おとなは、こどもの切符2枚で電車に乗れるのか?

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紙の乗車券を使っている人はここに注意!!

鉄道を使うときに必要なのが乗車券ですね。最近ではIC乗車券が普及してきていることもあり、紙の乗車券を購入する人は少なくなってきています。ただ、幼いこどもにICカードを持たせていない場合や、年配の人でどうしてもICカードに抵抗がある場合、他にも鉄道ファンで乗車券類を収集している場合など理由は様々ですが、需要があることは間違いありません。

ICカードの場合、改札機に『ピッ!』と当てるだけで自動的に処理してくれますが、紙の乗車券は券売機で購入しなくてはなりません。そのようなときに稀に発生するのが誤購入です。例えば、購入する額を押し間違えて少し安い金額の乗車券を購入してしまうケースなどが挙げられます。他にも僕のSNSには「こどもの運賃はおとなの半額ですが、こどもの切符を2枚買えば乗れますか?」という声が毎日にように届きます。

このように間違えて購入してしまった場合、あなたならどうしますか?差額分相当の乗車券をもう1枚購入しますか? 駅員に申告して買い直しますか?

今回はこの点についてお答えしていきます。

2枚買っても、そもそも足りない「こどもの乗車券」

僕のTIKTOK LIVEには毎日たくさんの方が訪れます。1回のLIVEの平均視聴人数は1万人を超えますが、その中には「切符のあれこれ」についての質問も多く寄せられます。

その中の1つとして、今回の「おとなは、こどもの切符2枚で乗れるのか?」ということが話題に上りましたので説明していきたいと思います。

こどもの運賃はおとなの半額ということから、「2枚買えばおとな相当分の金額になるから大丈夫でしょ!?」という考えの人が出てしまうことは仕方ありません。しかし、結論から先に話しますと「残念ながら乗れません」というのが答えです。

こう答えると、質問者からは「えっ!?なんで!?同じ金額を払っても乗れないなんて・・・」という教科書通りの答えが返ってきます(笑)。この記事を最後まで読んでいただければ、あなたの口からは「なるほど・・・」という4文字が自然と零(こぼ)れていることでしょう。

まず、こどもの運賃で乗車できない理由から説明していきましょう。JR東日本の場合、こどもの運賃や料金を半額にするとき、10円未満の「は数」を切り捨てて10円単位に整理します。例えば390円の場合、半額は195円になりますから、10円未満の5円を切り捨てて190円になるのです。

もうここでお気づきの人もいますね。そうです、この乗車券を2枚購入しても380円となります。5円の「は数」を切り捨ててしまっているので、大人の金額に10円足りないのです。

ここで「えっ!?220円の乗車券の場合は半額にすると110円じゃん!!」と思った人もいるでしょう。鋭いですね。しかし、その場合も使用できないのです。その理由をこれから説明していきましょう。

1人につき、1枚の乗車券しか使えないという規則がある

実は、JR東日本旅客営業規則第147条第5項にこのように定められています。

「同一旅客は、同一区間に対して有効な2枚以上の同種の乗車券類を所持する場合は、当該乗車については、その1枚のみを使用することができる。同一旅客が、同一区間に対し有効な2枚以上の指定券を所持する場合についてまた同じ」

これを簡単に説明すると、一人の乗客は1枚の乗車券しか使えないということなのです。そのため、新幹線などで並びの席を同時に何枚も購入して寝転がったり、前後の席を向かい合わせにして足を伸ばして使うなどもできないことがわかりますね。このような理由もあって、こどもの切符を2枚購入したとしても実際に使えるのはどちらか1枚のみになります。この規則を覚えておきましょう。

特に気を付けなくてはならないケースは、特急列車に乗る際に支払う『指定席特急券』です。この場合、指定された列車の発車時刻を過ぎると無効になってしまい、次の列車などに変更ができないのです。すなわち、「脚を伸ばして帰りたいから」という理由で特急券を2枚購入して乗車した場合は、「払い戻しをしてくれ」ということが成立しないのです。いくら車掌に言い寄っても対応はしてもらえませんから気を付けてくださいね。

ちなみに、この指定席特急券は乗り遅れてしまった場合などの救済措置として、指定された列車の乗車日の当日であり、且つ、同一区間に限り、後続列車の自由席(全車指定席の特急列車の場合は立席)を利用できます。

ただ、特急列車に乗る人は早く目的地に移動したいという人ですから、わざわざ戻ってもう一度後続の特急列車に乗るなんて面倒なことはしないですよね(笑)。有効期限も当日限りですから。このような買い方は絶対にしないでくださいね。

特急列車に限らず、もし間違って購入してしまった場合は、鉄道員に申告して正しい乗車券に変更してもらってください。

知っていそうで意外と知らないことが多い鉄道

いかがでしたか? 今回の内容は意外に知らない人もいたのではないでしょうか? 鉄道は身近な存在ですし、必要最低限の知識があれば利用できます。しかし、このように改めて「こどもの切符2枚で乗ることができるのか?」とか「2枚買えば脚を伸ばしてゆったりと乗れるのか?」などと質問されると、答えられない内容も多いはずです。

鉄道は年齢に関係なく利用する機会が多いので、僕がお伝えする記事を読んでいただくだけでも十分役立つと思います。この記事の内容は、全て視聴者の疑問からお答えしているものです。そのため、初めて知ることがあっても全く恥じる必要はありません。全国の大勢の人も同じことを思っているのですから・・・。

これからも全国の皆さんの疑問を解決するような記事を書いていきます。次の記事でお会いしましょう!

では、また♪


「2007年にJR東日本の車掌となる。車掌による英語での車内アナウンスがなかった当時、独学で英語を学び、車内英語アナウンスを決行。すぐに動画サイトやSNS上で話題になり「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年に退社し、鉄道、英語にかかわる事業を立ち上げ活動中。
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