会社員×オーナーが令和の最適解?

[ 膨大な富裕層から学んだ、新人社員でもできる!意外に知らないお金の話 ]

前回までの記事で、「会社員は今も昔も不遇な立場。せっせと必死に働いているにもかかわらず、国や会社にお金を取られたい放題」という点について解説してきました。

ここまで散々「いかに会社員が搾取されているか」をお伝えしてきたので、「会社員なんて辞めて、独立・起業したほうがいいってこと?」と思われた方もいるかもしれません。

ですが、実はそれも違います。前回もお伝えしましたが「会社員=望みがない」というわけでもないからです。会社員には会社員の強みがあり、むしろ、会社員“だからこそ”の強みも数多くあります。

そこで今回は、会社員だけが持つ“強み”について、「安定収入」「低い社保負担」「信用力」の3つの観点から解説していきます。

目次
【1】安定収入~収入ゼロもいきなりクビもない
【2】低い社保負担~大きく3つも優遇される
【3】信用力~社長より社員のほうが高いのはなぜ?
会社員は、「安定収入」「低い社保負担」「信用力」の3つで優れている

【1】安定収入~収入ゼロもいきなりクビもない

最初に、会社員として働いている人が最も想像しやすい「安定収入」について見ていきましょう。会社員は、「サラリー(給料)マン」とも呼ばれるように、毎月決まった給料が会社から振り込まれるのが大きな特徴です。

「突然、何を当たり前のことを?」と思われたかもしれませんが、「“決まった時期”に“決まった金額”が振り込まれる」。実はこれ、会社員だけの常識であり特権。強みといえます。なぜなら、これは自営業者やフリーランスには保証されていない権利だからです。

これだけだとピンとこないと思うので、会社員と自営業者・フリーランスが結ぶ契約の違いを見比べていきましょう。

まず、会社員は基本的に勤め先の会社と「雇用契約」と呼ばれる契約を結びます。雇用契約とは、ざっくりいうと「会社のために働く代わりに、給料を払ってくださいね」という契約のことで、提供するものは”労働力”だけ。商品やサービスを求められることはありません。

そのため、会社の商品やサービスをクライアントに提供できなかったとしても、給料はいつも通り支払われます。

さらに、雇用契約を結んだ労働者は”一方的な解雇の禁止”という権利を得ることができます。これにより、「会社員が法に触れる犯罪を行った」「会社が倒産の危機に陥っている」など、よっぽどのことがない限りは解雇されることはありません。

つまり、仕事が終わらなかったりミスをしたりして商品やサービスを提供できなかったとしても、働いてさえいればOK。会社都合でいきなりクビになって収入がゼロになる、なんてことは基本的にはないということになります。

一方で、自営業者やフリーランスは提供するのは労働力ではなく商品・サービス。そもそも商品やサービスを買ってもらえるかどうかも分かりませんし、どれだけ働いたとしてもこれらを提供できなければ報酬を得ることはできません。

契約を結ぶとしても、請負契約・業務委託契約などになるのが一般的です。これらの契約は雇用契約と違って、納品・提供できなかったりミスがあったりした場合には、収入がゼロになる可能性があります。

また、会社員は病気やケガなどで働けなくなった際に、上司や他のメンバーのサポートがあります。もし損害が生じても、基本的には会社が負ってくれます。休んでいる間も社会保険で給料の約2/3が受け取れますし、復帰後にもまた仕事が回ってくることが通常です。

しかし、自営業者やフリーランスはそうはいきません。すべて自己責任・自己完結で損害賠償義務もあります。休んでいる間に収入や仕事がゼロになり、仕事も資産も一気になくなる…なんてことも。

このように、会社員として普段から当たり前のように受け取っている安定収入は、経営者やフリーランスにはない”大きな強み”といえます。

【2】低い社保負担~大きく3つも優遇される

次に、社会保険料の負担について見ていきましょう。

日本では、病気や事故が起きたときに高額な医療費で生活が破綻する人が出ないように、費用負担を軽減してくれる「国民皆保険」と呼ばれる医療保険制度があります。これは、入りたい人だけが入る保険ではなく、国民全員が次のどれかに加入しなければいけません。

・健康保険組合
・協会けんぽ
・共済組合
・国民健康保険
・後期高齢者医療制度

図で見るとこのようになっています。

※出典:日本医師会「日本の医療保険制度の仕組み」

このように、国民全員が何かしらの公的医療保険に加入することになるのですが、これらの保険は強制加入にもかかわらず、どれに入るのかによって社会保険料の負担額が異なります。

