会社員はオーナーよりも3つもの不遇を受けている

[ 膨大な富裕層から学んだ、新人社員でもできる!意外に知らないお金の話 ]

前回の記事「会社員は400年前からお金を搾取されている。しかしその解決策、極めて単純」で、会社員は会社という存在が世の中で生まれたときから不遇な立場に置かれており、それは令和のこの時代まで続いていることについて解説してきました。ここまでの内容だけでも、会社員がいかに厳しい状況であるかは何となく分かってきたと思います。

しかも、会社員とオーナーには他にも大きな違いがあります。それは、
会社員は税金や社会保険料を天引きされ放題
ということです。

そこで今回は、会社員とオーナーの違いについて、「税金」「社会保険料」「経費」の3つの観点から見ていきましょう。

目次
【1. 税金】会社員はオーナーよりも20%近く多く支払う
【2. 社会保険料】会社員が15%に対し、オーナーは0%
【3. 経費】仕事で本当に使う費用でも、会社員は経費として一切認められない
本業のみ、副業を追加、株式収入。実際の差額はどのくらい?

【1. 税金】会社員はオーナーよりも20%近く多く支払う

まず、税金の違いについて見ていきましょう。会社員が給料から納めている税金は、大きく「所得税」と「住民税」の2つです。

細かい計算については省略してざっくり説明すると、所得税・住民税は最終的に税率と呼ばれるパーセンテージを掛け算して計算します。

この税率については、住民税は一律10%と決まっていますが、所得税は超過累進税率と呼ばれるルールで、階段式に増えていくことになっています。要するに稼げば稼ぐほど、税金の割合が増えてしまう仕組みです。

年収4千万円以上になると所得税の税率は最高値となります。その最終的な所得税率は45%で、住民税10%が上乗せされると最大55%、実に半分以上も税金を支払うことになります。

もちろん、実際にはこれだけの額の給料まで辿り着くことは滅多にないですし、控除と呼ばれる一定の調整が入るため、収入から丸々取られるわけではありません。とはいえ、必死に働いて稼いだお金の大半が税金として持っていかれるのが真実。

一方で、株式オーナーはどうでしょうか? 答えは次のとおりです。

税率:所得税等15.315%+住民税5%=20.315%
株式から得られるのは譲渡益、配当金の2つがありますが、どちらも同じ税率です。

つまり、会社員は働けば働くほど高い税金を納める必要があるのに対して、株式オーナーは働かずして一定の税金を納めるだけで済みます。

さらに、最近話題になっている「つみたてNISA」や「iDeCo」を活用すれば、所得税・住民税ともに非課税。対象となる部分については税金が1円も発生しない可能性があります。

次に、ビジネスオーナーについて見ていきましょう。ビジネスオーナーのうちの会社オーナー。つまり自分の会社を持っている場合には、会社で稼いだお金に対して「法人税」「法人住民税」「法人事業税」といった税金が課されます。

色々あってややこしいので、すべてまとめてみましょう。世の会社のほとんどにあたる中小法人の税率の合計は次のとおりです。

税率:法人税・住民税・事業税 最大33.58%

会社員が納めるMAXの税率は55%と比べると、20%以上も低い税率です。

厳密に計算すると多少の誤差はありますし、会社のお金はプライベートで自由に使えるわけではありませんが、納める税金が少ないというイメージはつかめたのではないでしょうか。

このように、会社員の給料と株式・会社オーナーが納める税金はその額に大きな差があり、オーナーは大きく優遇されています。

【2. 社会保険料】会社員が15%に対し、オーナーは0%

続いて、社会保険料の違いについて見ていきましょう。まず、会社員が納めている社会保険料ですが、大きなものとしては「健康保険料」と「厚生年金保険料」の2つがあります。

こちらも税金と同様に稼げば稼ぐほど比率が増えていく仕組みとなっていて、標準報酬月額と呼ばれる区切りに応じて等級別に計算されます。毎月の給与額面がベースになっているイメージで構いません。

都道府県ごとに誤差はありますが、それぞれの負担率は次のようになります。
健康保険料10%+厚生年金保険料18.3%=28.3%

ただし、勤め先の企業が半分を負担してくれるので、実際の負担率は半分。つまり、
健康保険料5%+厚生年金保険料9.15%=14.15%
40歳になるとここからさらに介護保険料0.82%(折半後)が上乗せされます。

このほか、雇用保険や労災保険などの保険料も考慮すると、会社員は15%ほどの社会保険料を支払う計算になります。

一方で、株式オーナーはどうでしょうか?
答えはなんと0%。
株式から得られる収入に対して、社会保険料は原則かかりません。

次に、ビジネスオーナーのうち、サイドビジネスオーナー。つまり会社員が副業で稼ぐ収入の場合はどうでしょうか。
こちらも答えは0%です。

注意点こそありますが、副業収入に対して社会保険料はかかりません。同様に、不動産オーナーについても一定の場合には不動産収入に対して社会保険料は発生しないことになっています。

