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毛づくろいをナメてはいけない。それは人間でも…!?

[ 獣医師が教える! 飼うのも動物園に行くのにも役立つ&楽しくなる動物の話 ]

頂点に立つには、腕っぷしよりもコレが大事

サル山の上段の平らな場所で、雌の中で一番力のある「メグ」が横になっていました。その横で「キンタ」が、せっせと「メグ」に毛づくろいをしていました。その下の段では、体格が一番大きい第2位の雄の「モンタ」が、比較的若い雌に毛づくろいをさせていました。

かつての頂点に君臨していた雄の「カンタ」亡き後、本来なら一番強い「モンタ」がボス猿になると思っていたのですが…。「カンタ」がいた場所に「キンタ」がいるということは、「カンタ」に代わりボス猿になったのは、第3位だった「キンタ」なのです。

動物園のように閉ざされた空間において群れの中で権力を保つには、腕力だけではなく雌の信頼が重要なようです。キンタとモンタの違いはここにありました。キンタはモンタよりケンカは弱いのですが、雌たちには優しく雌たちにモテモテで、絶大な支持がありました。

こんなにたくさんあった! 毛づくろいの効果

そもそも、なぜニホンザルは毛づくろいをするのか? 毛づくろいをしている様子を観察してみると、毛づくろいの意味が分かります。

何か口に運んでいるのをよく目にするでしょう。口に運んでいるのは、何とシラミです。シラミをとるために毛づくろいをしているのです。もう一度繰り返しますが、「ノミ」ではなく「シラミ」です。ニホンザルには、ノミは寄生しません。その他にも毛づくろいは、フケをとるなど体をきれいにするために行います。

毛づくろいされているサルは、目を閉じ気持ちよさそうにし、幸せそうな顔をしています。手足の力は抜け、まったく無防備、とってもリラックスしています。

これは、単純にマッサージ効果により気持ちいい以外にも、脳内の神経伝達物質で脳内麻薬と呼ばれるエンドルフィンが分泌されるためです。これが出ると、とっても幸せを感じるとともに痛みを抑えることができます。

毛づくろいしている方も幸せそう。これは、相手が幸せを感じていると、エンドルフィンが出るからなのかもしれません。そして時々、されていた方がしてあげるなど交代をします。

毛づくろいはお互いが気持ちよくなるため、愛情表現のためにします。ケンカした後などに、あちこちで毛づくろいが始まります。毛づくろいによって興奮を冷まし、心を休めて不安を和らげられるのです。

毛づくろいをしている時は、敵意はありません。「あなたと戦う意志がない」「ケンカしたくない」という意志表示になります。されているほうも全く無防備の姿なので、「あなたを信用します」ということになります。そのことにより群れ全体の不安が減るうえ、それぞれの順位が明確になり無駄な争いが減ります。サルの社会の絆のために、毛づくろいが存在するのです。

毛づくろいで生存確率がアップする

猫は起きている時間の4分の1は、毛づくろいをしています。猫はとってもきれい好きで、毛についた汚れをとることにより、匂いをとります。

敵に居場所がばれないために、体をきれいにするのです。そのため、食後には必ずといっていいほど顔を洗うのですが、口の周りについた汚れを取って匂いを消しているのです。

ザラザラの舌はブラッシングの代わりとなり、毛玉ができるのを防ぎます。毛づくろいの時の顔を見ると、幸せそうでとってもリラックスしています。

緊張や不安を取り除く効果もあります。ケンカした後などによく行います。

それ以外にもニホンザル同様、お互いになめ合いによって「あなたが好きですよ」の愛情表現や、信頼関係を築く役割もあります。

しかし、我が家の愛猫ラン丸とロン丸は、ラン丸がしつこくやりすぎるため、途中からケンカになってしまうなど信頼関係には役立っていません。

食事や排せつにまで関係する重要な行為

犬も猫も子供の頃は、母親にたくさんなめられます。手が器用ではない生き物は、なめる行動で毛づくろいをするのです。気持ちがよく、エンドルフィンやオキシトシンが出るため、不安を取り除く効果があります。

赤ちゃんの時は、お母さんになめてもらうことにより、その刺激によりオシッコやウンチを出します。ミルクを飲んだ後も、汚れをとるため口の周りをなめられます。

赤ちゃんはお腹がすくと、お母さんのオッパイをなめます、その刺激により乳が出ます。離乳の時は、お母さんの口の周りをなめることにより、「お腹がすいた」アピール。口の中で柔らかくした離乳食をもらいます。

僕は、よく犬や猫に口をペロペロされます。マスクをしていても、その上からもなめられるのです。口の周りがヨダレだらけになろうとも、「僕のことが大好き」という愛情表現ですから、大歓迎。

お互いになめたり、なめられることにより、愛情や安心感が生まれます。僕もなめ返してあげたいのですが、飼い主さんに見られたら気持ち悪がられるのと、人間としてのマナーがあるためしません。そのかわり、力いっぱいなでてあげます。

たくさんなめられるとストレスに強くなる

できるだけ長い期間お母さんとともに生活し、たくさんなめられた動物たちは、大人になっても不安が少なく、ストレスに強くなります。

今までたくさんの動物たち、チンパンジー・オランウータン・レッサーパンダ・ツキノワグマ・タヌキ・キツネ・コウモリ・ウサギ・キリン・ニホンザルなどなど、母親の代わりにたくさんの生き物を僕は育ててきました。

とはいえ姿形は大きくなりますが、僕の子育てではお尻など体をなめてあげるなどができず、本当の親による愛情を与えられません。そのため、心の不安をとるのは難しく、うまく群れに戻れず、いつもビクビクしていて、ちょっとした刺激でパニックになる大人になってしまいました。

人間も毛づくろいをすれば、無駄な争いが減るのでは? いま世界で最も攻撃的であり、不安でいっぱい、ストレスを感じている人間、某国の大統領こと「ウラジーミル・プー○○」に誰かが毛づくろいしてあげれば、戦争が終わるのでは? あ! でも、毛がなかった…。

しかし、大丈夫。毛づくろいの代わりに、頭をトントン、手をつなぐ、ハグしてあげるなどでもエンドルフィンが出ますから。

あ、やっちゃった…。食卓のテーブルで、大好きなカルピスを飲みながら、この原稿を書いていた時のことです。パソコンの向こうの大福を取ろうとした僕の手がコップにあたり、テーブルの上にカルピスが広がっていきました。

その先には妻の本がおいてあります。間に合いませんでした。本はみるみるカルピスを吸い取っていきます。

それを見ていた妻は、鬼の形相で僕に近づいてきました。慌てた僕は、すかさず両腕を広げ妻を受け止めハグをします。

これで妻からエンドルフィンが出て、怒りは収まるはず…。あれ? おっかしいな。僕の頬には、見事に妻の手型が付きました。ハグではなく、頭トントンがよかったのかなぁ??


子供の頃から生き物が大好き。
“蟻の飼育”から始まり“象の治療”まで、たくさんの生き物と接してきました。そんな経験から生き物の不思議を発信します。
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