
なぜ、英語車掌SEKIDAIは銚子電鉄にこだわるのか?③
[ WEB車掌SEKIDAIの「新たな世界に駆け込み乗車」 ~乗って気付いた異次元な世界!~ ]
銚子電鉄常務のお誘い
カメラが壊れたことにより、当初の予定から大きく遅れをとってしまいました。そして日が暮れ始めたとき、見知らぬ番号から着信がありました。僕は基本的に、誰だかわからない電話には出ないのですが、不思議なことにそのときは何となく出てみようと感じたのです。
「もしもし……」
「SEKIDAIさんですか?」
「はい……」
「銚子電鉄の柏木です」
なんと、その電話は銚子電鉄の柏木常務からだったのです。
記憶は、映画『電車を止めるな!』を観にいったときまでさかのぼります。映画館で名刺交換をさせていただいたのです。その名刺を見て電話を掛けてくださったのです。
「SEKIDAIさん、今度打ち合わせできませんか?」
「はい、もちろんです。ちなみに僕は銚子にいます」
「えっ? いつまでこちらにいますか? 明日なら社長も私も本社にいますよ。もしお時間の都合がよろしかったら、寄っていただけませんか?」
「もちろんです」
と、まさかの銚子弾丸ツアーの最終日に、銚子電鉄本社にお邪魔させていただくことになりました。鉄道会社の本社内に入れる機会はなかなかありませんし、最終日は自分へのご褒美タイムとして空けておいたのですが、本当にこのようなご褒美をもらえることになったのです。

メディアでしか見たことのない銚子電鉄本社内へ
銚子電鉄本社といえば、映画『電車を止めるな!』の中でも実際の舞台となっています。「そのような場所に僕が入ってしまっても良いのか?」と感じましたが、僕も少しずつ認めていただけるようになってきているという事実に喜びを感じながら本社へ伺いました。
銚子電鉄の本社は仲ノ町駅と直結していて、僕はまず駅の改札にいた駅員さんにアポイントの話をして中に通していただきました。そこには映画の中の光景が広がって何とも不思議な感覚です。
本社に入ると柏木常務が席まで案内してくださいました。社内は社長のデスクから出改札で業務をしている駅員さんに声を掛ければすぐに反応できるほどの距離感です。
僕がJR東日本で車掌をしているときは、取締役クラスの人が常に近くにいると考えるだけで緊張してしまいそうな感覚を覚えましたが、銚子電鉄さんはまったく違って、ものすごくアットホームで笑顔が飛び交う職場でした。
銚子まで来て映画の聖地巡礼に来られただけでも最高だったのに、本社の中で打ち合わせができる喜びと同時に、自分自身が抱える責任感をしっかりと噛み締めました。
話によると、竹本社長は会議が長引いているということで、少し打ち合わせをしていれば戻ってくるとのことです。「じゃあ、これから打ち合わせを始めますか」などという掛け声もなく、柏木常務との会話が始まっていました。
鉄道会社の幹部と打ち合わせを行うとなると、緊張してしまいそうなシチュエーションですが、ざっくばらんな会話で盛り上がりながら、おもしろいことが現実的なアイディアなのかを考えていろいろと詰めていきます。
僕はYouTubeチャンネルを一応開設はしていますが、YouTuberではありませんから、『銚子電鉄で○○をやってみた』というような、点だけの関わりにはしたくないと思っていました。

竹本社長が合流。あっという間に決まった車内アナウンス
僕が一日車掌や一日駅長をやらせてもらう、保線の経験を活かして保線体験をしてもらう、車庫内に停車している電車内でイベントを行う、などさまざまなアイディアを出していきました。
しばらく柏木常務とアイディア出しをしていると、竹本社長が戻ってこられました。僕の目の前には銚子電鉄のトップ2がいらっしゃるわけですが、そこには学生の時に文化祭の催し物を何にしようか考えているときのようなフランクな空気が流れていました。
僕が文章を書くときもアイディアが出てくるときはリラックスした状態のときです。普段からこのような雰囲気で打ち合わせをしているからこそ、奇抜でおもしろいアイディアや商品が生まれるのでしょう。妙に納得していたのです。
「僕にしかできないこと、強みは何なのか? そして、今はコロナ状況下だ。コストを極力抑える。知恵を絞れ! 僕にできることを!」と自分に言い聞かせました。
そんなことを考えていると、「英語アナウンス」と頭の中に鮮明に浮かび上がったのです。やはり僕の強みは『英語車掌』です。前日、銚子電鉄線に乗車して車内アナウンスを聞いていると、自動音声が流れ観光案内などしてくれていました。その音声が日本語だけだったことを思い出したのです。
「あの! 英語アナウンスは導入しないのですか」と質問しました。すると竹本社長から「文章を考えたり、正しい英文なのかチェックしたり、声優さんにお願いしたり、その録音データを電車内のコンピュータにプログラムしないといけないので、やはりコストが……」という答えが返ってきました。
「正しい文章は、知り合いの翻訳・通訳の方、実際に話す声優は僕自身、録音スタジオやその費用は過去に何回か行ったことのあるクラウドファンディングでやれば解決する」と僕の頭の中ですべてが線で繋がったのです。
僕は、とっさに「それ、僕に任せてください! 僕が全部やります」と答えていました。
レコーディングのためのチームづくり
僕は帰りの列車の中でワクワクが抑えられませんでした。予算を掛けても良いものができるとは限りません。「アイディアと愛情を掛け合わせれば、ものすごいものが生まれる」と自分でもビックリするほど自信に満ちあふれていました。
気付いたら僕は同じ出版社から出版していた翻訳・通訳者の丸山清志先生にDMを送っていました。普段著者同士が繋がることはあまりないのですが、不思議と丸山先生とはすぐにSNSで繋がり仲良くなって連絡を取り合っていたのです。
丸山先生にこの経緯を話すと、「公共事業に関われるなんて光栄です。やりましょう」と即答で快諾してくださいました。
僕の周辺にはGIVEの精神を持った方がたくさんいますし、「それおもしろそうだからやってみよう」と即決の人ばかりです。しかも丸山先生も無償でご協力いただけることになりました。
このようにして、あっという間に、「銚子電鉄英語アナウンスプロジェクトチーム」が発足したのです。
次回に続く。

「2007年にJR東日本の車掌となる。車掌による英語での車内アナウンスがなかった当時、独学で英語を学び、車内英語アナウンスを決行。すぐに動画サイトやSNS上で話題になり「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年に退社し、鉄道、英語にかかわる事業を立ち上げ活動中。
関大地さんの紹介ページは→こちら
SEKIDAIさんと銚子電鉄のつながりは、SEKIDAIさんのお話や様々な記事で知ってはいたけど、何度聞いても面白いです。
お三方の楽しい会議風景も目に浮かびます😁🎶
銚子電鉄で英語のアナウンスをやるのは運命だったのかもしれませんね(*´˘`*)
SEKIDAIさんが電話に出なければ始まらなかった訳だし、何かに導かれたとしか思えません。
そして、続きが気になります!