ダイヤ乱れ時に貨物列車を優先する理由

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『ダイヤ乱れ』と車掌の裏側

あなたは鉄道のダイヤ乱れに遭遇したことはありますか? 事故や自然災害などが起こると1時間、2時間なんて簡単に遅れてしまいますよね。朝寝坊して半分あきらめかけていたら、鉄道ダイヤが乱れていて予定通りの列車に乗れて「ラッキー♪」と思ったことはないでしょうか?

実は僕もそういうことは何度もあります(笑)。あるとは言ってもプライベートのときですけれども。さすがに車掌として出勤するときは電車を遅らせることはできません。そのため1時間前には職場に到着して、コーヒーなどを片手に読書をしているくらいの余裕は持つようにしていました。

少し話を変えますが、いつもこの話をすると驚かれることがあります。実は僕はこれまでに“人身事故”に遭遇したことはありません。車掌として11年半乗務していて合計1万本以上の列車を担当していたにも関わらず、プライベートも含めて一度もないのです。

中には僕の後輩の乗務員で、1日に2回人身事故に遭遇してしまった人もいますから、これはものすごい確率なんだと感じています。

さて、このようなダイヤ乱れが発生すると必ず行わなくてはならないのが“お客さま対応”です。JR東日本ではこのような言い方をしていましたが、要は“乗客のクレーム対応”です。

乗客によって鉄道の利用目的はさまざまですから、ダイヤ乱れ時になると本やスマホを見て時間を潰す人もいれば、すぐに車掌の元へ向かってくる人もいます。あなたも実際の場面やSNSなどで乗客が鉄道員に対して激昂しているところを見掛けたことはあるでしょう。

このような光景は、たまたま大袈裟な場面をピックアップしているわけではなく、日常茶飯事に起きているのです。

ダイヤ乱れと一緒に“乱れるもの”

ダイヤ乱れに遭遇すると乗客の“あるもの”も乱れてしまいます。それはスケジュールと気持ちです。だいたいこの2つは比例しています。「大事な商談に間に合わない」「大切な人との待ち合わせをしている」。このような場合にはやはり乗客の気持ちは不安定になってきます。僕自身もこのような状況になったら、やはり気持ちに余裕がなくなり何かにその気持ちをぶつけたくなります。

僕は車掌として実際に何度もこのような場面に遭遇したことがありますが、大体ものすごい形相で車掌のところに向かってくる人はスーツを着た人です。自分だけでなく、会社組織を背負って行動しているわけですから当然のことだと思います。

車掌としても指令員や運転士と連携を図り、一刻も早い運転再開を目指して情報提供をするわけなのですが、こういうときに限ってその横を貨物列車が通過していったりします。すると当然ですが、「おい!! なんで俺たちより貨物列車を先に通すんだ!!」というように始まってしまうわけです。

これは、事情を知らなければ仕方ないです。誰でも自分を優先してもらいたいという気持ちを持っていますから。今回はこの理由をしっかり知っていただきたいと思います。

貨物列車を優先させるのには理由がある

普通に考えると「人様より貨物を優先させるなんてけしからん!」と思う人もいるかと思います。貨物列車はコンテナを積んで走ることが多いですから、何を運んでいるのかわかりません。

ではここで、「鉄道は日本の経済を動かしている」という基本的なことを思い出していただけたらどうでしょうか?

「俺だって日本の経済を動かしている!」と思う人もいると思いますが、落ち着いてください。もちろん、ビジネスマン一人ひとりの力が日本の経済を動かしていることも重々承知しています。

しかし、貨物列車も日本で生活する人々の生活に最も重要なものを運んでいるのです。それは一体何か!? そう、食品です。人が生活していくのには衣食住が不可欠です。衣と住は毎日購入しなくても済むことが多いですが、食に関しては1日3食摂る人がほとんどだと思います。貨物列車はこのような生鮮食品も運んでいるのです。

もちろん、食品以外で多少到着が遅れても何とかなる場合は調整して旅客列車を優先することもありますが、このような生鮮食品を運んでいる場合は貨物列車を優先することもあります。

これまで単に「貨物列車を優先しやがって!」と思っていた人は、このようなことを知っていただければ少し考え方が変わったのではないでしょうか?

災害時に全国のスーパーやコンビニから食材が消えて困った経験をされた人もいると思います。「早く目的地に着きたい」という気持ちもわかりますから、鉄道員はさまざまな調整を行い、運転ダイヤを戻すように全力を尽くしているのです。

情報を得ることで余裕が生まれる

僕自身もそうですが、スケジュールの時間が迫っているときは気が気ではなくなり、一刻も早くと運転再開の時期が気になります。すると仕事のパフォーマンスやストレス的にも良くないのでなるべく余裕を持って行動するようにしています。

例えば、大事な打ち合わせや商談があるときは、待ち合わせ場所の近くのホテルを予約して前入りをします。そうすることにより交通機関の影響を一切受けなくて済みますし、ものすごく気持ちに余裕が生まれるからです。結果、大事な商談や打ち合わせもうまくいくことが多いです。

「そんなことを言っても、全員が全員できるわけない!」という気持ちもわかります。ただ、そのような考えを心の片隅に置いておくだけで気持ちの余裕が生まれるのです。

余裕がある人とない人とでは表情を見ればほとんどわかりますよね。僕が大事な契約の場面でも、余裕がなくてサインばかりを急ぐような人とは仕事をしません。

大体僕の周りの仕事ができる人はいつも余裕があり、笑顔の素敵な人が多いです。そこに答えがあることは起業してから気がつきました。やはり、視点を変えることはとても大切ですね。

今回は貨物列車を優先する理由をお伝えしました。また鉄道の裏側をお伝えしていきますので楽しみにしていてくださいね。また僕と一緒に笑活(わらかつ)をしましょう。

では、また♪


「2007年にJR東日本の車掌となる。車掌による英語での車内アナウンスがなかった当時、独学で英語を学び、車内英語アナウンスを決行。すぐに動画サイトやSNS上で話題になり「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年に退社し、鉄道、英語にかかわる事業を立ち上げ活動中。
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