それ、不正乗車です!安易な考えで泣いた人たち

[ WEB車掌SEKIDAIの「新たな世界に駆け込み乗車」 ~乗って気付いた異次元な世界!~ ]

不正乗車とは?

あなたは「不正乗車」と聞いて何を思うでしょうか? ご存じのように、不正乗車とは鉄道を利用する際に定められた運賃や料金を不正に免れようとする行為です。
これを聞いたほとんどの人が「そんなことをする人がいるんだ? 自分とは無縁なことだ」と思う人がほとんどでしょう。僕は17年間鉄道員をしてきましたが、その中で多くの不正乗車に遭遇してきました。大人が子どもの料金で乗車しようとしたり、特急列車の料金を免れるために列車のトイレに籠ったり寝たフリをしたりと、例を挙げればキリがありません。

ところがここで驚くべき事実があるのです。それは不正乗車をする人の大半が“無意識”でやっているということです。無意識というくらいですから本人も気付いていません。そして、改札口を出ようとした際に駅員に止められ、不正乗車が発覚するということが珍しくないのです。
もしかしたら、あなたも1度や2度、若しくは数十回としてしまっているかもしれません。そのため、今回の記事を最後まで読んでいただき、自分の心に問いかけていただけたらと思っています。今後あなたが不正乗車が原因で人生を棒に振るうことのないよう、お手伝いをさせてもらえたら幸いです。

意外と知られていない「折返し乗車」

あなたは、次の2つの話を聞いてどう感じるでしょうか? 一緒に考えてみてください。まず1つ目です。布施さん(仮名)は毎朝B駅からC駅まで通勤しています。いつもB駅から乗車すると車内は混んでいて座ることはできません。「これから仕事なのに、通勤で疲れてしまう」と考えた布施さんは、あることを思いつきます。「そうだ、一度会社と逆方向のA駅まで行けば座ることができる」と。それからは毎朝少し早起きして、まずA駅に向かうようにしたので、座ってC駅まで行くことが可能になったのです。もちろん通勤時のストレスは軽減され、仕事のパフォーマンスも向上しました。
これを聞いて「そんなことは知っていて、前からやっているよ」と思った人は不正乗車の常習者、「なるほど! 賢いね!!」と思った人は不正乗車の予備軍となり得ますので十分注意してください。

では、もう1つの例を見てみましょう。
井田さん(仮名)は春に社会人デビューした女性で、上司や取引先との信頼関係を築くために忙しい日々を送っています。
ある日、仕事が終わって鉄道に乗ると運よく端の席が空いていて座ることができました。しばらく今日の出来事を考えていましたが、ボーッと窓の外を眺め、鉄道の走行音や心地良い揺れを感じているうちに眠ってしまいました。そして、本来であれば会社のあるA駅から自宅のあるB駅まで乗るところ、寝過ごしてC駅まで来てしまったのです。C駅の発車メロディを聞いて慌てて起き、ホームに飛び出しました。すると運よくB駅方面行きの鉄道が来て無事に戻ることができたのです。

「めでたし、めでたし! 今度からスマホでアラームを掛けておいた方がいいよ!」なんて悠長にアドバイスをしようと考えたあなたは不正乗車予備軍です。

この2つの例は『折返し乗車』という行為です。このまま本来の下車駅まで戻ってそのまま改札口を出てしまうと不正乗車になってしまうのです。いくら故意ではなくても、乗車した分の運賃や料金は支払わないと不正乗車になってしまいますから注意してくださいね。

「折返し乗車」の仕組みを理解する

今回の「折返し乗車」はタクシーと同じと考えてもらえるとわかりやすいです。
例えば、タクシーで東京駅から横浜駅まで行き、途中の品川駅まで戻ってきたとします。そのときにあなたが「最終的には東京駅から品川駅で降りたから、東京駅から品川駅までの運賃を支払います」とタクシーの運転手さんに伝えたらどうでしょうか? タクシーの運転手さんは怒ってしまいますよね。メーターは東京駅から横浜駅、横浜駅から品川駅までの分で加算されているわけですから。
しかも、タクシーなら降りる前に必ず精算しますが、鉄道ではワンマン運行を除き、改札口での精算が普通です。乗り過ごしても精算せずに逆方向の電車に乗れてしまうわけです。

このように、タクシーだと理解してもらえるのに鉄道になるとなかなか理解してもらえない現実があるのです。支払い方法は違いますが、鉄道でも折り返しの考え方は同じだということを押さえておいてください。知らなかったら、降車駅でそのまま改札口へ向かってしまうでしょう。しかし、これが不正乗車だとわかっている人は乗り越し清算をしに行きます。ここで明暗が分かれるわけです。

そのまま改札口を出てしまい駅員さんに止められたとします。そこで「本当に知らなかったです。すみません、お支払いします」となれば、一度は見逃してもらえるかもしれません。しかし、「なんでだ!」などと駅員さんに噛み付いてしまったら、すぐに駅事務室に連れていかれて警察のお世話になります。
あらゆる犯罪も「知らなかったんです! すみません!」で済んだら警察は必要ありません。鉄道を利用するには、こういったルールを知っておく必要があるのです。

まずは、自分だけで判断しないで鉄道員に相談する

まずは、普段と異なる事象に遭遇してしまった際には鉄道員に相談することが大切です。わからないことを自分なりに解釈して行動した結果、思わぬ事態に発展することもあるからです。
寝過ごしたり、間違えて反対方向の電車に乗ってしまった場合や、ICカードの残高が足りない場合などのために「乗越精算機」があるわけです。この使い方がわからない場合は駅員さんに聞いて対応するようにしてくださいね。
「いつも乗り慣れている電車だから大丈夫」と思っていても、まだ知らないルールや規則はたくさんあると思います。安易な気持ちで人生を棒に振るわないように気を付けていきましょう。

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では、また♪


「2007年にJR東日本の車掌となる。車掌による英語での車内アナウンスがなかった当時、独学で英語を学び、車内英語アナウンスを決行。すぐに動画サイトやSNS上で話題になり「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年に退社し、鉄道、英語にかかわる事業を立ち上げ活動中。
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