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福島の除染現場で「本当の叱り方」を知った、吉田裕児という男

[ デジデン編集部の『聞いた、見た、書いた!』 ]

今回は「人材育成コンサルタント」の吉田裕児先生が登場。普段は経営者向けに、強い組織づくりや事故防止についての研修・コーチング・カウンセリングを行っており、7月14日からは新連載「今度こそうまくいく! 自信を無理なくつける方法」がスタートする。そんな吉田裕児先生の素顔に迫る。

福島の除染現場で生まれた「本当の叱り方」

2020年6月に出版した著書『部下が変わる本当の叱り方』は、人を育てる立場にある全ての人に向けたエール本だ。「叱るとは究極のコミュニケーション」と吉田先生は言う。

「叱る」とは自分の感情を相手にぶつけることではなく、相手の心を開き、相手に「自信」を思い起こさせる行為です。本来、人は誰でも「自信」を持って生まれてきました。赤ちゃんは自信満々です。でもいつの間にか、周りの影響で自信が閉じ込められてしまった。部下や子供を「叱る」とは、「自信」を思い出させてあげることであり、それは実は、あなた自身との心の対話でもあるのです。

私は一部上場の建設会社の一級建築士として順風満帆な人生を歩んできました。50歳を過ぎた頃、現場に一体感が無い、自分は真のリーダーなのだろうかと疑問を感じるようになりました。あるきっかけでコーチングと出会い、自分は本質的に人を動かす力に欠けていたという事実に気づき衝撃を受けました。けれど真のリーダーになる道は険しかった。55歳の時、人生初の挫折を味わいます。部下が失踪、業者にも逃げ出され、現場は大赤字。福島の除染現場に異動になりました。

不運は続きます。現場の作業員が交通事故を起こし、3人が重症となりました。病院に駆けつけた私に、ドライバーの奥さんが泣きながら謝るのです。「夫がご迷惑をおかけし申し訳ありません」と。そのドライバーを含め作業員たちの運転が荒いという事実を知りながら、私は曖昧にしたまま叱ることができずにいました。真のリーダーとして本気で叱る人でなければならない。「叱る」とは部下を正しい道に導くことなのだと、やっと気づきました。

除染作業で心身ともにヘトヘトになりながらも、ブレずに自分ができること、今やるべきことをやり続けました。作業員は福島の地元の方々です。当時、さまざまな思いを抱えながら作業していたことでしょう。彼ら彼女ら一人ひとりと向き合い、声をかけ、励ましながら接するうちに、徐々に心が通いはじめ、作業も順調に進みました。最終的には現場の責任者になりましたが、父が癌を患い千葉に帰郷。しかし、私を待ってくれていたかのように、父はまもなく息を引き取りました。

誰もが「自分の経験」を伝えることで「誰か」のためになる

穏やかな表情でお話しくださる吉田先生。2013年から2014年にかけての福島での話は、想像を絶する苦悩の連続だったことだろう。

正直「なんでこんなことになってしまったんだろう」と思うこともありました。でも、この本を書き進めるうちに実感したんです。「人に伝えるために」全ては起こったんだなと。人を育てることに失敗した経験から悟った「叱り方」を多くの人に伝えるために、私はこの経験をした。私にはこれを人に伝える使命があるんだと。

人は誰もが皆、その人しか経験できないことを経験し、悩み、工夫して生きています。一人ひとりの経験って素晴らしいものなんですよ。なぜなら、それを伝えることで必ずどこかに救われる人がいるから。それを伝えることによって、必ず勇気づけられたり解決策を見いだせる人がいるんです。だから人は、自分の経験を、悩んだこと、困ったことを発信していかなければいけない。しないことは逆に「罪」なんじゃないかとも私は思っています。発信することで、「誰か」人のためになるのですから。

「本音で語り合い、本気で頑張れる職場作り」を目指して

これからのビジョンについて、吉田先生に伺った。

「本音で語り合い、本気で頑張れる職場作り」これが私のビジョンです。職場やチームが目標を達成するためには、まず大前提として「本音で語りあえる場」でなければならない。言いたいことが安心して言える環境で、それに対し率直なフィードバックが返ってくる。その環境を作るために、「職場の家庭教師を一社に一人」配置できるようなシステムを作りたいと考えています。

映画『マイ・インターン』をご存じでしょうか。

ファッションサイト運営会社の凄腕女性社長ジュールズのもと、定年後妻に先立たれた70歳のベンが「シニア・インターン」として採用され、紆余曲折を経てジュールズの良き相談役として支えるストーリーです。

この映画のベンのような人材を増やしていきたい、これが私の具体的ビジョンです。シニア世代が第一線で活躍する若い人たちの話を聞き、活躍できるよう支援していく、そのような環境を整えたい。社内外を問わず、シニアが自身の経験を生かして、まるで「職場の家庭教師」のような役割となり、悩みを聞いて助言したり、話を聞いて寄り添ってあげる。そんなシニアが増えることを応援していきたいと考えています。

「パートナーシップ」も「叱り方」も愛ある究極のコミュニケーション

「パートナーシップ」「叱り方」「自信のつけ方」。これらを先生はどのように捉えているのだろう。

全ては繋がっています。「パートナーシップ」も「叱り方」も愛あふれる究極のコミュニケーションだと考えていて、それを通して人は、本来自分の中にあった「自信」に気づくのだと。「パートナーシップ」が良好でなければ仕事も安心して取り組むことはできないし、「叱り方」が身についていなければ、部下を育て、会社を育てることもできません。私は家では妻としょっちゅう喧嘩していますよ。でもこれは夫婦の「ありたい姿」のために必要な「対話」であり、幸せのためだと考えます。愛ある究極のコミュニケーションです。

旅行、ワイン、釣りなど多趣味の吉田先生。なかなか旅行に行けない今は、産地の気候や風土を想像しながら、自宅でワイングラスを傾け旅行気分を楽しむという。

ポルトガルのオビドスにて、シェリー酒を飲みながら

「トラブルはトラベル」旅先でもいろんなハプニングがありましたね。そんな話もデジタルデンでいつかできたらと思います。人生全般に言えることですが、「良さそうだな」と思ったチャンスは自分でどんどん掴んでいくことが大切だと思っています。これがオープンマインドの秘訣かな。

吉田先生とのインタビュー中、何度も涙ぐんでしまった。インタビュワーをリラックスさせ、心通う「対話」ができるよう自然と相手の心を開いてくれる吉田先生。先生との対話を通じて、「心を開く」ということを教えてもらった。

「心を開く」とは、どんな自分も「これでいいんだよ」と受け入れることだ。
吉田先生は、誰をもあたたかい眼差しで受け入れてくれる。

パートナーシップ、組織改革、部下の育成など、吉田先生のコーチング、カウンセリングにご興味ある方はぜひこちらのサイトをチェックしてほしい。

文責:長島綾子

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