
『モナ・リザ』に学ぶ世界一の引き寄せの法則【背景編④】
[ 天才ダ・ヴィンチに学ぶ人生の極意 ]
『モナ・リザ』はリノベーション作品!?
レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた『モナ・リザ』は、世界的に有名で毎年たくさんの人がルーヴル美術館へ足を運びます。
ダ・ヴィンチの死後、500年経過した今でも、多くの人を魅了してやまない『モナ・リザ』。有名で知ってはいるけれど、何がそんなにすごいのかよく分からないという声を聞きます。そこで、ダ・ヴィンチ研究者としてさまざまな視点で解説をしてきました。
前回は、大作『最後の晩餐』がボッティチェリ作品のリノベーションだったのではないか? という説をお伝えしました。今回はいよいよ『モナ・リザ』に踏み込んでいきます。
シリーズで解説をしており、【背景編①】【背景編②】【背景編③】を合わせてお読みになると理解が深まると思います。
【背景編①】
URL:https://digi-den.net/sakuragawa-davinci/category-psychology/2023/06/26/16710/
【背景編②】
URL:https://digi-den.net/sakuragawa-davinci/category-psychology/2023/07/03/16838/
【背景編③】
URL:https://digi-den.net/sakuragawa-davinci/category-psychology/2023/07/10/16901/

『モナ・リザ』のベース
『モナ・リザ』はダ・ヴィンチの晩年の作品ですが、死ぬまで加筆修正をした作品と言われています。こだわり続けた作品の裏には、ライバルに向けたメッセージがあったのではないかと私は考えています。
ダ・ヴィンチがライバルとして最も意識をしていた画家はボッティチェリでした。メディチ家に気に入られ、画家として成功していたボッティチェリを、中々周囲に認められなかったダ・ヴィンチは羨ましく思っていたことでしょう。そのボッティチェリの作品で、『ズメラルダ・ブランディーニの肖像』という女性の肖像画があります。
この作品は、ボッティチェリが肖像画として最も初期に描いた作品の1枚です。

ダ・ヴィンチが20歳で、親方の資格をとってデビュー作である『受胎告知』(1472〜1475年)を制作していた頃、ボッティチェリはこの肖像画に携わっています。
ダ・ヴィンチとボッティチェリは、同じ工房の仕事仲間でしたので、おそらくダ・ヴィンチはこの『ズメラルダ・ブランディーニの肖像』を見ていたことでしょう。
こちらと『モナ・リザ』を見比べてみると、ある共通点に気がつきます。

その共通点は何かというと、体の角度、そして人物の目線です。
体の向きはやや斜めを向いていますが、視線は正面を見ています。いわゆる四分の三正面像と言われるこの技法は、元々15世紀に、ネーデルラント(現在のベルギー、オランダ、ルクセンブルクのベネルクス三国に北フランスを加えた広い範囲を指す地名)で生まれた表現でした。
イタリアでは慣習に従って、伝統的な横向きの肖像画が描かれることが一般的でしたが、その常識を打ち破った構図なのです。
また、『モナ・リザ』は妊婦なのではないかと言われることもありますが、『ズメラルダ・ブランディーニの肖像』も妊婦として描かれています。
それでは、『モナ・リザ』と『ズメラルダ・ブランディーニの肖像』を見比べてみて、異なる点は何でしょうか?
もちろん人物そのものや服装は異なりますが、それ以外に大きな違いがあります。
それは背景描写です。
『ズメラルダ・ブランディーニの肖像』は室内の印象が強いのに対して、『モナ・リザ』は背後に雄大な景色が見える室外の印象が強いという違いがあります。『ズメラルダ・ブランディーニの肖像』は、外からの光は感じられるものの、まったく外の景色は見えません。
そして、1つ奇妙な点があります。『モナ・リザ』では、女性が腰掛けている背後には壁がありますが、その両サイドの上に円柱状の支柱がわずかに見えます。『ズメラルダ・ブランディーニの肖像』でも、同じような支柱が1本ハッキリと描かれています。
これはもしかすると、「私はボッティチェリの『ズメラルダ・ブランディーニの肖像』を参考にして描いていて、自分なりのメッセージを込めたリノベーション作品を創造している」というダ・ヴィンチの隠れたメッセージなのかもしれません。『最後の晩餐』同様、構図を変えて外の景色を見せています。

