ダイヤモンドよりも輝きを放ち、お手頃価格の「スフェーン」が出回らない理由とは?

[ 意外に知らない宝石の裏話 ~パワーストーン店20年監修者が教える ]

はいどーも。紫乃女です。
ご機嫌いかがですか?
 
前回は黒い石の話でしたので、今回は一転して華やかな石の話でもいたしましょう。女性の方はキラキラ光るものがお好きですしね!ヾ(´▽`)ノ←大好き

ダイヤモンドはなぜあんなにキラキラと輝くのか?

「キラキラとよく光る石」と言われれば、皆さんがまず思いつくのが「ダイヤモンド」だと思います。その「キラキラ光る」ことを、宝石業界の用語で表現するならば「ディスパージョン(dispersion:分散という意味)」または「ファイア」と言います。

なぜダイヤモンドのディスパージョンが高い(=キラキラとよく光る)のかと申しますと、それはダイヤモンドという物質の「光の屈折率」が非常に高いからです。

(女性の憧れ、ダイヤモンド)

「前回の『薄膜干渉』に引き続き、また小難しいこと言いやがってコノヤロウ」とお思いの方も多いことでしょうけれど、しょうがないでしょ、こっちだって避けて通れるものなら通りたいんです。

でも正直、避けて通るには惜しい。物理学って面白いんですよ。たとえば、濡れたテーブルの上に熱々のお味噌汁を入れたお椀を置いたらすーっと動くことがあるでしょ? あれも物理学で説明可能なんですよ。ね。結構身近な学問でしょう? さぁ、皆さんもレッツ物理!ヾ(´▽`)ノ ←文系出身
 
いかん、話が脱線した。
ええと、なぜダイヤモンドのディスパージョンが高いかってお話でしたね。

超簡単に言っちゃうと、光がダイヤモンドの中を通る時、そのまま素通りせずに何度も何度も折れ曲がってから出てゆくんですけれど、ダイヤモンドはその折れ曲がる頻度が高いんです。
ちゃんと言うなら、宝石内部に入った白色光が屈折する度に、白色光を構成する赤や黄などの各色に分散される率が高い。
そのせいで虹色に光って見える。次の図のように、白色光をプリズムに通すと7色に分散されて、虹色に光るのと同じ理屈です(ド文系の方でも、見たことがある方はいらっしゃると思いますが)。

でも光が全く折れ曲がらないで、物質を通る際にすーっと出て行った場合、その物質は「限りなく透明に近い」ものとして人間の目に写ります。その物質の内部で光が全く屈折しないので光の反射も起こらないから、こちらにはタダの透明の物体に見えちゃうんです。ピカピカに磨き上げられた上質なガラスみたいなもんですね。

ダイヤモンドの場合、その中を光が通る時、何度も屈折と反射を繰り返すので、人間の目には「キラキラとよく光る」ように見えるんですよ。雑な説明ですが、なんとなくご理解頂けたでしょうか。

そのダイヤモンドのディスパージョンの値は「0.044」。この数値が高ければ高いほど「キラキラとよく光る(光がよく分散する)」わけですが、なんとこの数値が「0.051」の石があるのです。今からその石のお話をいたしましょう。あー、前置きが長かった!

ダイヤよりも光り、色合いも美しいその石の名は「スフェーン」


ダイヤモンドよりも光る石。その名を「スフェーン」と申します。
宝石好きな方じゃないと聞きなれない名前でしょうね。鉱物名は「チタナイト(チタン石:Titanite)」。その名の通り、チタン(Ti)が含まれた石です。

なんで「スフェーン(ギリシャ語で「くさび」って意味)」って名前がついたかと申しますとね、その結晶がくさびみたいな形をしているからなんですよ。

(緑色のところがスフェーン。このように母岩に打ち込まれたくさび型で産出する)

スフェーンは、赤・オレンジ・黄色・緑色など、結構様々な色合いのものがあるんですが、大体において1色だけってことはなく、2色以上の光を有するものがほとんどです。

その色合いによっては、ダイヤモンドよりもはるかに印象的で美しい石なんですよ。

(黄色主体のスフェーン。赤や緑の光も見える)
(赤とオレンジが主体のスフェーン。黄色い光もある)

一番人気は、なぜか緑系のものです。
「クロムスフェーン」と呼ばれるもので、微量のクロム(Cr)が含まれているせいで緑色に強く光ります。緑の中で赤や黄色が光るのはなかなかに強烈ですよ。

(クロムスフェーンの分かりやすい例。緑の中にオレンジと黄色の光が見える)

スフェーンが出回らない悲しい運命となった原因とは?

