといわれています。しかし「恥」は、こじらせてしまいやすい、取り扱いが難しい感情でもあるのです。

本連載の最初の記事「感情は生理現象。出さないと一大事。無駄な感情など存在しない。」にて、あらゆる感情は私たちの生存に役立つこともご説明しました。

健全な恥は行動を律して、規範やルールを守る働きがあります。小さな子供が知らない人に出会うと母親の後ろに隠れてしまうのも「恥じらい」であり、自我の目覚めでもあります。

「恥」は「自分軸」ではなく「他人軸」から生じる

しかし、機能不全を起こしやすいのも「恥」という感情の厄介な部分です。
恥が強まると他人への引け目になったり、「自分はダメだ」と感じることにつながったりします。

これは内面からくるものではなく、世間的に「こうでなければならない」という思いであり、他人軸の恥といえます。

例えば、自分自身で、学歴、社会的地位、外見、病気、性的マイノリティーなどで、本来の自分が心底求める価値とは関係なく、社会的な価値観を取り入れ、「人に知られたくない」と恥じるようになるのです。

そして、集団意識が高くなるほど、異端を排除する圧力が強いほど、恥の感情は強くなるといわれています。

日本は「恥」が強い文化が浸透しているといわれます。
恥が強いということは、「こうあらねばならない」という規範意識も強いということ。「男はこうあらねばならない」「人に迷惑をかけてはならない」というような掟(おきて)社会になりがちなのです。
昔の日本は「生き恥をさらすぐらいなら切腹する」というような文化があったほどでした。

現代でも仮面夫婦という言葉があるように、家庭内では仲が悪くても一歩外に出れば仲睦まじく演じる夫婦がいるほど、他人の目を気にします。

言葉として「世間に顔向けができない」「肩身が狭い」「面子を潰された」が存在し、恥は日常のさまざまな場面に顔を出します。

相手を支配するツールとなってしまう「恥」の恐ろしさ

だからこそ、集団の規律を維持して相手の行動をコントロールするのに、「恥」は役に立つのです。

例えば、子供が泣いている時、親は「そんな大きな声で泣いていると、みんなが見てるよ。恥ずかしいでしょ?」と言って子供を泣き止ませようとします。


他にも
「女のくせに生意気だ」
「男のくせに、意気地がない」
など、自分に従ってほしい、行動力を発揮してほしい方向へと、自分の希望を叶えるために相手に恥を与えていることが多々あります。

そして一番怖いのは「自分は恥ずかしい存在だ」と自分自身を恥じてしまうことです。
次回はそのあたりを詳しく説明します。


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