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動物が花粉症になるとどうなるの? で、何をすればいいの?

[ 獣医師が教える! 飼うのも動物園に行くのにも役立つ&楽しくなる動物の話 ]

犬や猫は花粉症にかかるとどうなるの?

朝、玄関から出ると途端にくしゃみが出ます。コロナ対策でつけていたマスクが、あっという間に鼻水でガビガビになりました。目はかゆいし、頭が重い。今年の症状は今までで一番ひどい…。

テレビでも連日、今年の花粉量が大変なことになっていると報道されています。スギ花粉が舞う画像を見るだけでも「ふぇ~っくしょん!」。

今年は人間ばかりではなく、ワンちゃん、ネコちゃんの花粉症も多いような感じがします。桜の開花ニュースが流れ始めると同時に、柴犬の貫太郎がやってきました。飼い主の西沢さんは、黄色いフレームのゴーグルのような眼鏡をつけていました(ははぁ、西沢さんも花粉症なんだな)。

北澤「今日はどうしました?」
西沢「最近は貫太郎、頭を振ることが多くて。あと、耳をいつも掻(か)いているんだよね」

貫太郎くんの耳の中を見ると真っ赤、外耳炎です。

北澤「他にはどんな症状が出ていますか?」
西沢「うーん…、あ! よく自分の足の裏を舐(な)めてるかもなぁ」
北澤「フードを変えたり、いつもと違うもの食べさせたりしました?」
西沢「いや、いつもと同じ△△△のドックフードしか食べさせていないよ」

ニュージーランド製の高級フードだけを食べている様子。
そんな貫太郎くんは脇の毛も少し薄くなっていて、ここも搔いていたことが予想されます。どうやら季節性のアレルギーのようです。

「貫太郎くんも、西沢さんと同じ花粉症ですね」
僕が告げると
西沢「いやいや、俺は花粉症ではないよ」
北澤「えっ? だってそのゴーグル、花粉除けですよね」
西沢「…これは○○○○の眼鏡」

(しまった…)
やや怒り気味の西沢さん。
僕は知りませんでしたが、どうやら有名ブランドの高級な眼鏡らしいのです。
(この時期にそんな紛らわしい眼鏡をつけるなよ…)
とは言わずに、僕はもにょもにょとごまかします。

ワンちゃんの花粉症の症状は鼻汁やクシャミというよりも、耳の外耳炎や皮膚炎がほとんどです。

ネコちゃんの花粉症は、皮膚炎に加えてくしゃみや鼻水といった人間と似たような症状が出ます。ティッシュで鼻をツンツンしてみて、鼻水が透明で粘り気がない時はアレルギーによるものです。風邪などの時は白や黄色でネバネバしています。


また、体がかゆくて舐めだすと、その刺激で炎症が広がって毛が抜けることもあり、いっそうかゆみが強くなってしまいます。

そして、掻くことによって傷ができたり、皮膚のバリアが弱くなることによる二次感染が起こり、膿皮症(のうひしょう)という病気も発症します。これは全身に広がるうえに、かゆいのです。

痛みもつらいですが、痒いのもとってもつらい。早めにかゆみを止めるためにも、症状が出たら早めに病院に行きましょう。

他の動物たちも花粉症になるの?

動物園勤務時代に僕が担当していたチンパンジーのアニーは、春先になると鼻水とともに腕と脇腹は真っ赤に腫(は)れ上がりました。そしてそこを痒くために傷になり出血してしまうことも。

朝、僕が動物園に行くと、待ってましたとばかりにかゆい所を見せてきます。そこにやさしく薬を塗ってあげると、少しかゆみが治まるようでした。

あまりひどい時は背中に注射をしたり、薬を飲ませたりしました。アニーはとても賢く、痛い注射もまずい薬も、痛みかゆみが治まるのがわかるのか、暴れることもなく素直に注射をさせてくれますし、薬も飲んでくれました。

馬も花粉症になる

ポニーは昼間は展示場で過ごし、夜は馬房で寝ます。馬房に行く前に、僕たち職員が足の裏についた土やウンチなどをとり、蹄(ひづめ)を洗ってあげます。そのあと蹄に油を塗ります。そして体をタオルで拭いてきれいにし、最後に耳や鼻など顔を拭いてあげます。

ちょうど桜が咲く頃でした。夕方、僕はポニーのポックのお手入れをしていました。
いつもよりも潤った(うるおった)目で僕を見るポック。
(かわいいな、僕に恋してるんだな)などと勝手なことを考えながらお手入れをしていました。体を拭き終えて最後に耳をきれいにし、顔を優しく拭いている時のことです。

「ふぇっくしょん!!!!!!!!」
そしてブルブルブルと鼻を鳴らしました。

それとともに鼻からも口からも大量の液体が僕の顔めがけ飛んできたのです。
サラサラし透明な鼻水。花粉によるアレルギーの鼻水でした。潤んでいた目も、僕に恋していたのではなくアレルギーによるものでした。

ニホンザルが一番多い

ニホンザル舎の前の桜が咲き始めると、試合後のボクサーのように目の腫れたサル、涙と鼻水で顔がぐちゅぐちゅになったサル、鼻が完全に詰まってしまい口をあけっぱなしのサル。
などなど、花粉症の被害を存分に受けたサルが大量に発生します。

動物園では人間以外だとニホンザルが一番花粉症になりやすく、最も症状が重いのではと個人的には思っています。


そして、我が愛する妻も花粉症です。大切な妻を守るため、僕は帰ってくると家に入る前に上着を脱ぎ、玄関では靴(くつ)のついでにズボンも脱ぎます。「なんでそこで脱ぐのよ?」と怒られるまでがセットの日課です。

妻の花粉症は鼻水やくしゃみなどではなく、頭痛と身体のだるさが主な症状とのこと。昨日、診療を終える時間とともに、ピロンとLINEがきました。

[花粉症で頭痛がするから夕ご飯買ってきて❤]

僕が妻の好物のケンタッキーフライドチキンを買って帰ると、頭痛で体調不良のはずの妻はノリノリで韓流グループのライブ映像を観ていました。明日はお友達と花見に行くそうです。

妻の花粉症の症状は外見からはわかりません。花見でたくさんの花粉を浴びても、友達との約束を大事にする友達思いの優しい妻です。

(僕もどこか妻と一緒に出かけたいな)
「ねえ、今度の休み一緒に花見に行こうよ」。僕はデートに誘ってみました。
妻はテレビから目も離さずに一言。

「花粉多いから行かない」

北澤(…???)


子供の頃から生き物が大好き。
“蟻の飼育”から始まり“象の治療”まで、たくさんの生き物と接してきました。そんな経験から生き物の不思議を発信します。
北澤功さんの紹介ページは→こちら

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