
幸運の前髪をつかめ〜 ダ・ヴィンチとムロツヨシの人に頼る力
[ 天才ダ・ヴィンチに学ぶ人生の極意 ]
「よく頑張ってるね、楽しんでね!」と声をかけよう
「頑張れ!」。応援のメッセージとしてよく使われる言葉です。自分もそれに対して「頑張ります!」と応答します。しかし、すでに限界まで頑張っている状況だとすると、この「頑張れ!」という言葉は時に負担となります。「もうすでにこれだけ頑張っているのに、まだ頑張らなくてはいけないのか…」、そんな暗澹たる気持ちになり、励まされるどころか、逆にプレッシャーとなってしまうのです。そんなときは、「頑張れ!」ではなくて、「よく頑張ってるね!」と頑張りを認めてあげることで、相手の気持ちは和らぎます。
そもそも「頑張る」という言葉は、「我を張る」に由来します。自分にプレッシャーを与えて、根詰めてきた状態なのです。だから、その張り詰めた緊張感を和らげるために、相手の努力を認めてあげて、さらに「楽しんでね」と相手の緊張を緩める言葉を投げかければ相手はほっとします。どんな言葉を投げかけるか、その一言で受け取る相手の気持ちも大きく変わります。

人生には自分の力だけでは突破できないことがある
きっとこの文章を読まれている方は、人生において努力をして頑張ってきた方だと思います。そうじゃないと、なかなか真面目にこういった記事を読もうとしないはずです。努力をして道を切り開く、それができると自信につながります。小さな成功体験でも、積み重ねることで自己肯定感も上がります。努力することは大切なことです。
ところが人生には、時に理不尽なことが発生します。どれだけ努力をしても一向に報われなかったり、自分は悪くないのに責任を押しつけられたり、匿名の人から悪意を持って誹謗中傷されたりと、自分の力だけでは突破できないような壁も出現します。そんなときは、自分ひとりで悶々と悩むのではなく、思い切って人の助けを借りることも効果的です。
今回の記事では、私の専門であるルネサンスの万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチと、私の個人的に好きな俳優ムロツヨシさんを事例にご紹介いたします。

ダ・ヴィンチも人に頼って現実を180度変えた
レオナルド・ダ・ヴィンチという名前を聞いて何を思い浮かべるでしょうか? 『モナ・リザ』や『最後の晩餐』という名画を描いた人。両手両足を広げた人体図を描いた人。いろんな発明をしていた人。よくわからないけど何かすごい人。そんなイメージを持つ方も多いかもしれません。少なくとも私は、孤高の天才で、人には頼らず何でも自分で解決する人というイメージがありました。しかし、いろいろとダ・ヴィンチが活躍した軌跡を調べてみると、意外にも人に頼っている一面が多く見つかりました。
たとえば、ダ・ヴィンチは両親が婚姻関係になく私生児だったことが原因で、自分をかわいがって育ててくれた叔父の遺産相続でトラブルになり裁判沙汰を経験しています。叔父はダ・ヴィンチ1人にだけ遺産を残すと遺言を書いていたにもかかわらず、異母弟妹がそれに納得がいかず訴訟を起こしたのです。
当時の法律では、私生児がすべてを相続することはできなかったという背景がありました。ダ・ヴィンチの叔父と異母弟妹はあまり交流がなく、叔父の意思は可愛がっていたダ・ヴィンチ1人にありました。その意思が、身分が理由でねじ曲げられてしまうということに承服しかねたダ・ヴィンチ。起こした行動は、なんとフランス王に頼んで圧力をかけてもらうということでした。曲がったことは絶対許さないというダ・ヴィンチの強い信念が感じられますが、自分でどうにもできなければ、力のある人に頼って現実を変えるという具体的な行動をしていました。
実際、この有力者に頼んだことがきっかけでダ・ヴィンチの主張が認められ、相続トラブルは解決しました。困った時にダメだと諦めてしまわずに、然るべき人に相談することで道が開けてくることもあるのです。

ムロツヨシの超・頼み術
俳優として大活躍中のムロツヨシさん、実は下積み期間は15年と、長期間芽が出なかったといいます。そんなムロさんですが、何とかデビューしようと思って考えた作戦の1つが、「ムロツヨシです」、「カタカナ5文字でムロツヨシです」と自分の名前を連呼することでした。
『日曜日の初耳学』というテレビ番組に出演された際、このようなエピソードを披露されていました。
「僕のことを知ってください。僕を出してください。ムロツヨシです。ムロツヨシです。ムロツヨシです。」
「踊る大捜査線の監督と知ると、サワー手に持ってすぐ隣に行った。速かったですね。『踊る』の監督の隣に座ったときのスピードは。たぶん日本で1番だと思います、私。嫌われるまで言って、ムロツヨシです、ムロツヨシです、ムロツヨシです。売れたいんです。出してください、出してください、出してください。みんな飲み会で1回くらいは言うけど、出してくださいって。お前何回言ったって言われました」
このように、がめついくらいまでのお願いする力、人に頼む力を存分に発揮することで、本当にチャンスをつかみ、実際に俳優としてのデビューの道が開けていったのがムロツヨシさんです。自分1人の力では、才能の芽を開花させることができなくても、映画監督というステージを変えてくれる力のある方にお願いすることで、輝かしい未来を手にしました。日本人は和を大切にし、人に譲る美徳が世界からも注目されていますが、時には貪欲に前に前にと、打って出る姿勢も夢を叶えるためには必要なことです。
ダ・ヴィンチのアトランティコ手稿というノートにはこんな言葉がメモされています。
「幸運に巡り合ったら、ためらわず前髪をつかめ。後ろは禿げているからね」
チャンスは流れ星のように一瞬です。後でやっぱりあの時•••と後悔しないように、ダ・ヴィンチやムロツヨシさんを見習って未来を明るくしていきましょう。それではまた!

『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』(飛鳥新社)を出版し、
発売2週間で重版。翌年の2020年には、韓国語版も出版される。桜川Daヴィンチさんの紹介ページは→こちら
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