なぜ、英語車掌SEKIDAIが銚子電鉄にこだわるのか?②

[ WEB車掌SEKIDAIの「新たな世界に駆け込み乗車」 ~乗って気付いた異次元な世界!~ ]

車掌さんのとった驚くべき行動とは!?

海鹿島駅に到着し、駅舎の外に走りだした車掌さんが戻ってくると、隣にはご年配の女性がいました。そうです、この女性をエスコートしていたのです。ご年配の方は歩行速度もゆっくりですし、階段のようなちょっとした段差を上がるだけでも一苦労です。

この光景は地域密着の銚子電鉄の社員だと当たり前と考えているかもしれませんが、決して当たり前ではありません。僕も車掌のとき、困っている人を見掛けたら声を掛けたり、多少発車時刻を遅らせることもありましたが、改札の外までエスコートすることはありませんでした。

列車のダイヤの過密度などにもよりますが、普通に考えると運転頻度が多い路線では「次の列車を利用してもらう」ということが慣例です。

今思い返してみても、僕が車掌として担当していたときは「この列車に乗れなくても、また数分後に次の列車に乗ってもらおう」という気持ちがありました。銚子電鉄の車掌さんはそれを覆す、正に乗客ファーストの対応を行っていたのです。

海鹿島駅に限らず、駅には必ず段差があります。踏切待ちをしていると、目の前を通り過ぎていく列車は意外と大きいことに気が付きます。普段、何の気なしに駅のホームから乗車するときは気にもしませんが、地面から列車のドアまでの高さは意外とあるのです。

大きい駅ではエスカレーターやエレベーターが設置されていますが、ローカル線にはそのような設備がないことのほうが多いです。

銚子電鉄の社員さんは家族的存在

特に銚子電鉄は「銚子市住人シニア優待証」という銚子市に在住の65歳以上で自動車の運転免許を返納した人に運賃を半額にするという取り組みをしています。年齢的に自動車の運転免許を返納した人は、ちょっとした段差でも上り下りに時間がかかる人が多いですよね。

また、銚子電鉄線は無人駅が多いということもあり、各駅で駅員が目を配ることができないという事情もあります。それを乗務員が気を配ってカバーしているのです。

このように社員全員が乗客の立場になって物事を判断する。これは意外とできそうでなかなかできないことです。僕はその光景を見たとき、自然と涙があふれていました。

「この時間になると海鹿島駅からは○○さんが乗ってくるかもしれない」「今日は乗ってこなかったな、体調でも悪いのかな?」などと考えながら乗務をしているからこそ、駅に到着するたびに改札の外などを確認する癖が身体に染み込んでいるのでしょう。

鉄道員でなくても、このように“お客さまを大切にする”というホスピタリティを持つことで、愛される、選ばれる企業になるのだと思います。

お礼を言って列車に乗った高齢女性は気さくに乗務員と会話しています。お互いの呼び方も名字で「○○さん」で、笑いも生まれています。本当に毎日利用しているからそのような関係が生まれているのは傍から見ても一目瞭然です。

それは地元住民だからそうなのでしょうか? いえ、そんなことはありません。僕は地元住人ではないですが、その日に何本か利用しただけで「またお会いしましたね」などと気さくに声を掛けてくださいました。そのような会社の考えなのでしょう。すばらしいです。

応援したくなる鉄道会社

商品・サービス自体は良くても、それを提供する人が横柄な態度をとったり、不愛想であれば、二度と使いたくなくなることもあります。結局は商品・サービスは人によって左右されることがほとんどです。

人それぞれ性格は違いますが、僕がお会いした銚子電鉄の方はどなたもこのような印象を受けています。地域に密着したすごく温かい鉄道です。このようなアットホームな環境で鉄道員として働きたい人も多くいることでしょう。

さまざまなメディアでも取り上げられていますが、銚子電鉄は社長自ら自虐ネタにするような経営状況の苦しい状態が続いているそうです。しかし、そのような状況にも関わらず、社長をはじめ、全社員が活き活きとした表情をしています。

以前、TV番組の中で“とある”政治家が「(銚子電鉄は)廃線も考えていかなくてはならない」と発言していました。たしかに、経営が厳しいと言われている中でコロナ状況下に突入してしまいましたから、そのような意見が出てもおかしくはないかもしれません。

しかし、銚子電鉄に足を運び、地域の人々にとって重要な役割を果たしている状況を目の当たりにすれば、そのような発言はなくなると確信したのです。

現在、経営が苦しい企業のほうが多い状況の中で、どのようにしたら良い方向に進んでいくのか?を考えない限り、この厳しい現状は乗り越えることはできないのです。

僕はこのとき、決意したのです。「この銚子電鉄を廃線になんて絶対させない」と。

ある人からの着信

そんな想いを強くしながら、僕は銚子電鉄の弾丸ツアーの2日目に入っていました。今日は、歩きで銚子電鉄線を制覇しようという日です。銚子駅からスタートして終点の外川駅までカメラで記録しながら銚子電鉄線の全貌を捉えようと意気込んでいました。

良い調子で足を進めていくと、笠上黒生駅まで行ったところでトラブルが発生してしまいました。何と、カメラが壊れてしまったのです。

せっかくさまざまな線路の特徴や魅力を収めたカメラのデータが一瞬にして消え去ってしまいました。すぐにスマホで近くの家電量販店を探して駆け込もうと思ったのですが、意外と距離があり、銚子駅まで戻りレンタサイクルを利用することにしました。

2日目は銚子まで来て、自転車で家電量販店に行くことになってしまいましたが、いち早く新しいカメラをゲットし、間に合えば自転車でもう一度銚子駅から外川駅までチャレンジしようと企んでいたのです。

そんな災難が続いているときに、僕のスマホに見知らぬ番号から着信が入りました。その相手はなんと……。

次回に続く。


「2007年にJR東日本の車掌となる。車掌による英語での車内アナウンスがなかった当時、独学で英語を学び、車内英語アナウンスを決行。すぐに動画サイトやSNS上で話題になり「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年に退社し、鉄道、英語にかかわる事業を立ち上げ活動中。
関大地さんの紹介ページは→こちら

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  1. cecille

    高齢の親を抱える身として、銚子電鉄の乗務員さんの行動は、とても有難いことです。
    また、接客業に携わるものとして、見習うべき点であります。
    たった1人のNG行動により、そのブランド価値が下がってしまう、、、
    そんなことを思いながら読みました。
    さぁ、次回は、、、❓❓❓楽しみにしています😊🎶

  2. れんとん

    ホスピタリティ、どの様な場面でも大切ですよね。
    自分は職業柄、高齢者や障害のある方等どうしても目がいってしまいますが、銚子電鉄の社員さん方はそれが当たり前なんですもんね。
    素晴らしいことだと思います。
    そんな温かい銚子電鉄、微力ですが応援し続けます!

  3. ひろポンちゃん

    銚子電鉄に乗車し、まずみなさんの優しさ心遣いや人柄にすごくひかれました。地域密着の銚子電鉄だからこそできる事もいっぱいあり、初めて行った私達にも地域のみなさんの雰囲気もよく、心が綺麗になりましたぁ~私にできる事があるならこれからも応援していきたいです。