
愛妻弁当はタブー!? 鉄道員の知られざる食事事情
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鉄道員って仕事中は何を食べているの!?
「鉄道員って普段何を食べているの?」
この質問は本当によくいただきます。意外と、このようなことを知りたい人がいることに驚きました。今回はそんな疑問をここに明らかにしていきましょう。
まず、ザックリと言いますと、「オフの日は皆さんと変わりませんよ」というのが答えです。あなたも仕事以外のオフの日は基本的に家で自炊したり、友人や恋人と外食したりすることもあると思います。それは鉄道員も全く変わりません。
ではなくて、ここで知りたいのは、恐らく勤務時間内のことですよね? そこで今回は、鉄道員の仕事中の食事事情についてお話ししていきましょう。
「鉄道員」といっても乗務員もいればメンテナンスを行う人、指令員、本社で事務作業をメインに働く人と様々です。JR東日本のような社員数数万人規模の会社は、業務内容を一言で表せと言われても難しいところがあります。
僕は、JR東日本に入社してから5年半は保線社員として、その後11年半は車掌として勤務していましたので、両方の視点から暴露しちゃいますね。
現場と職場を行き交う保線係員の食事事情はちょっと特殊
基本的に工務職場(保線や電力などのメンテナンス職場)だと、現場に出る仕事もあれば、デスクワークの場合もあります。
デスクワークの場合は、きっちり12時と13時にチャイムが鳴りますので、弁当を持ってきて冷蔵庫に入れて置く人もいれば、出前を取る人、近くの定食屋さんに行く人と様々です。
では、現場の場合はどうでしょう? 保線現場の仕事は「総合巡視(そうごうじゅんし)」という仕事が多いです。これは線路を10kmほど歩いてレールに傷がついていないか、レールとマクラギ(線路の下に敷いてある板状のもの)を繋いでいるボルトが破損していないかなど、異常の有無の確認をします。

リュックにお弁当を背負っていくことや手で持っていくことは、荷物が増えてしまいますし作業がしにくくなりますから困難です。「車に置いておけないの?」と質問が来そうですが、夏場は気温が高くなり車内でなんて食べられる状況ではありません。
総合巡視については、詳しく話せませんがパーティーに分かれて行いますので、必ずしも自分が乗ってきた車で帰るというわけではないのです。そのため、現場に出るときは近くの食堂やレストランに行くことが多かったです。
また現場に出るわけですから、作業がピッタリ12時に終わって13時まで休憩時間ということは滅多にありません。その場合、「昼変(ひるへん)」といって、12時25分から13時25分の1時間休憩などと毎回変わります。
僕の場合“弁当を持ってくるか持ってこないか”は「現場に出るか出ないか?」ということが一つの判断基準でした。せっかく先輩と2人で現場に出て「今日は何を食いに行くか?」と誘ってもらえるチャンスなのに、「僕は弁当を持ってきたので、先輩は好きな所で食べてきてください」などと言ったら冷めてしまいます(笑)。
現場に出ることが分かっていたら、前日のうちに「明日は弁当持ってくんなよ!」などと先輩から言われることも多かったです。
乗務員となると、お弁当を持って行くのは賭けとなる
車掌や運転手など乗務員でも、お弁当を持ってくる人はいます。しかし、僕が現役の時はほとんど持ってくることはありませんでした。保線係員のように現場に出て作業をするわけではなく、乗務員は基本的には電車に乗って仕事をします。
「この時間に職場に戻ってこられる」と思って、職場の冷蔵庫に弁当を入れることもできますが、もし事故などの輸送混乱が発生したときは、翌日まで職場に戻ってこられなくなることもあります。
「では、持ち歩けばいいよね」と弁当を持って歩くことも可能です。乗務員室はエアコンが効いている(車両によるが、比較的新しい車両はほとんどついている)ので、1回の乗務くらいなら夏場でも痛まないでしょう。
しかし、そのお弁当を食べるのは電車内ではなく休憩所となりますから、食べられる場所が限られます。対応に追われ食べる暇がありませんし、ひどいときは数時間電車から降りられないこともあります。このように乗務員にとって弁当を持ってくることは一つの賭けでもあるのです。
結果的に、乗務員は乗務交代した最寄り駅近辺で食事できるところを探す人も多くなります。手っ取り早く済ませたくてコンビニに行く人もいますし、社員食堂がある駅などではそこに行く人もいます。
僕は基本的には定食屋さんのような外食が好きでした。各駅のグルメを事前に調べておいて、そこに行くことも楽しみの一つですよね。細かいことを言えば、外出するときはしっかりと上長の許可をもらわないといけませんから、これから乗務員になる人は勝手に外食しないよう気を付けてくださいね。

ほとんどの鉄道員が愛妻弁当を拒む理由
以上のことから、僕の周りの鉄道員は保線係員でも乗務員でも“弁当は持ってこない人が多かった”印象です。というのは、鉄道員は「いつ食べられるかわからない」という問題と常に隣り合わせだから。
“印象”と言ったのは、持ってこない人がゼロではないことによります。中には、オニギリだけ持ってきてスープ代わりのカップ麺をコンビニで買う人もいました。食事ですから、これはもう十人十色ですね。
最近ではコロナ問題もありますから、飲食店の営業時間など数年前と状況は変わっています。そのため、食事に関して気を遣う人も増えてきたと思います。
あっ、これは伝えておきたかったことなのですが、新婚ホヤホヤでも愛妻弁当を持ってこない人も多かったです。理由は前述の通り。
もし、鉄道員のパートナーになる人は、「弁当はいらない」と言われてもショックを受けないでくださいね。あなたのことが嫌いなわけではありません。せっかく作ってもらっても好きな時に食べられないことも多いから、美味しく味わえないのです。そんな状況がつくり出した優しさなのですから。

今回は鉄道員の食事事情についてお伝えしましたが、また、あなたが知っていそうで知らなそうな裏話をコッソリ教えちゃいますね。
では、また♪

「2007年にJR東日本の車掌となる。車掌による英語での車内アナウンスがなかった当時、独学で英語を学び、車内英語アナウンスを決行。すぐに動画サイトやSNS上で話題になり「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年に退社し、鉄道、英語にかかわる事業を立ち上げ活動中。
関大地さんの紹介ページは→こちら
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