
【鉄道マニアは鉄道員にはなれないのか?】
[ WEB車掌SEKIDAIの「新たな世界に駆け込み乗車」 ~乗って気付いた異次元な世界!~ ]
「鉄道マニアは鉄道会社に受からない」って本当?
僕のところに今日もこんな質問が寄せられました。それは「鉄道マニアは鉄道会社に入れないって本当ですか?」というものです。
この質問をくださった人は本当に真面目な方です。決して茶化すのではなく、将来鉄道会社に勤めたいと思っているから、真剣に問い合わせてくれています。
“好きなことを仕事にしたい”というのは誰もが思うことです。鉄道が好きな人が、将来鉄道会社に勤めたいと思うことはごく普通なことです。
確かにこの「鉄道マニアは鉄道会社に受からない」という情報は巷に出回っています。その理由として挙がっているのは、「鉄道マニアは鉄道グッズ集めが好きだから、部品を持って帰ってしまう」「内部で知り得た情報を漏洩させてしまう」などネガティブな情報ばかりです。
もちろん「安定している」「カッコいい」「福利厚生がしっかりしている」などのポジティブな情報も数多く出ているのですが、やはり鉄道マニアに関するネガティブなものは数が少なくても目立ちます。
その情報を見た人が不安になるのは当然のことです。そのため、僕も真剣にお話しさせていただきたいと思います。鉄道マニアで、将来鉄道会社に勤めたい人の不安が取り除けたら幸いです。
鉄道員の中にもたくさん“マニア”はいる
あなたの不安を取り除くために、まずこの話からさせていただきたいと思います。それは「現役鉄道員にマニアは結構いる」ということです。これを聞いただけで、冒頭の不安は全て消えてなくなったのではないでしょうか?
僕の知り合いの乗務員には、子どもの頃から鉄道が好きで、鉄道学校を卒業して就職したという人もいます。
また、写真撮影が好きで、休みや非番の日には毎回カメラを持って貨物列車を撮影に行っている人、いわゆる「撮り鉄」と呼ばれる人や、電車に乗って様々な場所に出かける「乗り鉄」ももちろんいました。そういう人は、鉄道雑誌の発売日になると、必ずその日に購入していましたね。

僕自身は、入社しても鉄道には興味はないと自分では思っていましたが、いま落ち着いて考えてみると“マニア”だったと思います。敢えて「○○鉄」という表現を使うとすれば、「アナ鉄」です。これは僕の造語ですが、「世界中の鉄道アナウンスを研究する」ことです。
これはもう立派な鉄道マニアですね。しかも重度の(笑)。グローバル化が急激に進み、「外国人に対してサービスを向上させるにはどうしたらよいか?」ということを、寝食を忘れるほど考えていました(笑)。
「自分が採用担当だったらどうか?」を考える
ここまで話してきましたが、それでも不安な人もいるでしょうから、もっと簡単に考える方法をお伝えします。それは入社試験の面接を想像してみることです。
あなたの前に、鉄道会社の合否の判断をする面接官が3人座っています。その人に自分の想いをどのように伝えればよいか考えれば、自ずと答えが出てきます。

まず、「鉄道が好きな人と嫌いな人では、どちらを採用したいか?」と考えてみてください。これはどう考えても前者ですよね。仕事が好きで、誇りを持って毎日鉄道業務を行ってくれる人を採用するはずです。
他にも、鉄道知識が豊富な人と鉄道に興味がない人ではどうでしょうか? これも言わなくてもわかりますよね。
「完乗(かんじょう)」と言われる、全国の路線を全て乗りつくした人は、頭の中に完全に路線図が入っているため、乗客に乗り換え案内する際に的確なご案内ができます。
時刻表で調べるだけでなく、「乗り換え時間がわずかですから、お気を付けください」「階段の位置は6号車付近です」など自分の経験則から的確なご案内ができるのです。
このように考えれば、入社する前から様々な知識をつけている鉄道ファンの方が「アドバンテージがある」と言っても決して過言ではないのです。
ここまで読んでいただければ、わかっていただけたかと思いますが、鉄道マニアは不利どころか、有利です。では、なぜ「鉄道マニアは鉄道会社に入れない」という噂が立つのでしょうか?
問題は“面接での伝え方”だと僕は考えます。例えば、かなり豊富な知識を持っていたとしても、逆に業務に関係ないことや、自分の我を貫き通しすぎてチームプレイができないと判断されたらマイナスイメージになってしまいます。

鉄道は、ご存じのとおり駅員が切符を販売して、車掌がドアの開け閉めやアナウンスをして、運転士が実際に電車を動かします。そして、見えないところでメンテナンスの社員が安全を守っています。
このように、どの分野も欠くことができないチームプレイで毎日鉄道の安全が守られているのです。
そのような状況で、「自分は、自分は……」「僕の知識から言わせてもらうと……」などと周囲の意見に耳を貸さない個人プレイをするような人だと判断されたら、いくら知識が豊富でも採用はされないでしょう。
以上のことを加味して「自分の知識を業務の中で活かしたらメリットしかない」ということを伝えることができたら、面接の数か月後、必ず鉄道員の制服に袖をとおしていることでしょう。
「どこから出たかわからない噂」に負けないメンタルを!
ネガティブな噂は耳にすることも多いですし、気になるのは仕方ありません。しかし、それを笑ってスルーできるメンタルを持つことも非常に大切です。

鉄道員も接客業ですから、理不尽な乗客に詰め寄られることもあります。そのようなときにも全て「自分なんて……」と落ち込んでいたら精神衛生上良くありません。
毎日、秒単位で運行している鉄道の安全を守る立場なのに、ネガティブなことを考えていたら本来の業務に集中することなんてできませんよ。ですので、嫌なことも忘れることができるような訓練もしておいてくださいね。
僕は車掌のときに、悩んで体重が6~7キロ落ちたこともありましたが、リフレッシュできることを見つけたり、ポジティブに考える方法などを身に付けて、苦境を乗り越えることができました。
そういうことも、じきにお話しさせていただきますね。
では、また♪

「2007年にJR東日本の車掌となる。車掌による英語での車内アナウンスがなかった当時、独学で英語を学び、車内英語アナウンスを決行。すぐに動画サイトやSNS上で話題になり「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年に退社し、鉄道、英語にかかわる事業を立ち上げ活動中。
関大地さんの紹介ページは→こちら
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