
美容師として一番嬉しいのは、髪を切る人、髪をケアする人と思われるよりも…
[ 僕たちのビューティフル・ライフを探そう ]

こんにちは。美容室LiNOを経営しておりますミヤザキです。
今回は「美容師の役割」というテーマでお話ししたいと思います。美容師の役割と聞くと「髪をカットしたり、ヘアカラーしたり、パーマかけたりすることじゃないの?」と思われると思いますが、もちろん正解です。でも、これで全てじゃないんです。
「どういった立ち位置で仕事をするのか」という部分を掘り下げることで、美容師の仕事の全貌に迫りたいと思います。
【立ち位置その1】デザイナーとしての美容師
「美容室に来る目的」って、人によってバラバラ。でも一番多いのは「髪をお洒落にしに来る」ということでしょう。言い方を変えると「デザインを買いに来る」です。
- カットしてヘアスタイルをお洒落に見せたい
- ヘアカラーしてヘアスタイルをお洒落に見せたい
- パーマをかけてヘアスタイルをお洒落に見せたい
デザイン重視の方のテーマはとにかく「髪をお洒落に見せたい」ですよね。
そういったお客様への僕のモードは「デザイナーモード」にスイッチが入るんですね。とことんカットラインにこだわります。全力でどんな形にしようか考えてカットします。
ヘアカラーでは色味にこだわります。僕は「カラーコーディネーター」の資格も持っていますので、たくさんの種類から色味を選び出します。どんなデザインができるか全力で考えながら。

パーマをどんな巻き方でかけようか、巻き具合はどうしようかを全力で思案してパーマをかけます。

このようにして、ヘアスタイルを完成させるのです。
当たり前ですが、デザインを買いに来られた方にはデザインで満足してもらわないといけません。デザインを気に入ってもらわなければ、すべて終わり。そのために僕も、技術のトレーニングを死ぬほどしてきました。
可愛い、かっこいい、お洒落、きれい…、そういったお客様に合わせたヘアデザインを作ることが、デザイナーとしての美容師の腕の見せ所ですね。とにかく技術が必要です。あとはセンスも。このお客様にはどんなデザインが似合うのか、すべて美容師さんのセンスで決められます。
実際、新規のお客様の中には「1週間前に他店でカットしたんだけど、デザインが気に入らないからどうにかしてほしい」という方がたまにいらっしゃいます。
そういった場合、要望をよく聞いてデザインを作り直します。気に入って頂ければ良いのですが、言ってしまえばこれは逆の場合ももちろんあって、同じように僕が作ったヘアスタイルに満足出来ず、他店に行って直してもらうというパターン…。そういう方もたぶんいらっしゃると思うんですね。
仮にそういう事故が起きてしまった時は非常に残念ですが、僕の力量が足りなかったということになります。そうならないように今現在も、デザイナーとしての努力と研究を毎日繰り返しています。
【立ち位置その2】ヘアドクターとしての美容師
一方で美容師は「ヘアドクター」=「髪のお医者さん」でもあるという認識も僕は持っています。お客様の中にはデザインを第一優先に求めているのではなく、「傷んだ髪をどうにかしてほしい」「髪にツヤがなくて…」「サラサラの髪にしたい」などの、お悩み解決重視の方もいらっしゃいます。
僕は「ヘアケアマイスター」というヘアケアのプロフェッショナル資格も持っていますので、そういったお客様には僕は「髪のお医者さん」として対応します。ここからは美容室を病院だと仮定します。
実際にLiNO病院に来たお客様の例を挙げると、「他店でストレートパーマをかけたら失敗して、髪がチリチリになってしまった」と駆け込んで来る人がいたり、「アイロンをかけすぎて枝毛だらけになっちゃった」という人もいたり。そういった人達が救急搬送されてきます。
「チリチリになった毛先」や「枝毛」はもう何をしても元の状態には戻りませんから、メス(ハサミ)を入れるしかないんですね。外科手術です。こうなるとこういったお客様が求めるものはデザインうんぬんよりも「とにかくこの毛先をどうにかしてほしい」なんです。デザインは二の次で、とにかく治療しなければいけない状態ですから、メスで毛先を切り落とします。

こういった方々が求めているものは、デザインの前に「質感を重視している」ですね。
問診(カウンセリング)の結果、「髪がパサつく」「潤いがない」「ツヤがない」という時は、髪の内部にある「CMC」という成分が流出している状態になっています。CMCを元に戻すために、アミノ酸系のシャンプーや、集中的に水分・油分・タンパク質を補給してくれるサロントリートメントをお薬として処方します。そうやって、しなやかで潤いのあるツヤツヤ髪へ戻していきます。このパターンの場合は、僕は内科医になります。
クセが強くて髪がうねってしまうことに悩みがあり、ストレートのサラサラヘアになりたいという方に関しても、やっぱりデザインの前に「サラサラという質感」を求めています。ただしここでは、ストレートパーマなどの手術になります。強制的にサラサラにするという手段ですね。そうやって髪質自体を変えていきます。
以上の例のようにデザインを作る前に、まず質感や髪質に重点を置いている方もいらっしゃいます。この時は、美容師である僕は、治療するヘアドクターとしてのモードで仕事をしています。
【立ち位置その3】「美容室LiNOのミヤザキ」としての美容師
僕が一番嬉しい立ち位置となるのが、実はこれ。僕と会うために来てくださっているということです。髪を切ったりケアしたりするだけならば、他の美容室でもいいわけですけど、わざわざ僕の所に来てくれているわけです。「おしゃべりしに来ただけ」みたいなお客様も、中にはいらっしゃるんですよね(笑)。
別に髪をカットしに来たわけでもなく、ただ差し入れだけ持ってきてくれたり(これ本当に嬉しい!)「髪は適当にやっておいて〜!」とか「ヘアスタイルはなんでもいいです」と言って、髪はメインではなくおしゃべりして帰る、みたいな感覚で気軽に来てくれる方。「会いに来てくれた」感があって本気で嬉しいんです!

美容師ってお客様からしてみたら本当は、家族でもないし、友人でもないし、恋人でもないじゃないですか。美容室でしか顔を合わせない、ただの髪をいじってくれる人にすぎません。
でも、何度もサロンでお話ししてお互いに気心が知れて信頼関係が構築されてくると、「誰にも言ってないんだけどね」と言ってけっこう突っ込んだ話を、お客様が僕にしてくれたりするんです。この人なら話しても大丈夫かな?みたいな、ちょうど良い距離感と関係性なんだと思います。美容師って。
逆に僕もお客様には自分という人間を何も隠さず全てさらけ出して接しているので、お客様も話しやすいのかもしれません。「なんか話したらスッキリしたー!」とか思ってもらえると、少しは役に立ったかな?と思えます。ちょっとでも心が軽くなってもらえれば嬉しいです。
お客様にとってはただの美容師なんだけど、「気兼ねなく話しができる貴重な人」という存在であり続けたいなーと思っています。
髪を切り、お洒落に整え、ケアをする。これも立派な美容師の仕事ですが、信頼してもらって気兼ねなく話をする。これも美容師の大事な仕事の一つだと思っています。結局のところ、全部に共通することがあります。わかりますか? それは、お客様に元気になってもらうということです。
ヘアデザイナーとして、ヘアドクターとして、そして一人の人間として…。美容師という職業の役割を果たしていきたいですね。もっともっと美容師の可能性を模索していこうと思います。
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