『超・野心家』〜NPO法人ちぇぶら代表理事 永田京子〜

[ デジデン編集部の『聞いた、見た、書いた!』 ]

NPO法人ちぇぶら代表理事、更年期トータルケアインストラクターの永田京子先生が登場。2014年に「更年期を迎える女性の健康をサポートする」ことを目的に立ち上げた「ちぇぶら」を2016年にNPO法人化、現在は講演活動、作家活動、テレビ出演と猛烈な勢いで啓蒙活動を行う。自身を「超・野心家」と表現する永田氏の、魅力とエネルギーに迫る。

不安で仕方なかった時、勇気を出してやったこと

永田京子先生の著書(左より) 
『女40代の体にミラクルが起こる!ちぇぶら体操』(三笠書房 2019年10月)​​​​
『はじめまして更年期♡』(青春出版社 2020年7月)

​​​​――「ちぇぶら」とは、更年期を英語で言う「the change of life」の意味なのですね。「ちぇぶら」を立ち上げたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

2014年、自宅の一室で「ちぇぶら」をスタートさせました。それまで8年ほど、女性の産後をケアするインストラクターをしていたのですが、「更年期を迎える女性をサポートする」という全く新しい世界に飛び込みました。ゼロからのスタートです。私自身も当時まだ更年期を経験していなかったので、あるのは「更年期で苦しむ女性を助けたい」という思いだけ。というのもインストラクター時代、40歳を越えた女性が体の不調に悩む声を多く聞きました。続けたい仕事や挑戦したい夢を体調不良を理由に諦めてしまう。これは何か原因があるんじゃないか、と気になっていました。

そのうちに「更年期」という存在を知り、母の記憶がよみがえりました。私が高校生の頃、今思えば「更年期」の症状に悩んでいた母とはバトルが絶えず、一時期、一緒に暮らせなくなってしまったんです。私なりに傷つき、その傷が癒えないまま生きてきました。その経験と「更年期の症状」がリンクしたとき、母と同じような苦しみを抱える女性を減らしたいと思うようになりました。その年代の女性たちが元気に過ごすことで、一緒に暮らす家族も、働く仲間も、社会全体も必ずハッピーになる、私がそれを実現させる!と決心し、「世界一の更年期アドバイザーになる!」という目標を立てました。

「ちぇぶら」で初めて開催した企業向け講座の風景。その場で体と心をほぐす「ちぇぶら体操」を交えながら。正面が永田先生

――強いご意志で始められたのですね。新しい事業を立ち上げるにあたり、不安や迷いはありませんでしたか。

毎日不安で不安で仕方なかったです! 気づくとアルバイトを検索していました(笑)。さらに事業を始めた頃ってまだなにも形になっていないから、周囲からは「なにもやったことないあなたにできるわけない」「前の仕事に戻ったら?」なんて言われました。私が一番不安なのに、そう言われるとさらに不安になりましたね。

「このままではいけない」と、思い切って環境を変えたんです。その一つが「勝間塾」です。2014年当時、オンラインサロンの先駆け的存在でした。そこには「何かやりたい!」と目をキラキラさせている人がたくさんいて、私の目指す世界を応援してくれる仲間がいました。応援や共感してもらえると、安心して前に進めるようになるんですね。人って弱いから、無理だと言われたら傷つくし、弱気にもなります。でも応援者が一人でもいると、歩み出すエネルギーになるのです。環境を変えることの大切さを実感しました。

一歩踏み出すと今まで見えなかった景色が見えてくる 

「ちぇぶら」立ち上げ当初の講座の様子

――事業を立ち上げるにあたり、ご苦労されたことはたくさんあったと思うのですが、具体的なお話を伺うことはできますか。

立ち上げ当初、社会起業塾で学ぶチャンスをいただきました。これも、今思えば環境を変えるための行動の一つでした。そこで最初に問われたのが「あなたは更年期の何を知っているの?更年期の女性がどうなったらいいの? その人たちがそうなることで社会はどう変わるの?」ということでした。私、一つも答えられなかったんです! 更年期に苦しむ女性を助けたいと思っても更年期のことを知らないのはマズイ。実際の生の声を知りなさい、1000人のアンケートを取って実際に困っていることを聞いてきなさいと言われたんです。「ハッ、ハイ。行ってきます!」 

