
どこまでならOK? 列車内での飲食
[ WEB車掌SEKIDAIの「新たな世界に駆け込み乗車」 ~乗って気付いた異次元な世界!~ ]
結論「NGではないけれど、堂々とOKは出せない」
「列車内で食事をするのはNGですか?」最近ではこのような質問が毎日のように寄せられます。僕が車掌をしているとき、特急列車では平日・休日関係なく、座席を向かい合わせにして楽しそうに会話する光景を目の当たりにしていました。

高崎線の普通列車を担当していても「ボックスシートのある号車はどこですか?」と聞かれることが実に多かったです。その理由のほとんどが「食事」をしたいからということですね。同じグループで向かい合い、楽しい会話で盛り上がったり、全国各地にある様々な駅弁に舌鼓を打つのも鉄道旅行の醍醐味ですよね。
ただ最近では、コロナウイルスが流行し、ガラリとその風潮が変わってきました。そもそも『列車内での飲食の良し悪し』が話題になることは、これまであまりありませんでしたから、時代の変化を感じます。世間的にもピリついている時代。列車内での会話や食事などでトラブルになる事も多いので、この記事を読んで上手くバランスをとっていただけたらと思います。
「で、結局食べていいの? 悪いの? 教えて!」というところですが、結論は「NGではないけれども、堂々とOKは出せない」というのが、各鉄道会社の対応からみて僕が読み取ったことです。
このような表現をせざるを得ない理由は、この記事を最後まで読んでくださるとおわかりいただけると思います。では、進めていきましょう。
元々はどのような列車でも許されていた
以前はどのような列車でも、周囲に気を遣いながら飲食をすることは、ある程度許されていました。現にひと昔前の渋谷駅では、山手線しか走っていなかった頃でも駅弁が販売されていました。売っているのだから、いつ食べてもいいわけですよね。
では、何が原因で列車内での飲食が問題視されるようになったのでしょうか? その代表格がファストフードのフライドポテトやフライドチキンなどの存在でしょう。

他にも僕が見ていて「これはどうかな?」と思ったのが、夜コンビニでカップ麺を購入してそのまま乗車する人ですね。居酒屋で飲んだ後の〆(しめ)としてラーメン屋に行く人もいますが、時間が無かったり、予算を抑える人も結構います。かつては、駅そばをテイクアウト用の容器に入れてもらい、車内に持ち込む人もいましたね(笑)。
これらに共通するのは『匂い』です。美味しそうな匂いを充満させていると『飯テロ』なんて表現をされることもあります。このような言葉が流行り出した頃から、列車内での飲食自体を「マナー違反だ!」という人が出てきたように思います。
僕が実際に「匂いがキツいので注意してもらいたい」と依頼を受けるのも、大体フライドポテトでした。これらは、僕の中ではどちらかというと「いい匂い」に分類されるのですが、空腹のときに列車内に充満していると流石に気になってしまいますよね。
列車内で食べられることを想定している駅弁は、このような背景から、匂いを考慮して作られています。これは本当に駅弁業者さんの知られざる努力ですよね。
「NG」と言わざるを得ないような問題が噴出
そもそも、他人に迷惑を掛けずに自分の食欲を満たすのであれば、誰からもクレームは上がりません。どんなに匂いのキツい物を食べようが、自分一人で車を運転しているときであれば注意されませんよね。
ただ、大自然が広がるキャンプ場であればどうでしょうか? 一見、他人に迷惑を掛けないと思いますが、意外と苦情が来たりすることもあるのです。それが『ゴミの問題』です。
列車はたくさんの人が利用する公共交通機関です。先ほども、駅弁は匂いにも配慮していると書きましたが、静かに食べる分にはあまり苦情は出ません。

しかし、食べ終えたゴミがそのままになっていたり、足元に食べこぼしが落ちているというところが苦情の原因のほとんどです。
これが特急列車であればなおさらです。追加料金を支払ってまで座席のアップグレードをしたのに、ドリンクホルダーやマガジンラック(前の座席についている網目状のラック)に、コンビニ袋に入ったゴミが残っていたため、トラブルになる事が多いのです。
実際に乗客が車掌にクレームを言っている場面を見掛けたこともありますが、僕からしてみたら車掌が可哀そうに思えます。もちろん、常に乗客のことを考えてゴミなどが残っていたら対応するのですが、ほぼ満員状態で前の乗客が降りた直後に入れ違いに次の乗客が乗ってくることもあります。
他にも、段々と降車していき車内が空いてくると「ゆったりと窓側に座りたい」、「トイレに近い方が良い」などと座席を移動する人が出てきます。そのようなときは、是非ゴミも一緒にゴミ箱まで持って行っていただきたいものです。
結局は、周囲に対する配慮が大切

ここまで読んでいただき気付いた人もいると思いますが、要は「列車内で食事をするのが完全にNG」ということではなく、周囲に配慮できるかがポイントだと思います。
自分しか乗っていなくてガラガラの車内で駅弁を開けようが、オニギリやパンをかじろうが、誰にも迷惑は掛かりません。ただ、満員状態で同じことをやろうと思えば、必ずあなたに対する冷たい視線は出てくるでしょう。
最近ではコロナで飛沫の問題もありますから、余計に慎重になりますよね。乗務員も、一人で会話もせずに謙虚に飲食している人には注意をしていないと思います。逆に、向かい合わせになっていなくても、つまみを片手に缶ビールで会話をしているサラリーマンには注意しています。これが答えなのではないでしょうか。
鉄道を利用するとき、撮影するときとシーンは様々ですが、ニュースに取り上げられるのはこのような最低限のマナーを守れていないことが多いですよね。全員が気持ちよく利用できるように、一人ひとりが意識することが大切なのかもしれません。
今回もTikTokの視聴者の声にお答えしました。今後も鉄道に関する身近な問題や、「なるほど・・・」と思っていただけるような記事を書いていきますので、よろしくお願いいたします。
では、また♪

「2007年にJR東日本の車掌となる。車掌による英語での車内アナウンスがなかった当時、独学で英語を学び、車内英語アナウンスを決行。すぐに動画サイトやSNS上で話題になり「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年に退社し、鉄道、英語にかかわる事業を立ち上げ活動中。
関大地さんの紹介ページは→こちら
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