
鉄道ファンに一目置かれる『完乗達成』とその盲点
[ WEB車掌SEKIDAIの「新たな世界に駆け込み乗車」 ~乗って気付いた異次元な世界!~ ]
鉄道ファンの憧れ「完乗」とは?
まず、あなたは「かんじょう」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 耳で「かんじょう」だと、感情、勘定、環状など様々なものがあり、混乱してしまいますよね。
では、この文字を見たらどうでしょう? 「完乗」これならだいたい想像できるかもしれませんね。「完全に乗る?」そうです、正解です。これは交通機関が営業する、すべての路線に乗車・搭乗する「完全乗車」の略なのです。
鉄道ファンの中で「俺、JR・私鉄完乗したぜ!」なんて言えば注目の的です。その功績は達成するとWikipediaなどにも載るほどです。
では、実際にどのようにするのかということですが、書店で鉄道の路線図や地図を購入して、自分の乗った区間をペンなどで塗り潰していきます。この様子から「乗り潰し」とも言われています。“まっさら”だった路線図が徐々に自分色に染まっていくのは楽しいですよね。
「塗り潰すだけなら、ちょっとくらいズルしても……」と考える人もいるかもしれませんが、だいたいの方は動画や写真などを一緒に残しておき証拠とします。そもそも、ズルして達成しても本当に心の底から喜べませんからね(笑)。
「こんなに盛り上がっているのは日本だけ?」と思った人もいるかもしれませんが、実は日本だけではありません。もちろん、世界にも鉄道ファンがいます。海外では「complete riding(コンプリート・ライディング)」と表現されています。
僕も様々な路線を旅したいと思っていましたから、コロナ禍も落ち着いてきたので段々と計画していきたいなと思っています。

JR・私鉄完乗にJR宮島航路は必要であるか?
日本のJR・私鉄完乗を果たすためにはものすごく長い道のりになりますが、一度目指してスタートしたのなら何としてでも達成したいですよね。仕事やスポーツでもそうですが、一度決めた目標を絶対にあきらめず達成するのは素晴らしいことです。
もしかしたら、鉄道会社に就職を目指している人であれば、面接時に「JR・私鉄完乗しました」などと言えば、面接官の心をつかむことは間違いないでしょう。だって、一度その路線に乗ったことがあるということは、乗り換えや接続案内などがスムーズにできるという期待感も生まれますからね。
さて、そのためには押さえておかなくてはならない重要なことがあります。それは、「JR宮島航路」の存在です。
「JR宮島航路」とはJR西日本の子会社が運行する日本三景の1つ、安芸の宮島と広島県本土を結ぶ連絡船航路のことです。JR線を完乗するためには、この「JR宮島航路」にも乗るべきかどうかということが鉄道ファンの中で論点になっているようなのです。
なぜ、このようなことが論点になるのか疑問になりますよね? だって、JR宮島航路は「JR」と名前が付いていますが、連絡船なわけで鉄道ではないからです。「じゃぁ、なんでそれがJR完乗に必要なの?」というのが大多数の考え方でしょう。
それはなぜかと言いますと、JR宮島航路が「青春18きっぷ」で乗れるからなのです。「青春18きっぷ」については知っている人も多いですよね。これは、JRの普通・快速列車に期間限定で乗り放題になるお得な切符です。
この「青春18きっぷ」を購入しますと、次のように注意書きがあります。「(本券で)普通・快速列車の普通車自由席及びJR西日本宮島フェリーが利用できます」そうです、わざわざ「青春18きっぷ」でJR宮島航路にも乗れることが記載されているのです。

JR宮島航路の歴史から考える
かつて国鉄時代には青函連絡船や宇高連絡船などの連絡航路船が運航されていました。しかし、JRが民営化になってそれらは次々と廃止になってしまいました。そして、現在はJR宮島航路がJRの運航する(正確に言うとJR西日本の子会社)唯一の連絡船航路となったのです。
ちなみにJR宮島航路は片道180円、所要時間10分です。青春18きっぷで乗れるからといっても特別お得なわけではありません。それでも青春18きっぷでワザワザ乗れるようにしたのはなぜなのでしょうか?
時刻表なども、通常「船舶」であると巻末の「その他の交通機関」というところに記載されるのにJR宮島航路だけはJRの鉄道路線のページに記載されています。僕は、今でも「ささやかながらに頑張っているんだぞ」というメッセージなのではないかと解釈しています。
鉄道ファンであればこだわりがあるかもしれませんが、そうでない人には「どうでもよい!」という中身なのかもしれません。

議論するぐらいなら乗ったほうが良いのでは……?
これは完全に僕の意見ですが、このJR宮島航路に乗ってしまえば、「本当に完乗した」と胸を張って言えるわけです。この1つの航路を乗るだけでモヤモヤがなく「俺はJR・私鉄完乗したぜ!」とスッキリとした気持ちになれるのであれば、乗ったほうがいいと思います。
僕は結構サッパリとした性格なので(笑)、何でも「大は小を兼ねる」の考えを持っています。「バイクに乗りたい!!」と18歳で思い、免許を取得したときも面倒だから大型免許を選択しました。
はじめに「中型からスタートして、ハーレーに乗りたくなったら限定解除すればいいや」なんて考えるのだったら、最初から大型にしておいたほうが楽だと考える人なのです。
僕は現在この日本中で乗れない自動二輪はないわけですが、今までに大型バイクに乗ったのは教習所のCB750が一番大きいバイクです(笑)。これが「宝の持ち腐れ」というのか、もう少し歳を重ねてから乗るのかはわかりませんが、人生の選択肢が増えますよね。
ですから、このJR宮島航路も乗った後で議論すればいいと思っています。「もしも○○だったら……?」という議論をすること自体、時間がもったいないと感じています。
今回は、ちょっと変わった視点から鉄道?船舶?のことをお伝えさせていただきました。また、鉄道のことであなたとお話しできたら嬉しいです。
では、また♪

「2007年にJR東日本の車掌となる。車掌による英語での車内アナウンスがなかった当時、独学で英語を学び、車内英語アナウンスを決行。すぐに動画サイトやSNS上で話題になり「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年に退社し、鉄道、英語にかかわる事業を立ち上げ活動中。
関大地さんの紹介ページは→こちら
いろいろな意味で,特別な感じがする「JR宮島航路」
とっても気になります。
乗ってみたい😊🚞🛳