今回は該当者の多い次の2つを見比べてみましょう。
・協会けんぽ…中小企業の会社員向け
・国民健康保険(組合国保を除く)…自営業者、フリーランス等向け

では、この2つのうち、社会保険料の負担が少なくなりやすいのはどちらか。
結論はタイトルにもある通り、会社員が加入する「協会けんぽ」です。

その原因は、協会けんぽが持つ次の3つの特徴にあります。
①保険料率が低く均等割がない
②会社が保険料を折半してくれる
③扶養認定の制度がある

①保険料率が低く均等割がない

国民健康保険と協会けんぽは、どちらも収入額に応じて増えていく仕組みになっていますが、収入に対して乗じる保険料率は異なります。また、協会けんぽには均等割がありません。

先に国民健康保険から具体的に見ていきましょう。

国民健康保険は内訳が分かれており、【A:医療分】【B:支援分】【C:介護分】の3つの負担分があります。

このA・B・Cにはそれぞれ自治体が決定した割合があり、それぞれには収入額に乗じて「所得割」と呼ばれる保険料が存在します。さらに、A・B・Cのそれぞれに「均等割」と呼ばれる固定額が決まっており、世帯内の保険加入者数に比例して増えていきます。

他にも、自治体によっては世帯ごとに負担する「平等割」や保険加入者の資産に応じて負担する「資産割」などがありますが、基本的には上記の「所得割」と「均等割」の合計額が国民健康保険料と呼ばれるものです。

このままだとよく分からないと思うので、東京都港区(令和4年度)を例に数字で見てみましょう。
※分かりやすさ重視で、「年収400万円、収入=所得」と仮定しています。

まず、A・B・Cの所得割・均等割をそれぞれ計算します。

【A 医療分】
所得割400万円 × 7.16% = 286,400円
均等割              =    42,100円  計328,500円

【B:支援分】
所得割400万円 × 2.28% =   91,200円
均等割              =    13,200円  計104,400円

【C:介護分】
所得割400万円 × 1.98% =   79,200円
均等割              =    16,600円  計 95,800円

この中から、保険加入者の年齢に応じてA・B・Cを組み合わせます。
〜39歳      A+B    = 432,900円
40歳〜64歳 A+B+C  = 528,700円 
65歳〜74歳 A+B+介護保険料(区市町村の介護保険担当の部署から通知)
75歳〜      後期高齢者医療制度へ移行

結果として、最大では528,700円を負担することになり、所得割だけでも9.44〜11.42%の保険料率になります。

一方で、協会けんぽの場合には、収入×健康保険料率で保険料が決まります。

厳密には、標準報酬月額という数値を都道府県が公表している保険料額表に当てはめて計算しますが、今回は国民健康保険料と同じ前提でざっくり計算します。

結果はこのとおりです。 
〜39歳      400万円 × 9.81% = 392,400円
40歳〜74歳 400万円 × 11.45% = 458,000円

均等割の負担がないため、この時点で最大負担額は国民健康保険料を下回っています。

②会社が保険料を折半してくれる

さらに、協会けんぽは勤め先の会社が保険料の半分を負担してくれます。

そのため、最終的には次のようになります。
〜39歳      400万円 × 4.905% = 196,200円
40歳〜74歳 400万円 × 5.725%  = 229,000円

国民健康保険料の432,900〜528,700円と比べると、半分以上も負担額が抑えられます。

③扶養認定の制度がある

また、協会けんぽには、「扶養認定」という制度があります。

「協会けんぽ加入者の家族は、保険料を納めなくてもいいよ」という制度で、年収の少ない家族が認定対象になっています。

よく聞く「130万円の壁」はこの認定対象になるかどうかの話で、「(社会保険上の)扶養から外れる」は認定対象から外れて国民健康保険に加入することをいいます。

一方で、国民健康保険には「扶養認定」の制度が存在しないため、世帯内の保険加入者ひとりひとりに対し、社会保険料が計算されることになります。

もし家族の収入がゼロだとしても「均等割」は関係なく発生するため、協会けんぽと比べて保険料が高くなりがちです。

【3】信用力~社長より社員のほうが高いのはなぜ?

最後に、信用力について見ていきましょう。

具体的な内容に入る前に一つ質問です。

信用力が高い職業は次のうちどれだと思いますか?
A 社長(中小企業)
B 地主・資産家
C 医者・弁護士
D 公務員
E 会社員(中小企業)
F フリーランス

答えはBの地主・資産家です。

では、次に信用力が高いのはどの職業でしょう。

答えはCの医者・弁護士です。
ここまでは予想通りだったのではないでしょうか?

では、医者・弁護士と同率2位の職業はどれでしょうか?

そう、Aの社長(中小企業)
…ではなくDの公務員です。

全順位は次の通りです。
1位 地主・資産家
2位 医者・弁護士・公務員
3位 会社員(中小企業)
4位 社長(中小企業)・フリーランス

すべて正解できましたか?

