
こんな時は「非常停止ボタン」を!!
[ WEB車掌SEKIDAIの「新たな世界に駆け込み乗車」 ~乗って気付いた異次元な世界!~ ]
意外と押せない「非常停止ボタン」
あなたは駅や電車内の「非常停止ボタン」を押したことはありますか? 経験がある人は本当に稀ですね。むしろ、このような状況に出くわさないことが一番良いことなのですが……。
駅や電車内で非常停止ボタンを扱うと警報音が鳴ったり、赤いライトが点滅したりして危険を知らせます。その状況は誰が見ても非常事態だとわかる、緊迫した空気が流れます。
もし、あなたが危険を感じたらこの非常停止ボタンを躊躇なく扱うことはできますか? 即答で「扱えます!」と答えられた人はとても優秀です。ほとんどの人が一瞬躊躇してしまいます。
さまざまなメディアが鉄道事故やトラブルなどを報道していますが、ニュース記事や動画のコメント欄には必ず「損害賠償はどのくらいなんだろう?」「家族が肩代わりしなきゃだからかわいそうだ」という内容が書き込まれています。
どこからの情報をもとにそのようなコメントを書き込んでいるのかわかりませんが、そういったコメントを鵜呑みにしないでください。書き込んでいる人は鉄道の専門家ではない人がほとんどですから。
今回は、命を守る行動をとりやすくするために鉄道の非常停止ボタンについて書いていきたいと思います。

最近メディアなどで取り上げられ認知されてきたが……
「山手線止めてんだぞ!」で記憶に残っている人もいるかもしれませんが、最近では「非常停止ボタン」の存在もかなり認知されるようになってきました。しかし、まだまだ危険を感じても押すことを躊躇してしまう人がいます。
その理由は、非常停止ボタンを押すことにより、損害賠償を負わされるのではないかと考えている人が多いからです。
僕はTikTokで、「危険を感じたら迷うことなく非常停止ボタンを扱ってください」と何度も呼びかけるのですが、必ずコメントの中には「損害賠償が怖くて押せない」という声が出てきます。
やはり、そのような噂が流れてしまえば誰でも躊躇はしてしまうものです。しかし、実際のところ、危険を知らせてくれた人には感謝の言葉が贈られるという、まったく逆の状況を迎えることになります。
もちろん、何も問題が起きてもいないのに電車を無理やり止めれば問題です。しかし、命が危険に晒されている状況では、緊急停止ボタンを押して鉄道員に知らせてくれた人は感謝されます。
このような誤った認識が広まってしまっている背景には、電車に飛び込んでしまう人がいたり、線路に障害となるようなものを投げ入れるというような、列車妨害をする人がいたりするからでしょう。
たしかに列車妨害の場合は損害賠償が発生することがあります。しかし、電車内で急病人が発生した場合などはわざとではないですよね。その場合は、安全のために電車を止めるわけですから何の問題もないのです。

もしもバッグなどが電車のドアに挟まってしまったら?
あなたが急いで電車に乗ろうとしたときに、バッグがドアに挟まれてしまったことはありませんか? 本人ではなくても、「そういう光景を見たことがある」という人は、そのときの状況を思い出してみてくださいね。
バッグが挟まって電車が発車してしまったら、あなたはどのような行動をとりますか? 挟まってしまった側のドアが開く駅まで我慢するでしょうか?
「恥ずかしいから、我慢する」と答えた人は、ちょっとその考えを改めてください。模範解答は、電車内の「非常停止ボタン」をすぐに押す、です。
その理由は簡単です。次の駅に電車が進入する際にホーム上にいる人にぶつかるのを防ぐためです。電車の駅に進入する速度が60km/hを超える線区もあります。その勢いでぶつかったら、人は命を落とすこともあります。
「挟まってしまったほうのドアが開くのを待つ」という行為は、一見賢そうですが、ホームがある駅ということですから、当然乗ってくる人もいます。その人たちに当たってしまう可能性があるのです。
そのため、次の駅を待ってはいけないのです。すぐに電車内のSOSボタンか、駅に停車中であれば駅の非常停止ボタンを押して危険を知らせてください。そのときは一瞬恥ずかしい気持ちになるかもしれませんが、もし次の駅で人にぶつかってしまうようなことが起きれば、ニュースになってしまうことだってあり得るのです。
今日、この記事を読んでくれた人は、そういうことまで考えて行動しましょう。

常に安全サイドに物事を考えるようにしよう!
非常事態が発生したときは気持ちに焦りが生じることの方が多いと思います。特に「非常停止ボタン」を目の前にすると、余計なことを考えてしまってなかなか押せない人のほうが多いことも事実です。
しかし、こう考えてみてください。「押したことによって誰かの命を守ることができた」「押したけど、結果何も事故は起こらなかった」という2択しかないんです。実はどちらとも良いことなんですよね。
そうなんです。人は物事を善か悪かの2択でしか考えようとしません。しかし、どちらとも善と考えれば気持ち的にもずいぶん楽になるのではないでしょうか。
そのように日頃から考えていると、身体が動くのが速くなります。もし、何もなく空振りだったとしても、自信を持って「危険と判断したので止めました」と理由と一緒に毅然とした態度で鉄道員に伝えれば、きっとお礼を言ってもらえるはずです。
いざというときに動ける人と動けない人の違いというのはこのような気持ちの部分にあるのかもしれませんね。
今回は、よく質問に出る非常停止ボタンについてお伝えさせていただきました。ここまで読んで「まだ躊躇してしまうかも」と心配な人は自分の家族や恋人がアクシデントに見舞われていることをイメージするように意識してください。そうすれば、動きやすくなると思いますよ。
また鉄道に関するエトセトラを書いていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。
では、また♪

「2007年にJR東日本の車掌となる。車掌による英語での車内アナウンスがなかった当時、独学で英語を学び、車内英語アナウンスを決行。すぐに動画サイトやSNS上で話題になり「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年に退社し、鉄道、英語にかかわる事業を立ち上げ活動中。
関大地さんの紹介ページは→こちら
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