
「大丈夫だろう……」がもたらす悲劇。無人駅で不正乗車がバレる理由
[ WEB車掌SEKIDAIの「新たな世界に駆け込み乗車」 ~乗って気付いた異次元な世界!~ ]
なくならない不正乗車
昔から一定数現れる不正客。数百円を浮かそうと考えてやるのか、スリルを味わいたいだけなのかはわかりませんが、そのちょっとした出来心で人生を棒に振る人がたくさんいることも事実です。
最近ではさまざまな路線で無人駅化が進み、その数はさらに増えています。「俺の降りる駅は無人駅だから、安い切符を買って電車にさえ乗ってしまえば勝ち組」なんて思っている人がこの世の中には一定数いるのです。
ただでさえコロナや少子高齢化で乗客が減少しているのに、このような考えの人がいれば鉄道会社はたまったものではありません。
最近では、「赤字路線は今後の存続を検討する」としてメディアでも紹介されているところもありますから、この状況が続くようであれば、その路線は廃線になってしまう可能性もあります。乗客が鉄道を利用したのに運賃を支払わない。それが結果的に自分で自分の首を絞めている状態ですよね。
そのために、鉄道会社もあらゆる手段を使って不正の撲滅に向けて動いています。「無人駅だから大丈夫」「絶対にバレない」と考えている人はこの記事を読んで気持ちを改めていただけたらと思います。

あらゆるところにある防犯用監視カメラ
あなたの住んでいる家やマンションに監視カメラは設置されていますか? 最近ではほとんどの場所に付いていますね。自動車も最近の車にはドライブレコーダーが付いていないものの方が少ないくらいです。
やはり、何か事件が起きたときにはそのような映像や画像が動かぬ証拠となることがほとんどです。最近のメディアやSNSでもその映像が出回るように、拡散されたらその犯行の一部始終が世の中の人に知れ渡ってしまうことになります。
鉄道でもまったく同じです。犯罪の防止のためや、起こってしまった場合の状況確認のために防犯カメラは使用されます。最近では列車内に付いているものもありますよね。列車内はドアが閉まり走り出してしまったら密室になります。痴漢や盗撮、スリなどさまざまな犯罪をこれで抑制しているのです。
これは犯罪だけでなく人命救助にも役立ちます。急病の人が現れた場合は早急な対応が必要となります。むしろ、このようなことのためだけに監視カメラは使いたいですよね。
もちろん無人駅にも監視カメラが付いているところもあります。もし、不正乗車をした場合、「うまくかわせた」と思っても後日事情聴取なんてこともあります。それはそういうカラクリなわけです。

なぜ車掌はピンポイントに検札をするのか?
あなたは列車に乗ったときに「なぜピンポイントに自分のところに検札(切符の確認)に来るのだろう?」と思ったことはありませんか? たくさんの乗客がいるのにしっかりと覚えているのはすごいと思いますよね。
「それは仕事だから」と言ってしまえば簡単なのですが、実際に乗客の乗車駅はどの車掌もある程度把握しています。特に特急列車(会社によっては特急料金を払わないで乗れるものもありますが、ここでは料金を払う列車のこと)やローカル線では、車掌は目を光らせています。
「無人駅だから不正をしてやろう」と考える乗客がいるのであれば、「不正を絶対に阻止しよう」と考える車掌がいることも当たり前です。ローカル線になれば、車掌はもちろん車内検札もしますが、無人駅に到着するたびにホームに降りて駅員のような仕事をすることもあります。
それはデジタル・アナログの機能を使って乗客の状況を把握しているからです。僕が車掌のときも乗客が入れ替わるたびにメモを取っていました。乗車駅はもちろん、特急列車で特急券を確認したときには降車駅もチェックします。それを自分のわかりやすいようにまとめておくのです。
これは何も不正する人を見逃さないというためではありません。寝過ごしてしまいそうな人を起こしてあげることや、間違えて乗ってしまった人に伝えることも立派な仕事なのです。
ローカル線ではそもそも各駅乗車人数が少ないです。中には1駅で数人しか乗車しない場合もあります。そのときは特に意識しなくてもどのような人が乗車したのか覚えているものです。
例えば、A駅ではご年配の男性1名と、男子高校生2名、女子高校生2名、お子さま連れの女性の合計7名が乗ったなど記憶にも残ります。そこで、別の20代の男性がB駅で精算しようとしたときに「A駅から乗りました。清算お願いします」と申告したらすぐに不正だとわかりますよね。
実は車掌はこのような状況を確認しているから、ピンポイントで声を掛けることができたのですね。

意外と軽く見がちな不正乗車
中には車掌の行動を監視して隙を狙うような人もいますが、そこまでして不正をしようとする人の気持ちが正直わかりません。
レストランで食事をしたのに代金を支払わずに店を出る、いわゆる“食い逃げ”や商品を盗む万引きに関しては犯罪だと認識している人はいるのに、列車の不正は子どもから大人まで年齢を問わずやってしまう人が多いのはなぜでしょうか?
スーツを着た立派な社会人でさえも、普通にやっている人もいます。特急列車の中でトイレに隠れる人、車掌が見えたらスッと席を立ち移動をする人、「見つからなければやってもいい」と安易に考えている人が多すぎです。
やってしまえば、駅員や警察に事情聴取をされますし、そのまま逮捕となるケースもあります。そこまでいって、土下座をしたり泣き出す人もいますが、もうそれは後の祭りです。やってしまったことは取り消すことができないのです。
この記事を読んでくださったあなたはこのような状況にならないように、周りの人にシェアしてあげてくださいね。
今後もこのような鉄道に関する知識や裏側を書いていきますので、またの乗車をお持ちしています。
では、また♪

「2007年にJR東日本の車掌となる。車掌による英語での車内アナウンスがなかった当時、独学で英語を学び、車内英語アナウンスを決行。すぐに動画サイトやSNS上で話題になり「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年に退社し、鉄道、英語にかかわる事業を立ち上げ活動中。
関大地さんの紹介ページは→こちら
この記事へのコメントはありません。