『モナ・リザ』に学ぶ世界一の引き寄せの法則【背景編③】 

[ 天才ダ・ヴィンチに学ぶ人生の極意 ]

ダ・ヴィンチ・コード的な背景の有無

レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた世界的な名画、『モナ・リザ』について連載で解説をしています。ダ・ヴィンチの作品というと、以前、ダン・ブラウン著『ダ・ヴィンチ・コード』で話題となったように、絵の中に暗号が潜んでいるのではないかとうわさされていますが、その真偽は謎に包まれています。でも、もしそんなメッセージが潜んでいるのであれば解明してみたくないですか? 

『ダ・ヴィンチ・コード』は、小説家が紡ぎ出したストーリーですが、本記事ではダ・ヴィンチ研究者の立場で違った見方をご紹介しますので、ぜひ新しい発見をして頂ければと思います。

さて、今回も前回に引き続き、背景描写の意味について、ダ・ヴィンチの言葉を引用しながら考察していきます。先回【背景編①】、【背景編②】について、まだ御覧頂いていない方は、合わせてお読みください。

【背景編①】先URL:https://digi-den.net/sakuragawa-davinci/category-psychology/2023/06/26/16710/
【背景編②】URL:https://digi-den.net/sakuragawa-davinci/category-psychology/2023/07/03/16838/

偉大なる画家の師匠

ダ・ヴィンチは、絵を描く際、登場人物はもちろん、背景描写を重視していました。
それには、ダ・ヴィンチの信条とかかわる【ある理由】がありました。

ダ・ヴィンチは、自然に対して畏敬の念を抱いていました。
幼少期からイタリアのヴィンチ村で自然と親しんでおり、自然の偉大さについて讚えて
います。そして、自然は画家が学ぶべき師匠であるといいます。

「君の師匠である自然」
出典:絵画の書 レオナルド・ダ・ヴィンチ

「自然は、経験の中にいまだかつて存在したことのない無限の理法に満ちている」
出典:パリ手稿I レオナルド・ダ・ヴィンチ

なぜ、自然が画家の師匠なのかというと、自然が創り出すものは完璧であり、人間が創り出すものよりもはるかに優れているからだと言います。

「才能ある人間がさまざまな発明を行い、目的に適うようにさまざまな道具を用いたとしても、自然ほど美しく、シンプルに、目的に合った発明をすることはないだろう。自然がする発明においては何1つ過不足がないのだ。たとえば運動に適した腕や足を動物に与える際にも、平衡を保つ重りは必要としない」
出典:解剖手稿 レオナルド・ダ・ヴィンチ

自然を崇拝するダ・ヴィンチにとって、背景描写を省略して描くことはタブーだったのです。ダ・ヴィンチの自然に対する想いは絵に現れていきます。

アート・リノベーション

前回の記事で、ダ・ヴィンチのライバルにボッティチェリがいたことをご紹介しました。背景の自然の描写を軽視したボッティチェリをダ・ヴィンチは批判していましたが、言葉のみならず、アートでもそれを密かに、かつ大胆に表現していました。

このダ・ヴィンチの手法を、私は“アート・リノベーション”と呼んでいます。

「リノベーション」と似た言葉に、「イノベーション」や「リフォーム」という言葉がありますが、

イノベーションは、未だかつてない革新的なものを生み出す、無から有、0から1を生成するプロセスです。

リフォームは、住宅の改装で行いますが、「老朽化した建物を新築の状態に戻す」という意味なので、マイナスの状態から0に戻すプロセスです。復元ということですね。

一方、リノベーションは、元に戻すリフォームとは異なり、プラスαの改善を加える意味合いがあり、元の状態から変更を伴うプロセスです。

部屋のリノベーションであれば、壁紙を変更したり、そもそもの間取りを一部変更したりと、元の状態を維持しながら改良して、より良い空間を目指します。

同じように、ダ・ヴィンチは0から1を生み出すイノベーションよりも、すでにある他者の絵画をベースに、自分ならではのオリジナリティを付加した作品を生み出していました。その代表例が『最後の晩餐』であり、『モナ・リザ』なのです。では、具体的にみていきましょう。

窓から見える世界

ダ・ヴィンチが描いた大作『最後の晩餐』は、ボッティチェリの描いた『シモン家の宴』がベースになっていると考えられます。つまり、『シモン家の宴』はリノベーション前の作品で、リノベーション後の作品が『最後の晩餐』ということです。2枚の絵を見比べてみましょう。

『シモン家の宴』 ボッティチェリ 1470年代初頭
『最後の晩餐』 レオナルド・ダ・ヴィンチ 1495年頃


この2枚の作品の共通点は何でしょうか?

白い布がかけられたテーブルに人々は座っているのですが、『シモン家の宴』の一番左側の人物と、『最後の晩餐』で裏切り者とされるユダ(左から5番目)の体勢が似ています。さらに、中央に座る人物の服装と色合いも似ていますし、話し込んでいる人物も近いポーズをしています。

私はダ・ヴィンチが似ている部分をあえて残すことで、意図的にリノベーションをしているということを伝えようとしていると考えています。

では、ダ・ヴィンチは『シモン家の宴』をどのようにリノベーションしたのでしょうか。

リノベーションとは、「プラスαの改善を加える意味合いがあり、元の状態から変更を伴うプロセス」と説明しましたが、大きな変更があったのは部屋自体の構図です。

『シモン家の宴』は、左側に外の景色がちらっと見える程度ですが、『最後の晩餐』は後方に空と山脈の景色が見えます。『シモン家の宴』は、右側に3つの窓があるものの、外の景色はまったく見えません。

一方、ダ・ヴィンチは、3つの窓を人物の背後に持ってくることで、自身が崇拝する自然を見せることに成功しています。

つまり、『最後の晩餐』は、前面に人物の動的なドラマが起きているのに対し、後方に静かに佇む自然も、さりげなく自己主張をしてることが分かります。

多くの場合、前面に展開する人物の激しい動きにとらわれてしまい、後方には目がいきません。

しかし、ダ・ヴィンチが伝えたかった本当のメッセージは背後にある自然だったとするとどうでしょう。ボッティチェリの『シモン家の宴』をリノベーションした作品が『最後の晩餐』であり、一般的にはあまり知られていない、自然崇拝主義者ダ・ヴィンチの姿が浮かび上がってくるのです。

これこそ、本当のダ・ヴィンチ・コードといえる暗号メッセージではないでしょうか。

実を言うと、『モナ・リザ』も同様にアート・リノベーションされた作品です。紙面の都合上、また次回、詳しく解説をしたいと思います。

お楽しみに!


『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』(飛鳥新社)を出版し、
発売2週間で重版。翌年の2020年には、韓国語版も出版される。桜川Daヴィンチさんの紹介ページは→こちら

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