それから1カ月半、バインダーにアンケートとボールペン、10セットを背負い、隙間時間があればどこでも街頭に立ちました。仕事の合間、勉強会の合間。しかし、うまくいきません。「すいません、ちょっとお時間をいただけますか。アンケート調査にご協力いただきたくて……」なんて言っても誰も立ち止まってくれないんです。全然話を聞いてくれない、アンケートは全然集まらない。当たって砕けて当たって砕けて、あああーーーどうしようー!!と悩みました。

――最終的に1カ月半で1014件のアンケートを集めたのですよね。どのようにして立ち止まってもらったのですか。

「エレベーターピッチ」という、15秒〜30秒で自分の仕事内容を伝え、アポイントまで取るプレゼン方法が話題になりましたが、当時それは知らなかったけれど否応なく15秒で話を聞いてもらうスキルを身につけました。どうすれば立ち止まって話を聞いてもらえるか、それを徹底的に考えたんです。

――ぜひその15秒トークの秘訣を教えてください!

今、「NPO法人ちぇぶら 講師養成コース」を開催していて、15秒エレベーターピッチトークを「型」にして実践しているので、それをお教えしますね。とてもシンプルです。「私は〇〇という活動をしています。それは〇〇というもので、〇〇という効果があります。この活動は他と比べて〇〇が優れています」という型です。

―――――――――――

N P O法人ちぇぶらは、体のケアと更年期の知識を伝える講座を提供しています。
この講座は、更年期という共通のテーマを持ったコミュニティ作りにも役立ちます。また聴講型の講座とは違い、その場でエクササイズを実践することで体調管理に役立つ効果があります。

―――――――――――

このように3センテンスくらいで、伝える相手や内容によって言葉を選びます。街頭インタビューをしていた頃は、どう伝えてよいかさっぱりわからなかったので100パターンくらい作りました。お手本がないので試行錯誤しましたね。

最終的に1カ月半で1014件のアンケートが取れたのは、たくさんの友人やお母さんたちが協力してくれたから。「私のサークル仲間から声拾ってきてあげるわ〜」と何件ものアンケートを送ってくれたり、市の職員の方が協力してくれたり。街頭に立っていたら警察官に職務質問されたこともありました。その警察官に「奥様にお答えいただけませんかっ」とお願いして、後日アンケートをいただいたことも。最終的に全国からいただいた1014件のアンケートは、多くの方のご協力のおかげです。このアンケートのおかげで更年期に必要な本当のものが見え、それをもとにプログラムを開発しました。生の声を元に作ったプログラムに確信を持ち、現在も活動を進めています。 

N P O法人を立ち上げるということ

「ちぇぶら」イベントの様子。CHEBURAの「C」が決めポーズです

――現在は日本、アメリカ、オーストラリアに合わせて35人の認定講師がいる「NPO法人ちぇぶら」。NPO法人格を取得した経緯や、NPO法人について興味があります。

2014年から2016年は法人格を付けず「ちぇぶら」として活動していました。ありがたいことに仲間が増え、講師も増え、「よし、法人格を取ろう!」とNPO法人格取得に向けて動き出しました。

NPOを選択した理由は、一部の人たちだけが受け取れるサービスではなく、誰もが平等に情報を得られるようにしたい、情報格差を無くしたいという思いからです。ただ、NPOは立ち上げるにあたり、10名以上の会員、3名以上の理事と1名の監事を集めなければならない、法律で定められた活動分野のしばりがある、などの決め事があります。定款に記載されていないことは組織として行うことができないので、そこは苦労した点ですね。作業としては、ただひたすら書類を作成しました。書類作成自体は市の職員の方に教えてもらいながらそこまで難しくはありませんが、提出してから受理されるまでに4カ月程度の時間がかかります。

