『モナ・リザ』に学ぶ世界一の引き寄せの法則【背景編②】

[ 天才ダ・ヴィンチに学ぶ人生の極意 ]

ダ・ヴィンチが大切にした考え

いろいろなアートがある中で、絵画を最高のアートと位置付けていたレオナルド・ダ・ヴィンチ。彼が描いた世界的な名画、『モナ・リザ』について連載で解説をしています。ダ・ヴィンチには、大切にしていた考えがありました。それは普遍性と多様性の両立です。

「自らのうちに普遍性と多様性を保持しているものほど、卓越しているといえる。それゆえ、絵画はあらゆる活動の中で首位を占める。なぜなら、それは自然界に存在するすべての形と、自然界に存在しない形の、両方の保有者であるからだ」

出典:絵画の書 レオナルド・ダ・ヴィンチ

ダ・ヴィンチ作品には、一体どのように普遍性と多様性が表現されているのでしょうか。

今回の記事では、特に背後に描かれた自然描写に注目し、ダ・ヴィンチの言葉を引用しながら考察していきます。前回は【背景編①】としてお話ししましたが、まだ御覧頂いていない方は、合わせてお読みください。

『モナ・リザ』に学ぶ世界一の引き寄せの法則【背景編①】
URL:https://digi-den.net/sakuragawa-davinci/category-psychology/2023/06/26/16710/

ボッティチェリ VS ダ・ヴィンチ

難解な絵画である『モナ・リザ』を紐解くには、他の画家と比較して考察すると見えてくるものがあります。近しい関係にあったライバルの絵画を見ていきましょう。

ダ・ヴィンチのライバルと聞くと彫刻家のミケランジェロが有名ですが、ダ・ヴィンチのノートを読んでいると、他にも同時代の芸術家について語っている記述が見つかります。

それは誰かというと、名画『ヴィーナスの誕生』で有名なサンドロ・ボッティチェリです。

ボッティチェリは、華やかな画風が持ち味のメディチ家お気に入りの画家。ダ・ヴィンチと同じ工房で仕事を共にした先輩でしたが、次のようにその描写スタイルについて批判をしています。

「背景の描写など研究しても仕方ないと言う人たちがいる。ボッティチェリも同じで、『壁にスポンジを投げつけるだけで、壁に染みができる。その染みだって美しい風景だ』と背景を軽視する。だが、たとえその染みがアイディアを与えてくれても、その細部の仕上げについては不十分だ。ボッティチェリが描いた風景はあまりにお粗末だった」

出典:絵画の書 レオナルド・ダ・ヴィンチ

人物描写ならず風景も木1本1本、気を抜かないこだわりを持っていたダ・ヴィンチにとって、ボッティチェリの描写には決して納得がいきませんでした。このように名指しで批判をしている箇所は珍しく、背景にも気を配るダ・ヴィンチの強い意志を感じます。

「たとえさまざまな種類の樹木が君から等距離の所にあるとしても、多くの画家がするように、それらをすべて同一の緑色にしてはならない。

同様のことが野原についても、樹木についても、さまざまな種類の土地や岩地についても、また前述の幹についても言えるのであり、それらは常に多様であるが、それは自然が無限に多様なものだからである。しかも、種類が多様であるだけでなく、同じ種類の樹木であっても、さまざまに異なる多様な色が見出せる。

たとえば、ヤナギならば、細い枝よりも太い枝の方が、大きくて美しい葉を付ける。しかも、自然は、多様性を増やすことを好んでいるので、同じ種類の樹木でも、一本として他とそっくりの樹木はない。しかも樹木だけでなく、枝や、葉や、実でも、他と正確に一致するものは見出せない。だから、以上のことに注意して、できるかぎり多様に描け」

出典:絵画の書 レオナルド・ダ・ヴィンチ


多様性への配慮は、背景描写だけにとどまりません。人物描写に関しても、同様に多様な描写を重視していました。

「人体というものは、均整がとれていたり、太って背が低かったり、痩せて背が高かったり、中肉中背のような場合もある。だから、このような多様性に留意しない画家は、人物像をいつも型通りに描くので、すべての人が兄弟のように見えてしまうのである。このようなことは大きな非難に値する」 

出典:絵画の書 レオナルド・ダ・ヴィンチ

“すべてを見たままに世界を切り取る”

それが科学者でもあったダ・ヴィンチの妥協のない描写スタイルだったのでしょう

さて、それでは具体的な作品を通して考察を深めていきます。

2枚の『受胎告知』に隠されたメッセージ

ダ・ヴィンチは、20歳のデビュー作である『受胎告知』の中で、すでに特徴的な背景描写を描いています。

『受胎告知』 レオナルド・ダ・ヴィンチ 1472年〜1475年


この絵は、左の天使が右の聖母マリアに向かって、「あなたは精霊によって神の子を身籠りました」と告知をしているシーンです。手前で起きているドラマに対して、後方の風景もしっかりと描かれています。

背景で個人的に面白いなと感じるのは、対照的な木の配置です。

等間隔で並ぶ4本の糸杉に対し、円盤がついているような不思議な木が並んでいます。形状や色合いにも微妙に差があります。ダ・ヴィンチは比較をすることで、物事をより効果的に伝えられると考えていましたので、わざと単純な木と複雑な木を対比的に描いていたのかもしれません。

そして、このダ・ヴィンチの描いた『受胎告知』を、ボッティチェリは実際に見ていたと思われます。

1490年にボッティチェリが描いた『受胎告知』をよく見てみると、面白いことにダ・ヴィンチの描いた木を真似して背景に描いているからです。

『受胎告知』 サンドロ・ボッティチェリ 1490年


背景描写を批判されたボッティチェリが、ダ・ヴィンチのユニークな描写を切り取って、「君の描き方の真似をしてみたよ」とでも言っているかのようです。

ダ・ヴィンチとボッティチェリは、共にライバルとして影響を受け合っていたことが、2枚の絵を通して見えてくるのです。

モナ・リザの背景の不思議

背景描写を含むすべての細部に徹底的にこだわったダ・ヴィンチですが、自身の最高傑作である『モナ・リザ』では何を伝えようとしたのでしょうか。

ポイントの1つは、建物の内側から描いた作品なのに、あたかも大自然と一体化しているように描いているところです。

『モナ・リザ』 レオナルド・ダ・ヴィンチ 1503年〜1505年頃


よく見ると、女性は椅子に腰掛けており、人物の後方には、自然との境界線である壁があります。そして、壁の両サイドの上には、円柱状の柱がわずかに見えます。

このように、室内の要素を極力目立たないようにすることで、人物と自然との一体化を実現しているかのようです。たまたまそう見えるのか、あるいは意図的に描かれたものなのか。

この点について、次回の記事ではもう少し踏み込んで解説をしたいと思います。
お楽しみに!


『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』(飛鳥新社)を出版し、
発売2週間で重版。翌年の2020年には、韓国語版も出版される。桜川Daヴィンチさんの紹介ページは→こちら

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