記事の趣旨的に会社員が意外と高めなのは予想できたかもしれませんが、2位の公務員や4位の社長など、意外なものもあったのではないでしょうか。

それでは、ランキングの基準にもなっている、「信用力」の具体的な考え方を見ていきましょう。
ここが分かるようになれば、会社員の強みとその磨き方が理解できるはずです。

まず、職業による「信用力」の土台を確認していきます。
大きく分けると次の3つです。
①資金力
②高収入
③安定性
この3つを満たしているほど、銀行からお金を借りやすくなったり、家を借りやすくなったりします。
「属性」と呼ばれたりするものの一部で、こういったステータスを高めることを「属性を磨く」といいます。

では、なぜ属性が磨かれると信用力が高まるのでしょうか?

まず①の資金力ですが、これは分かりやすいかもしれません。
資金力がある=お金を回収しやすいからです。

ランキング1位の地主・資産家がまさにこれで、事業に失敗して手元にお金がなかったとしても不動産や株式を売却したりすればお金が用意できます。

一方で、4位の社長やフリーランスは事業に失敗したときに資産が手元にないため、すぐにお金を用意する方法がありません。

お金や家を借りる必要のない人ほど借りやすいという悲しい現実が見えてきますね。

次に②の高収入です。
2位の医者・弁護士がこれに当てはまります。

高収入の職業は求められるスキルや知識のレベル、社会的な地位、世間的な需要などが高い傾向にあるため、他の職業と比べて信用力があると判断されます。

ここまでは想像通りだと思いますが、ではなぜ同率2位に公務員が入っているのでしょうか?
一般的には高収入なイメージの社長が4位になっているのでしょうか?

その答えが③の安定性です。
上記のとおり高収入の職業は信用力が高く評価されやすいですが、その状態が一時的なものと判断されると話が変わってきます。

貸す側からすると、一時的に大金を借りてくれる・払ってくれるリターンよりも、その後に返してもらえない・払ってくれなくなるリスクの方が重要度が高いからです。

そのため、コンスタントにお金を稼いで、コンスタントに返済や支払いをしてくれる可能性の高い公務員は、医者や弁護士と並んでランキング上位に食い込みます。

一見すると信用力の高そうな中小企業の社長が、フリーランスと同順位なのもこの理由です。
同じ理由で、医者や弁護士も”雇われ”の立場の方が、実は信用力が高くなることもあります。

このように、信用力を高める上で「安定性」は重要な要素です。

そして、本記事の冒頭にお伝えした通り、会社員はこの「安定性」=「安定収入」を持っています。

会社員が家を借りられるのも、クレジットカードを作れるのも、マイホームのローンが組めるのも、すべてこの「安定収入」=「安定性」=「信用力」のおかげです。

また、この「安定性」があれば日々の生活が破綻する可能性は少ないので、コツコツ資産を増やして「資金力」を手に入れたり、転職やスキルアップで「高収入」を狙うための土台にもなります。

資産家のような「資金力」という武器や、医者のような「高収入」という武器はないかもしれませんが、社長やフリーランスと違って、この「安定性」という武器で戦えます。

会社員は、「安定収入」「低い社保負担」「信用力」の3つで優れている

このように、会社員は「安定収入」「低い社保負担」「信用力」という大きな”強み”を持っています。

そもそも、日本国民の約9割が給料を貰う側であることを考えると「会社員=望みはない」なんてことにはなりません。でなければ、会社員を選ぶ人は誰もいないはずだからです。

会社員に望みがないわけではありません。
会社員に突きつけられているのは「お金持ちにはなりにくい」という現実だけです。

「安定収入」が支給される代わりに、収入が跳ね上がることはない。
「低い社保負担」で保険に入れる代わりに、自分ではコントロールできない。
「信用力」がすぐ手に入る代わりに、個人として評価されることはない。

強みを得た結果、「お金持ち」にはなりにくいだけです。

ここまでの内容をまとめると、
「会社員は搾取されている」「オーナーは優遇されている」「会社員も優遇されている」
という結論になります。

なんとなく分かったような分からないような…。
結局どうすればいいの?と思われたのではないでしょうか。

その答えがタイトルにある「会社員×オーナー」になることです。

会社員のままオーナーになって、すべての優遇を受けながら搾取から抜け出す。
これが令和を生きる会社員の新しい戦い方です。

次回の記事では、会社員×オーナーを目指す「オーナー会社員ビギナー」向けに、初心者必携の羅針盤について解説していきます。


大手税理士法人の富裕層対応チームで育ったさすらいのマガモ。
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