「でも見たことないな。こんな綺麗な石が、なぜ宝飾品としてもっと流通しないんだろう?」と疑問に思われた方もいらっしゃるでしょうけれど、実はスフェーンには大きな弱点があるのです。

スフェーンのモース硬度(鉱物の硬さを示す単位)は5から5.5。モース硬度最高峰「10」を誇るダイヤモンドの約半分です。つまり割れやすいってことなんですよ。

指輪などに加工して日常的に使用するには、少々心もとない硬さなんです。この弱点さえ無ければ今頃、スフェーンはキラキラ光るものに目が無いお嬢さん方に大人気となっていたことでしょう。実に残念なお話ですな。
 
しかし、割れやすさで言うならオパールだって割れやすいですし、ダイヤモンドだって割れる時は割れるもんです。
モース硬度とはまた別のお話になりますが、ダイヤモンドは8方向のうち1方向だけその原子の結合が緩い部分があります。そこを狙われると意外と簡単に欠けるもんなんですよ。専門用語で「へき開性」と呼びます。

だから、割れやすさを気にしてモース硬度の低い石を遠ざけるのはちょっと惜しいですね。硬くはなくとも美しい石は世界中に溢れているのですから、これを機会に皆さまにも色々な石に触れて頂きたいと思います。キラキラ光るものはお好きでしょ?
 
「よし、興味が出たぞ。さっそく身に着けてみようじゃないか!」というわけで気になるお値段のほうですが、オパールなんかに比べたら全然安いよ! この石1カラット強だけど1万円ほどですね。ダイヤより光る石が1万円!

(ただ、日本で買うと結構お高いよね。まぁ宝石は現地で買うと、保険代とか輸送費とか掛かるからしょうがないんだけどさ)

「石言葉」を知ることで、組み合わせたい別の石が見えてくる

「ルース(裸石のこと。台にセットされていない石だけの状態を指す)で持っててもなぁー」ってことなら、ビーズもありますよ。

ま、宝石質のスフェーンをビーズに加工するお馬鹿さんはいないので、石のクォリティはそれなりのものになっちゃいますけど、その代わりお値段も下がるので、石が割れた時の心とお財布のショックも小さくなりますよ。それはそれでOKでしょ?

「スフェーンのビーズだけあってもなぁー」ってことなら、相性や色合いの合う石と組み合わせて、ブレスレットに仕立てちゃうっていうのはどうです?

花言葉と同じように、宝石にも「石言葉」っていうのがあるんですけれど、スフェーンの石言葉は「永久不変」「成功」「純粋」だと言われています。

ま、歴史的に浅い石(スフェーンに関する最初の記述は1787年だけど、人気が出たのが1990年後半)なので、アメジスト(アメシスト:紫水晶)みたいに「ある日ギリシャの神の〇〇が…」みたいな言い伝えとかはまだ無いんですよ。だからある意味、スフェーンの石言葉は「言ったもん勝ち」なんですけどね。

個人的な意見を言わせてもらえるなら(だって言ったもん勝ちなんでしょ?)、「純粋」は無いね。複屈折(ダブルリフラクション)がウリのスフェーンが「純粋」というのはおかしい。どちらかというと「多方面からのアプローチによる成功」。石を通る1本の白色光が2色に分かれて、それぞれがさらに屈折と反射を繰り返すあの輝きは、ただ単にディスパーションが高いだけの石ではないスフェーンだからこそ出せる色。

それを考えればスフェーンのビーズに組み合わせるべき石は、おのずと決まってくるというものです。

まずは黒水晶。モリオンとか呼ばれてるアレですな。
あれは「ネガティブな感情をポジティブに変換する」ことに役立つんですが、それって「成功」には欠かせない要素だと思うんです。

それと「自分を信じる力を養う」「己の正義を貫く」という意味でサファイアも。
大丈夫、サファイアのビーズもちゃんと流通してるから! ただまぁ宝石質のサファイアをビーズに加工するお馬鹿さんはいないので、石のクォリティは…<以下略>

あとは「幸運」も欲しいよね。成功には運も必要だもんね。
翡翠(ひすい)とかラピスラズリとかターコイスとかどうでしょう? どれも幸運のお守りって言われていますし、色合い的にも合いそうでしょう?
そういう感じで「自分にとっての『成功』に必要なもの」を足してゆきながら組み合わせを考えるのも楽しいものですよ。是非お試しあれ!ヾ(´▽`)ノ

宝石を見つめることで、己の生きるべき道も見えてくる

最後に一言。
ダイヤモンドもスフェーンも、原石の状態だとそんなに光らないもんなんですよ。あれは研磨されて綺麗にカットされるから光るんです。しかし「研磨する」とは「削る」ということと同義です。原石を削り、磨き、カットするからこそ、あの七色の輝きをその石は得るんですよ。
 
人も同じだと思います。
我が身可愛さのあまり、可愛い我が身を一切削ることも磨くこともしなければ、結局その人はなんの輝きも得られないままでしょう。そこらへんの石ころと大差ない一生を送ることになるはず。
何物にも代えがたいほど大切な我が身を削り磨き上げるからこそ、人の心を魅了して止まない光がその人の魂に宿るのだとあたしは思いますね。
 
ははは、ちょっと説教臭くなっちゃいましたね、失敬失敬。

今回は専門用語も多くて、読むのに疲れちゃった方もいらっしゃったことでしょう。
次回はもう少し気楽に読んで頂ける内容を心掛けるようにいたしますね。

それではまた!


1980年代より占術、呪術に興味をもち、独学にて勉強を始める。その後、3人の有名・無名な師匠につき、占術・呪術、およびそれに附随する基礎知識、語学、歴史学、民族学、脳科学などを広く学ぶ。紫乃女さんの紹介ページは→こちら

【紫乃女さんの最近ハマっているものをご紹介します!】

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。