
知っていそうで意外と知らない!? 鉄道のあれこれ
[ WEB車掌SEKIDAIの「新たな世界に駆け込み乗車」 ~乗って気付いた異次元な世界!~ ]
普段は “当たり前すぎて” 意識していないこと

あなたは鉄道を使うとき、何に意識を向けていますか? いつも発車時間ギリギリに駅に向かうという人は、周りの状況などあまり見ないかもしれませんね。しかし時間に余裕が生まれると、駅構内の景観や駅員のアナウンス1つにしても、しっかりと受け止めることができるため、今まで気にしていなかったことも気になってくることがあります。
あなたも「えっ!? この違いは何?」「よく考えてみるとこれって・・・」と思ったことはありませんか? 逆に、あまりにも身近すぎて「それって、知って得になるの?」と思って今までスルーしていた人もいるかもしれませんね。僕は、TikTokの動画やライブのコメント欄などで様々な質問をいただきますが、その中には、鉄道員としては当たり前すぎて全く意識していなかったことが、たくさん見つかるのです。
例えば「『8番線』と『8番ホーム』って何が違うの?」。いかがでしょうか? 興味がある、ないに関係なく(笑)、あなたは現時点で『番線』と『ホーム』の違いについて説明することができますか?
「確かに、一般的にあまり意識する人はいないな」「そうか、視聴者はそんな視点で物事を考えているんだ」と、毎日新たな気付きをいただいています。もしかすると鉄道員ですら、あまり疑問を持たない人もいるかもしれません。今回は、あまり明かされることのないこのテーマについてお話ししたいと思います。
鉄道員は『番線』と『ホーム』を使い分けている!?
誰もが必ず駅で聞くアナウンスがあります。それは「今度の高崎線、高崎行きの電車は○番線から○時○分に発車いたします」というフレーズです。普段鉄道を利用しない人でも、TVやメディアを観ていると「駅のアナウンスはこんなフレーズを言っているんだろうな」と想像ができるかと思います。
人間って面白いことに、必要最低限の情報を虫食い状態で記憶するのです。皆さんも無意識のうちにやっていますよ。例えば、あなたは友だちと待ち合わせの約束をするために電話をしました。通話時間が3分あったとして、3分間で話したフレーズを一字一句間違えず記憶しているでしょうか?
いませんよね。場所や時間、持ち物などの「重要なポイント」を押さえて単語で覚えているはずです。
同様に、駅のアナウンスも「今度の高崎線、高崎行きの電車は8番線から13時15分に発車いたします」であれば、全文記憶するのではなく「高崎行き」「8番」「13時15分」という重要な単語をポイントで覚えるわけです。

すると、重要なポイント以外のところは記憶から薄れてしまいます。そのため、フレーズの中に違った表現が使われていたとしても、あまり違和感を覚えることはないのです。
例えば、アナウンスではなく駅員に直接『のりば』を聞いたとしましょう。
「あの、すみません。高崎方面に行きたいのですが」
「高崎方面ですね、次の高崎行きは8番ホームから13時15分です」
「ありがとうございます」
このような会話も、重要なポイントは「高崎行き」「8番」「13時15分」とアナウンスと全く同じです。ただ、よく見てみると「8番線」と「8番ホーム」と表現が違います。あなたはそれほど気にはしていなかった、若しくは気付いていなかったかもしれません。「どちらも8番で同じでしょ!?」と言われればその通りなのですが、鉄道員はしっかりとこの2つを使い分けているのです。
『番線』と『ホーム』の明確な違い

実は、この『番線』と『ホーム』の呼び方には明確な違いがあります。それは、主語が何を指しているかによって変えているということです。
先に答えを言ってしまうと、列車が主語のときは『番線』を使い、乗客が主語のときは『ホーム』を使っています(ホームを「のりば」と言う人もいます)。
例えば、「まもなく8番線に高崎線の下り列車が参ります。危ないですから黄色い線の内側までお下がりください」というお馴染みのフレーズは、列車の接近放送なので、主語が「列車」ですね。一方、駅の改札で「高崎駅に行きたいのですが」と質問されたときは、「8番ホームにお進みください」と伝えます。これは乗客が主語だからです。
電車が走っているのは「線路」ですね。そのため、「8番線(路)」を使います。乗客が駅の改札口から向かうのはホーム(プラットフォーム)です。そのためにこのような表現を使って区別しているのです。そのため乗客との会話の場面では、細かく言うと乗客のフレーズによってその表現を変えていることになります。
もし、乗客から「今度の高崎線はどこから発車しますか?」と質問されたら、「高崎線は8番線から発車します」となりますし、「今度の高崎線に乗りたいのですが、どこに行けばいいですか?」と質問されたら「高崎線でしたら、8番ホームにお進みください」となるわけです。
友だちに話したくなりましたかね? そう思ったら是非、この記事をシェアしてくださいね。
知っていて損することはない

今回お話しした内容は、普段そこまで気にしている人はいないのかもしれません。しかし、あくまで厳密に言えばという話で、鉄道員はこのような区別をしているということが、お分かりいただけたら嬉しいです。
このような「鉄道のトリビア」を知っていると、鉄道会社に入ったときに業務内容がスッと入ってきます。また、鉄道員を目指さない人でも、友人や家族の会話の材料になります。なぜなら、鉄道は「使ったことがない人」の方が少ないからです。飲み会や旅行などのネタとして、このような話を1つや2つストックしておくのも面白いかもしれませんね。
ただ知って納得してもらうという内容だけでなく、読者の皆さんが “使える” ようなネタをこのデジタルデンで書いていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。
では、また♪

「2007年にJR東日本の車掌となる。車掌による英語での車内アナウンスがなかった当時、独学で英語を学び、車内英語アナウンスを決行。すぐに動画サイトやSNS上で話題になり「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年に退社し、鉄道、英語にかかわる事業を立ち上げ活動中。
関大地さんの紹介ページは→こちら
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