えっ!? 新幹線だけど新幹線じゃない!?

[ WEB車掌SEKIDAIの「新たな世界に駆け込み乗車」 ~乗って気付いた異次元な世界!~ ]

とても便利な新幹線

あなたは新幹線を利用しますか? 遠出するときは場所にもよるとは思いますが、飛行機や夜行バスを使ったり、自家用車で移動するという人もいるでしょう。もしかしたら、費用面から敬遠する人もいるかもしれませんね。

僕自身は、遠出をするときは新幹線を利用することが多いです。やはり時間には代えられないですから。「Time is money」という言葉があるように、時間に余裕ができるとその分を自己投資に充てられますからね。

新幹線に乗車中も読書や執筆をしたり、動画編集をして時間を有効活用しています。他にも、プライベートで出かけるときはお酒を片手に旅行を楽しむこともできますし、僕にとっては公私ともになくてはならない存在です。

さて、新幹線というと、あなたの頭の中にはどのようなイメージが浮かびますか? 利用している鉄道会社でその形は異なりますが、大きい車両であったり、すごく速く走るものではないでしょうか。

小さい子どもにも電車は人気ですが、その中でもダントツなのが新幹線ですね。海外の人にはその速さから弾丸(Bullet)のようだということから「Bullet Train(バレットトレイン)」と呼ばれていたり、日本の新幹線に関してはそのまま「Shinkansen(シンカンセン)」と言われることもあります。

今回の話は、「あなたがこれまで新幹線だと思っていたものは新幹線ではなかったかもしれない」という話です。「えっ?」と思わず声を出してしまったあなたのために今回はお話ししたいと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。

山形新幹線・秋田新幹線は新幹線じゃない!?

まず、「新幹線が新幹線じゃない? いったい、この人は何を言い始めるんだ?」と思った人もいるでしょうが、あなたは新幹線の定義を知っていますか? これがわかれば納得してもらえるはずです。

実は新幹線には「時速200km/h以上で走れる路線でなくてはいけない」という定義があります。この定義からいうと、「えっ!? もしかして……」とピンと来た人もいるでしょうね。そうです、JR東日本の山形新幹線と秋田新幹線がありますが、実はこれらは“新幹線”とはみなされないのです。

山形新幹線と秋田新幹線は東北新幹線の本線上を走っているときは時速200km/h以上で走行していますが、本線から別れた区間(山形新幹線は福島~新庄間、秋田新幹線は盛岡~秋田間)は最高時速130km/hに制限速度が設定されています。

これは両線区とも、新幹線の専用路線ではなく在来線を改良して新幹線が走れるようにしただけの路線だからです。

実は日本の新幹線で使われている線路を標準軌(ひょうじゅんき)、山手線などで使われている線路を狭軌(きょうき)と呼びます。標準軌の左右レールの幅は1435mmで狭軌は1067mmです。

「じゃあ、線路はどうなっているの?」と思いますよね? 実は3本レールがあるのです。新幹線でも在来線でも使える基準となるレール1本と、新幹線用1本、在来線用1本の3本のレールが並んでいます。これは「三線軌条」と呼んでいます。

このように線路を改良して、新幹線の車両でも在来線の車両でも走れるようになっています。そのため山形新幹線や秋田新幹線は「ミニ新幹線」と呼ばれることもあるのです。

他にもそのような路線はある?

実は、このような路線は他にもあります。同じJR東日本で言えば上越新幹線のガーラ湯沢駅です。上越新幹線の越後湯沢駅からは折り返し車両留置用に1.8kmの短い支線がありますが、その先に「GALA湯沢スキー場」ができたことから、JR東日本はその支線を延長してスキー客のためにガーラ湯沢駅をつくりました。

この路線も在来線扱いです。ちなみに、この支線とガーラ湯沢駅はスキー場が開業しているときしか営業していません。オフシーズンには時刻表の路線図から消えてしまうので注意してくださいね。

次に紹介するのがJR西日本の「博多南線」という同じような路線です。博多駅から博多南駅に行くためには新幹線の車両に乗るのですが、このケースは新幹線ではなく在来線扱いになるのです。

博多南線は元々、博多駅の先にある博多総合車両所という山陽新幹線の車両基地に入る回送線でした。車両基地ができてから徐々に宅地化が進んで人口が増えると、周辺住民から回送線で旅客営業をしてほしいと要望が出され、1990年に車両基地の一角に博多南駅をつくって営業運転を開始したのです。

ここで出てくるのが「運賃・料金はどうなるの? 新幹線に乗るのだから高いでしょ?」という質問でしょう。この区間は8.5kmしかないのに通常の新幹線特急料金がかかるのであれば、せっかく地元住民のために開業した意味がありません。

そこでJR西日本の判断として、博多南線は設備も車両も新幹線であるのにも関わらず、特例で在来線とみなし、運賃の他に特急料金100円を支払えば乗車できるようにしたのです。いかがですか? 意外と知らないことって多いですよね。

 あなたの周りにも意外とそういう場所があるかもしれない……

今回は新幹線についてお話ししましたが、東京メトロ千代田線の北綾瀬駅も地元住民の要望から車両基地までの回送線の途中につくられた駅です。探してみると結構ありますね。

普段、何気なく利用している鉄道も、歴史を知れば違った見え方になったのではないでしょうか?

僕がJR東日本に入社した2002年には線路だった場所に、2年後の2004年には本庄早稲田駅が開業しました。

そのときはかなり衝撃を受けましたね。何もないところから、あっという間に新幹線の駅が完成したのですから。建設途中の時点ではまだ駅名も決定しておらず、当時僕たちは「本庄新駅(ほんじょうしんえき)」と呼んでいました。その後、現在の「本庄早稲田駅」という名前に決定したわけです。

そう考えてみると何だかなつかしい気持ちになって、ここからまた違う思い出話を始めたくなりますが、話が途切れそうもないので、次回以降にしたいと思います(笑)。また遊びに来てくださいね。

では、また♪


「2007年にJR東日本の車掌となる。車掌による英語での車内アナウンスがなかった当時、独学で英語を学び、車内英語アナウンスを決行。すぐに動画サイトやSNS上で話題になり「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年に退社し、鉄道、英語にかかわる事業を立ち上げ活動中。
関大地さんの紹介ページは→こちら

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  1. cecille

    「ガーラ湯沢」に懐かしさを感じ、
    「三線軌条」にトキメキを感じた記事でした。
    私と同じ年に生まれた新幹線には、親近感を覚えます☺️🎶