2016年取得当時は、助成金を申請する時に厳しい審査をクリアしているゆえ通りやすいとか、資金を獲得する上で支援してもらいやすいという感覚がありましたが、今は一般社団法人ともあまり差がないような気もしています。

あ。定款を書き換えるのは大変でしたよ! 事務所を移転するので住所を書き換えるだけだったのですが、そのために総会を開き、住所変更に対して出席者の4分の3以上のOKをもらわなければなりませんでした。

夢ノートを作成し、着実に夢を実現させる

団体の研究を発表したIMS国際閉経学会。(カナダ・バンクーバー)にて

――永田先生の夢について教えてください。

更年期サポートの活動を、海外にも広く伝えていきたいんです。「世界のちぇぶらになる!」が夢です。超野心家でしょうか。笑。更年期の症状は万国共通ですから、日本の女性にとどまらず海外の女性にも伝えたい。「海外にも伝えていきたいんだー!」と何度も言っていたら、アメリカとオーストラリア在住の認定講師が誕生し、海外にも発信してくれるようになったんです。やはり、思いを具体的に言葉にして伝えるって大切なのですね。

「5年後の夢ノート」をずっと書いています。少し恥ずかしいのですが、2014年4月14日、決意表明として「世界一の更年期アドバイザーになる!」と書きました。さらには「5年後、2019年には本を出版する、メディアに出る!」と書いています。その5年後の目標を達成するために、どんどん逆算して1年ごとに目標を書いていくんです。

そのためには、2018年までに「更年期ケア=ちぇぶら」と認知される!
そのためには、2017年までにプログラムを確立させ、日本中で企業研修する!
そのためには、……という感じです。

今のところ、2019年に本を出版することまで目標達成できました。そこで、新たなる目標を立てたんです。今回は全て英語で書きました。今から5年後にはアメリカとヨーロッパで公演をしている、そのためには、海外に協力者を見つける、そのためには、自分たちの活動を英語で伝えられるようにする、そのためには海外の更年期障害のリサーチを自分の足でする、という感じです。世界のちぇぶらになります!

――そのために英語の勉強を積極的にされているのですね。

そうなんです、世界に発信していくためには英語が話せなければ。私の脳みそ、頑張って!とお尻を叩いています。そして、来年はボストンに行くことが決まりました! 
JWLI(Japanese Women’s Leadership Initiative)という、アメリカの財団が支援する日本女性起業家育成プログラムがあって、毎年日本の女性起業家数名が選出されるのですが、それになんと選んでいただきました! 1カ月間ボストンのバブソン大学で学ばせていただいたり、現地のNPO法人や起業家と交流できるプログラムです。私たち「ちぇぶら」の活動を発表し、仲間を見つける絶好のチャンスです。

夢に向けて、少しずつ動き出しています。今は誰かのサポートがあるからこそできる活動ですが、自分の足でちゃんと立てるよう積み上げて行きたいです。いずれはインストラクター養成講座を英語で開催して、海外で「ちぇぶら」の活動を広める現地インストラクターを養成していきたいと思っています。

インタビューが行われた日も、直前まで講演会を開催していたという永田先生。日英で開催された講演会で、日本語で公演後に自身で英訳し、ちぇぶらの活動を伝えるものだったそうだ。先生のエネルギーが、ZOOMの画面越しからも存分に伝わってきた。

20代前半までは演劇活動に力を注いだ。人に伝わる表現方法を体のつくりから学びたいと、整体、経絡、アロマ、リフレクソロジー、小顔整体、ピラティスと多岐に渡り体得した。それらのテクニックを凌駕するエネルギーが、この女性にはあふれている。まるで太陽のような女性だ。環境を変える、具体的な言葉で夢を語り続ける、仲間と共に進む、感謝の気持ちを常に表現する、永田先生のエネルギーの秘訣はこのあたりに隠されているかもしれない。

永田先生は世界中の女性に生きる喜びを与え、今日もたくさんの笑顔の花を咲かせている。

NPO法人ちぇぶら HP:https://www.chebura.com
永田京子 SNS:https://lit.link/kyokonagata

文責:長島綾子

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。