このように、社会保険料の計算においても、会社員とオーナーでは大きな開きがあるのです。

【3. 経費】仕事で本当に使う費用でも、会社員は経費として一切認められない

最後に、経費について見ていきましょう。大前提として、会社員の税金を計算するうえで、経費は基本認められていません。

そのため、仕事のために買った高級なスーツやカバン、高級時計、人脈づくりのために通ったセミナー代で税金が減ることはありません。

家賃や車、保険の支払いについても、プライベートに関するものとして、経費として取り扱うことはできません。

日頃仕事をサポートしてくれている家族に対して渡すお小遣いも、もちろん対象外。

唯一認められているのは給与所得控除と呼ばれる制度の範囲内だけ。しかし最低55万円だけしかなく、年収850万円を超えても上限は195万円。全国一律このくらいあれば十分でしょ?と国が勝手に決めた金額で、収入に応じて自動的に計算されます。

そのため、実際には毎月の給料から税金や社会保険料が天引きされた残りのお金でやりくりするしかありません。

一方で、ビジネスオーナーはどうでしょうか。

まず、税金の計算方法そのものから違います。会社員のように税金・社会保険料が自動で計算されて天引きされることはなく、確定申告で自分で計算・納付をします。

そしてこの際、収入から経費を差し引いて税金を計算することができます。この経費の中には、色んなものを入れることが可能。

仕事のために高級なスーツやカバン、高級時計、人脈づくりのために通ったセミナー代を経費に入れることができ、税金が減ります。家賃や車、保険の支払いについても、ビジネスに関するものは経費として取り扱うことが認められます。

日頃ビジネスをサポートしてくれている家族に対して渡すお小遣いも、もちろん対象になる可能性があります。

とはいえ何でもかんでも経費として認められるわけではありませんし、ビジネスに必要なものや常識的な範囲内には限られますが、1円も認められない会社員と比べると大きな違いといえるでしょう。

本業のみ、副業を追加、株式収入。実際の差額はどのくらい?

このように、会社員とオーナーでは「税金」「社会保険料」「経費」の面で大きな違いがあります。現代の資本主義社会ではオーナーが優遇される傾向があるため、同じ「稼ぐ」という行為でも、手元から出ていくお金には大きな違いが生まれている状況なのです。

では実際に、どの程度の差が生まれるのでしょうか?

年収400万円の会社員が、将来500万円の収入を得られるようになった場合で見比べてみましょう。なお、今回は便宜的に次の前提で計算しています。
・優遇制度である所得控除は社会保険料控除のみ
・社会保険料の計算方法は年収の15%を採用

まず、現時点で手残りはこの通りです。

① 年収400万円の場合
所得税   8.6万円
住民税   17.3万円
社会保険料 60万円
合計    約86万円 
手残り 400万円 − 86万円 = 314万円

必死に残業して年収が100万円アップするとこうなります。

② 年収500万円の場合
所得税   13.8万円
住民税   23.8万円
社会保険料 75万円
合計    約113万円 
手残り 500万円 − 113万円 = 387万円

手残りは73万円ほど増加していますが、一緒に税金・社会保険料が27万円ほど増えています。年収400万円のときの1月分の手取りくらいですね。

次に、年収400万円の会社員が、副業で自分の会社を作り、100万円の収入が加算された場合を見ていきましょう。
副業の収入は月換算すると毎月8.3万円(≒100万円÷12カ月)なので、副業収入としては十分現実的です。

③ 年収400万円+副業による自社売上100万円
所得税   8.6万円
住民税   17.3万円
社会保険料 60万円
法人税等  21.4万円
合計    約107万円 
手残り 500万円 − 107万円 = 393万円

本業の残業で稼いだ場合である②と比べると、6万円ほど手残りが多くなります。

このままでは意外と少ないですが、今回は便宜的に売上×税率で法人税を計算しているためです。実際には、先ほど解説した経費を差し引いた所得に対して税金が課されるため、最低7万円まで法人税を抑えることが出来ます。

家族にビジネスを手伝ってもらった場合には、給料として支払うことも可能です。家族側では、他に収入がなければ年収100万円までなら税金・社会保険料の負担はありません。

最後に、株式から100万円の収入が得られた場合はどうでしょう。

④ 年収400万円+株式収入100万円の場合
所得税   8.6万円
住民税   17.3万円
社会保険料 60万円
合計    約86万円 
手残り 500万円 − 86万円 = 414万円

残業による年収100万円アップである②の場合と比較すると、手残りは27万円ほどの増加です。
iDeCoの場合は手数料がかかりますし、受け取り方によって税金が発生する場合もありますが、働かずして残業よりも手残りが多くなるのは変わりません。

これらのテクニックを組み合わせることによって、世のオーナー達は負担を上手く回避しています。

もちろん、前提が変わればシミュレーション結果も異なりますが、同じ収入でも稼ぎ方によって手残りが変わるイメージはつかめたのではないでしょうか?

ここまでをまとめると、会社員は今も昔も不遇な立場。「せっせと必死に働いているにもかかわらず、天引きでお金を取られたい放題」という結論になります。

では、会社員に望みはないのでしょうか? 実はそれも違います。

会社員には会社員の強みがあります。むしろ、会社員だからこその強みも数多くします。では、それは何なのか?

「安定収入」
「低い社保負担」
「信用力」
の3つです。

次回の記事では、会社員のみが持つこれらの武器とその使い方についてお伝えしていきます。


大手税理士法人の富裕層対応チームで育ったさすらいのマガモ。
Twitterを中心に、家計・副業・投資に役立つお金の知識を発信中。
かもさんの紹介ページは→こちら



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