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つかむと毛がどんどん抜けていく…。これって病気なの??

[ 獣医師が教える! 飼うのも動物園に行くのにも役立つ&楽しくなる動物の話 ]

上着は着ていてズボンははいていない柴犬

11月に入り、朝晩寒い日が続いています。そんなある日、柴犬の「ゴロー」こと4才のオスがやってきました。

北澤「どうしました?」
飼い主「先週ぐらいから全身をしょっちゅう痒(か)いているので、心配で捕まえようとしたら、掴(つか)んだ腰の毛が“ずぼっと”抜けたの…。全部抜けたんです。こんなに若いのに禿げちゃうの…??」

確かにゴローちゃんの腰の部分には、ソフトボール大にへこんで段差のようになっている箇所があります。でもよく見ると、抜けた毛の下には短い毛が生えていました。そのため、短い毛と長い毛が段差になっていたのです。

診察台の上にのせて毛を引っ張ってみると、ほとんど力を入れなくても抜けます。僕は抜くのがあまりに楽しくてついついやりすぎてしまい、気づけばゴローちゃんの腰回りは、短い毛ばかりに。上着は着ているがズボンをはいていないような、何だか変な生き物になってしまいました。

そんな僕とゴローちゃんの姿を、飼い主さんが不安そうに見ていました。僕はあわてて「つい夢中になって申し訳ない」と謝ります。

犬には2種類の毛が存在する

これは病気ではありません。換毛です。犬の毛には、雨や日光から体を守る「トップコート」と呼ばれる上毛と、暑さや寒さから体を守る保温のための「アンダーコート」と呼ばれる下毛の2種類があります。

それによって、上毛だけの「シングルコート」の犬種と、上毛と下毛の2層構造の被毛を持つ「ダブルコート」の犬種に分けることができます。換毛があるのは、ダブルコートを持つ犬種です。

僕たち人間は、クローゼットの夏服を冬服へと取り替えます。一方で犬は洋服の代わりに、毛を夏仕様から冬仕様へと取り替えているのです。

「四季がはっきりしている日本のダブルコートの在来種柴犬」のような日本犬の毛は、びっくりするぐらい抜けるので、今回のように飼い主さんが病気と勘違いしてしまうこともあります。

ちなみにシングルコートのトイプードルやヨークシャテリア、マルチーズなどで大量に毛が抜けるのは病気。飼い主さんのみなさんは、今隣にいるワンちゃんが何コートなのか知ることが大切です。

1メートルもの毛を引きずる動物もいます

猫も換毛します。猫は舌で舐(な)めて毛づくろいをするため、換毛の時は抜けた毛を食べてしまうことがあります。その毛がお腹にたまったりすることで、ひどい便秘を起こしてしまうことも。最悪の場合は手術をしなくてはならないこともあるのです。

毛が抜け始めたら、とにかくブラッシングすることが大事。

動物園で換毛の量がすごいのがカモシカでした。ふかふかの冬毛が一気に抜けるため、大きなぼろ雑巾を体にまとったようになります。抜け始めた毛がつながって1メートルもの長さになり、それをそのまま引きずることもありました。

カモシカは本来山林を走り回っているので、木々の枝や岩、草などがブラシ替わりになり、夏毛と冬毛は短期間に抜け替わります。しかし動物園などの施設では木々が少ないため、なかなか抜けず、抜け毛を引きずるようなことが起こるのです。そのため古くなったデッキブラシを壁に貼り付けるなど、毛が抜ける工夫をしていました。

家で飼ってるウサギは毛の色がずっと一緒なのはなぜ?

暑さ寒さのためだけの換毛ではないのが、雪に覆われる地域に住むニホンノウサギ。夏毛から冬毛に替わるとき、密な暖かい毛に替わるだけでなく、毛の色も茶色から白に変わります。

白くなることにより雪に溶け込み、見つかりにくくなるのです。逆に草木が生えそろう夏に白いままだと目立ってしまうので、茶色い毛に換わります。

あれ、でも家のウサギは毛の色なんて変わりませんよね? そうなんです。飼いウサギの祖先は「ノウサギ」とは違う、本来日本にはいない「アナウサギ」という仲間のため、換毛はあるのですが色の変化は見られないのです。

換毛とは少し違うのですが、換羽(羽が抜け替わる)のあるペンギンは、初夏の時期に一気に羽が抜け替わります。首の周りだけ残ってマフラーをまいたような姿になったり、逆に頭周りから抜けて、マントを羽織ったようになったりなど、とっても個性的な姿になります。抜けた小さな羽をみると、やはりペンギンも鳥なのだなと感じます。

ペンギンの羽の大事な機能としては、撥水(はっすい)作用が挙げられます。水を撥(はじ)いてくれる羽がなくなる換羽中は水の中に入るとおぼれてしまうため、野生では餌がとれない状態になります。動物園のペンギンは餌を取りに水中に入る必要はありませんが、本能からか換毛中の2週間はほとんど餌を食べなくなります。

「抜け毛の病気」と「換毛」の違いは?

抜けた下に毛が全く生えていない時は、換毛ではなく脱毛です。見えた皮膚が赤い時は炎症、皮膚がブツブツしていたら湿疹か菌の感染です。

フケが大量に出ている時は、乾燥肌か菌の感染。毛が抜けているところが部分的に痒い時は、病気かもしれません。

全体的に毛が抜け、体全体が痒い時は換毛によるかゆみです。紛らわしいので注意が必要です。

皮膚病の痒さは、ワンちゃんネコちゃんにとってとても辛いことです。早めに動物病院に相談してください。脱毛など毛の問題には、よいサプリもありますよ。

明確な換毛期がないけど、大丈夫なの…??

次に、換毛中はどうすればいいのか? とにかくブラッシングが大事です。

古い毛が残ったままでいると、古く抜けるべき毛が新しい毛に絡んで毛玉になってしまいます。そうなると皮膚が蒸れて臭いが生じたり、皮膚病になったりすることがあります。

シャンプーをするときも、その前によくブラッシングして、古い毛をとってからシャンプーをしてあげましょう。よくブラッシングしてからシャンプーをすると、シャンプーの量は少なくできますし、乾かす時間も半分近くで済むことだってあります。

1年中ダラダラと毛が抜けることもあります。それは、どうしてでしょうか? 実は、エアコンによって快適な温度の中で飼われている最近のペットには、明確な換毛期がなく、1年を通して少しずつ毛が抜けることがあります。最近は各家庭内の環境によって、同じ種類の犬や猫でも換毛の時期に差が見られている気もします。

そういえば最近、僕の枕に抜けた毛が多くつくようになってきたような…。寒くなってきたから換毛のせいでしょう。人間には珍しく、僕の髪の毛はダブルコートなのです。決して老化現象ではありません。

そう言い聞かせる僕に、妻の鋭い指摘が飛んできます。

「そういえば最近、あなたの毛薄くなってきてない? おでこも広くなってきたみたいだし、それってやっぱり…」
さらに妻は言います。「今夜のごはんは、ひじきの煮物、ワカメたっぷりの味噌汁にしてあげるね」。
今日ほど妻が頼もしいと思った日は、なかったかもしれません。


子供の頃から生き物が大好き。
“蟻の飼育”から始まり“象の治療”まで、たくさんの生き物と接してきました。そんな経験から生き物の不思議を発信します。
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