「恥」と「罪悪感」の違いとは?

[ 最も付き合いにくい「恥」という感情を味方につける方法 ]

教えられて抱くのが「罪悪感」、教えられずして抱くのが「恥」

先回の記事「世の中は「恥をかかすことができる材料」で満ち溢れている」では、私たちは「親や社会からの価値観の押し付け」などから、自分の存在そのものにかかわる恥「中核的な恥(コア・シェイム)」を生み出すというお話をしました。

今回は、「恥」と「罪悪感」の違いについてお伝えします。

恥をかいたと思うと顔が赤くなったり、心臓がドキドキしたり、震えがくることさえあります。恥が強い破壊力を持つのは、このようにさまざまな身体感覚と結びついた自意識感情だからといわれています。

よく似た感情に罪悪感がありますが、恥とはどう違うのでしょうか?

罪悪感は基本的感情でなく、生理的・神経的なものではなく、抽象的で文化的なものだといわれます。
恥は教えられなくても感じるのに対して、罪悪感はこういう行動はよくないよと教えられて感じるようになるといわれています。

「人のものを盗んではだめよ」
「掃除はサボっちゃだめ」
などと教えられるので、盗んだりサボったりすると罪悪感が湧いてきます。
その行動について後悔や反省をし、迷惑をかけた相手に謝りたい気持ちになることで問題を解決したい気持ちへと結びつきます。


恥の研究者であるヒューストン大学のブレネー・ブラウン博士は、恥と罪悪感の違いを<罪悪感とは「私は間違えた」という感覚で、恥は「私は間違いだ」という感覚だ>と表現しています。

つまり、「私は失敗した」から「私は悪い人間だ」となって「私=間違い」という感覚を抱くのが恥なのです。

恥は罪悪感よりも、人を追い込む

また、恥は理屈抜きの身体感覚として襲ってくるため、罪悪感よりもさらに強力な行動規範になるといわれています。

「穴があったら入りたい」
「世間に顔向けできない」
という感じで、自分で自分の行動を強力に拘束します。

そして、恥の感情は沈黙すること=他人に知られないようにすることで、維持されるといわれています。

完璧主義の人こそ強い「恥」の感情を持っているともいえると、私は考えています。

歌舞伎俳優が一家心中を図ったとされる事件で、セクハラ・パワハラ報道があり、本人は「週刊誌にあることないこと書かれ、もうダメだ。全てが虚しくなった。全員で死のう。死んで生まれ変わろうと思った」と語っていると報道がありました。

歌舞伎役者の彼は、普段から完璧主義で繊細な人だったといいます。

完璧で、どこから誰が見ても恥ずかしくないように、歌舞伎も脚本から舞台まで多くにかかわっていた。しかしマスコミ報道により、セクハラ・パワハラ、性的マイノリティーの暴露など、自分が隠しておきたい部分が世間にさらけ出されたことは、完璧主義の彼には耐え難いものだったのではないでしょうか。

恥が向かわせるゴールは「孤独」、最悪の場合は「死」…

罪悪感が周囲との関係修復を目指すのに対し、恥は関係から遠ざかり、孤立の方向に向かうといわれています。

まさに彼は死を選ぶことで、世間から遠ざかり孤独に終わる道を選ぼうとしたのです。

しかし、本当は、ピンチはチャンスと捉え、自分が今まで隠してきたものにも光を当て、パワハラなど謝るべきことは謝り、自分らしく自由に生きる道もあったのではと感じます。

古典芸能の世界で、歌舞伎という人間関係が狭い世界で生きる彼には、追い詰められたときにそういった発想が生まれず、「生き恥をさらすぐらいなら…」と一家心中を図ってしまったのかもしれません。


これほどまでに恥は、私たちの身体感覚と結びついた自意識感情として、強い破壊力を持っているのです。

次回は、恥と上手に向き合う方法をご紹介します。


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国家資格 キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、色彩検定1級カラーセラピストパーソナルカラーアナリスト、米国NLP協会認定NLPマスタープラクティショナー日本交流分析協会認定インストラクター、協会認定骨格診断ファッションアナリスト。藤本梨恵子さんの紹介ページは→こちら

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