
遊び半分が裏目に!? ICカードを偽名にした人の末路
[ WEB車掌SEKIDAIの「新たな世界に駆け込み乗車」 ~乗って気付いた異次元な世界!~ ]
時代の変化によって変わる鉄道システム
皆さんは「オレンジカード」を知っていますか? これは、自動券売機で乗車券などを購入する際に使用できる磁気式プリペイドカードです。平成初期にはさまざまなデザインのオレンジカードが流行。人気俳優(タレント?)のものは、今でも高値で取引されているようです。
その後1991年には、そのオレンジカードに加え、カードを直接自動改札機に投入して運賃精算できるように技術が進化しましたが、2001年にそれらに替わるシステムとして「Suica」が導入されました。
前々回(https://digi-den.net/seki-daichi/category-business/2022/09/15/12174/)にもご紹介しましたが、僕がJR東日本に入社したのが2002年。ちょうどその前年、入社説明会のときにSuicaが大々的に紹介されていたことを覚えています。「タッチ&ゴー」のキャッチフレーズで改札機にタッチするだけで精算できるというそのときの衝撃は今でも忘れません。
最近では、「新型コロナウイルスの流行もあるから、安易に物に触りたくない」という人もいます。そのため、何となく感覚で気付いている人もいると思いますが、改札機にタッチしなくても、近づけるだけで反応します。
このSuicaには、ソニーが開発した非接触型ICカード技術の「FeliCa」が採用されています。これは“非接触型”であるため、近づけるだけで反応します。
ちなみに、JR東日本では「パスケースやバッグから取り出す必要はないが、確実に読み取りを行うために“かざす”のではなく“タッチ”すること」を推奨しています。
最近では技術もさらに進化し、Suicaと学生証・社員証が一体化したサービスも始まりました。学割が適応される定期乗車券は学生証を携帯しなくてはなりませんから、一体型はとても便利ですね。今後もものすごいスピードで進化する技術に期待しかありません。

誰にでも簡単に手に入れることができるようになったICカード
最近では定期券もこのSuicaをはじめとする鉄道各社の発行するICカードが主流になってきました。もちろん、通勤・通学定期券は身分証明書を提示して窓口で交付してもらわなくてはいけません。しかし、定期券機能のない「My Suica(記名式)」は駅の券売機で簡単に手に入るようになりました。
「My Suica(記名式)」は、対応している駅の券売機で氏名(カタカナ)、生年月日、電話番号などを登録するSuicaで、その表面に氏名が印字されている本人以外は使用することができません。
個人情報を登録しておくことで、万が一紛失した際に、有償ではありますが、使用停止や残高を保証した再発行を受けることができます。
このように自分で入力できるようになりましたから、誤字・脱字で訂正してもらうケースもありますが、遊び感覚で、ICカードの記名をニックネームで登録する若者も増えてきているのです。
この話を聞いて、「おもしろそう!」と思った人は、最後までこの記事を読んでくださいね。その代償でデメリットもありますので。

ICカードをニックネームにした際のメリットとデメリット
ICカードをニックネームで登録するとどのようなことが起きるのか、一緒にシミュレーションしてみましょう。僕のTikTokではさまざまな質問をいただきます。その中には「芸能人の名前やハリウッド俳優の名前でICカードを登録している」という人がいました。
個人責任で作成するわけですが、せっかくですから僕の考えをお話ししていきたいと思います。まずはメリットから考えてみましょうか。
まずメリットは、自己満足感を高めることや、友人などの関心や興味を引けることでしょうか。飲み会などで芸能人やハリウッド俳優の名前であれば、その場は盛り上がるかもしれません。他は……あまり思い浮かびません(笑)。
では、デメリットはどうでしょうか? デメリットは、紛失した際に手元に戻る可能性が限りなく低くなってしまうということです。
先ほど「My Suica(記名式)」は万が一紛失した際には有償で使用停止措置と残高保証を受けられるという話をしましたが、紛失してしまったものを受け取る際は、本人確認書類(身分証明書)を提示して返却してもらうことができます。
しかし、偽名やニックネームであればどうでしょうか? 本人確認書類と情報が一致しないために返却される可能性が低くなってしまうのです。
拾得者も、本名のICカードであればすぐに警察や駅に届け出るでしょう。しかし芸能人や俳優の名前であれば、そのまま使ってしまう人もいるかもしれません。ICカードにチャージした電子マネーも保証はないでしょう。
いくら落とし物が戻ってくる可能性の高い日本においても、このような状況ではなかなか戻ってくることはありません。やはり自分の持ち物は実名にしておくことが大切ですね。

パロディなどで楽しむ際にはしっかりと考えてから
この世界で暮らしていくためには、まじめすぎてもおもしろくないと思うかもしれません。確かにそう思います。ときには僕も、友人や視聴者と一緒にふざけたような話や行動もします。しかし、そういうときはしっかりと自分の中で線引きをしています。
それは他人様には迷惑をかけないこと、自分自身の不利益を得ないようにすることです。今回のICカードの記名の件は、自分にとってマイナスな面しか見えてきません。
確かに仲間内で楽しむ分には良いかもしれませんが、他人からしてみたら「簡単に偽名を使う人」と信頼感を失うかもしれませんし、落としてしまった際に戻ってくる可能性が少ないリスクがあるからです。
まあ、僕は作ったことはありませんし、これからも作ることはありませんね。今回の話を聞いて皆さんはどのように感じましたか? もしかしたら、ドキッとした人もいるかもしれません。
娯楽の延長でこのように楽しむ人もいるでしょうから、僕はこれ以上言及しません。ただ、落とした時のリスクなども考えていただき判断していただけたらと思います。今後も鉄道に関する記事を掲載していきたいと思いますので、また遊びに来てくださいね。
では、また♪

「2007年にJR東日本の車掌となる。車掌による英語での車内アナウンスがなかった当時、独学で英語を学び、車内英語アナウンスを決行。すぐに動画サイトやSNS上で話題になり「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年に退社し、鉄道、英語にかかわる事業を立ち上げ活動中。
関大地さんの紹介ページは→こちら
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