雄大な自然は何を語るのか?
『最後の晩餐』『モナ・リザ』共に重要視されているのは、“自然の描写”である、ということが見えてきました。
自然を軽視したボッティチェリに対し、自然を崇拝していたダ・ヴィンチは、意図的に自然をクローズアップさせたのです。ではこの自然は何を意図しているのでしょうか。
ニューヨーク在住のグラフィックデザイナー、ロン・ピッシリーニョは、『モナ・リザ』を眺めているうちに面白い発見をしました。
出典:Artist spots hidden images of animals in Mona Lisa
https://www.telegraph.co.uk/culture/art/art-news/8937326/Artist-spots-hidden-images-of-animals-in-Mona-Lisa.html
この大自然の背景には、なんと3匹の動物がいるといいます。
ただ普通に眺めていても、なかなか動物は見えてきません。
動物を見つける方法は、絵を右に90度回転して見ることです。
すると、どうでしょう。
『モナ・リザ』の左隣の山が「ライオン」、その下の山が「猿」、そして右隣の山が「バッファロー」のように見えてくるといいます。

1体だけならたまたまそう見えただけかもしれませんが、3体となると、ダ・ヴィンチが何か意図して描いていたとも考えられます。
もしダ・ヴィンチが背後の大自然に動物を暗喩して描いていたのであれば、それは一体何を意味するのでしょうか。

哲学者ダ・ヴィンチのメッセージ
晩年、フランスに渡ったダ・ヴィンチは、フランス王から優れた芸術家であることと同時に、偉大な哲学者であると評価されています。そんな哲学者ダ・ヴィンチは、このように人間を鋭く洞察した言葉を残しています。
「いつも互いに闘争し、互いに大損害を与え、しばしば殺し合う動物が、地上に現れるだろう。この者の邪悪さは無限だ。この者の凶悪な手足のために、世界中の広大な森林の大部分は伐採されるだろう。草木を食い尽くし、自らの欲望を満たすために、生きとし生けるものに死と苦悩と労働と恐怖と逃亡とを与えるだろう。・・・おお世界よ、なぜ口を開かないのか? このような残酷無慈悲なる怪物を、汝の絶壁で底の知れない、千尋の谷に飲み込んでしまい、再び地上にさらしてはいけない。 ―人間の残酷さについて」
出典:アトランティコ手稿 レオナルド・ダ・ヴィンチ
人類の歴史を振り返ってみると、自然破壊や動物搾取が公然と行われてきました。
生きるためには仕方がないと、人間は当たり前のように思っていますが、自然や動物はそれを当たり前と思っているのでしょうか。
自然を師匠と崇め、動物愛護精神があったダ・ヴィンチは、客観的に人間を観察し、「残酷無慈悲なる怪物」とたとえています。
『モナ・リザ』は、後世に生まれてくる人も含めた全人類に向けて“もっと自然と動物を大切にして共生できる社会を目指そう!”という調和のメッセージなのかもしれません。
これまで連載で『モナ・リザ』に学ぶ世界一の引き寄せの法則についてお伝えしてきました。
『モナ・リザ』は、何気ない単なる美しい人物画なのではなく、数々の常識を乗り越えた革命的な作品であり、ダ・ヴィンチ自身の想いが詰まった作品だから、今なお大衆を魅了し続けている。私はそう考えています。

『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』(飛鳥新社)を出版し、
発売2週間で重版。翌年の2020年には、韓国語版も出版される。桜川Daヴィンチさんの紹介ページは→こちら
この記事へのコメントはありません。