R-18指定(?)のアバンチュールな薔薇色の石は、デリケートで傷つきやすかった

[ 意外に知らない宝石の裏話 ~パワーストーン店20年監修者が教える ]

ここんとこ小難しい話が続きましたので、もっと単純で分かりやすく、しかもきれいな石の話でもいたしましょう。そうだなぁ、「ロードクロサイト」とかどうです?

身近なものに置き換えれば、成分は理解しやすくなる

ロードクロサイト。和名「菱マンガン鉱(りょうまんがんこう)」。
この石の化学組成(その物質を構成する成分を表した式のこと)は超簡単ですよ! MnCO3、要するにマンガン(Mn)と炭酸(CO3)が一緒になって出来上がったのが、このロードクロサイトなんです。
ちなみに皆さんが普段飲んでいらっしゃる炭酸水はH2CO3(水素+炭酸)という式で表されます。その炭酸水の「水」の部分をマンガン(Mn)に置き換えればこの石になるんですよ。ね、簡単でしょ?ヾ(´▽`)ノ

「成分は簡単でも名前がややこしいわ!」とおっしゃる方々もいらっしゃるでしょうけれど、元がギリシャ語なんでしょうがないんですよ。
ギリシャ語で「薔薇(バラ)」のことを「rhodon(ロドン)」、「色」のことを「chroma(クローマ)」というんですが、古代ギリシャの方々がこの石を「薔薇色の石」って呼んでいたせいでこんな名前になっちゃったんですよ。

ま、ロードクロサイトだけではなく、鉱物の世界においては最初に名前をつけた奴の意志が尊重されちゃう傾向があるので仕方がありませんね。日本が誇る「スギライト(杉石)」だって杉博士が最初に調査・採取した石だからあの名前なんですし、ここは古代ギリシャの方々に免じて大目に見ることにしようじゃありませんか。

宝石は産地が大事である理由が垣間見える事例

そうそう。この石のことを「インカローズ」と呼ぶ方もいらっしゃいますが、実は「インカローズ」って呼び名は全てのロードクロサイトに対して使用していい別称ではないんです。
あれは南アメリカ、通常はアルゼンチンから産出されたロードクロサイトに対してのみ適用される「流通名」であって、ロードクロサイトの別の名前が「インカローズ」ってわけじゃないんですよ。間違えないようにしてくださいね。

じゃあ、なんでアルゼンチンで採れるロードクロサイトを「インカローズ」って呼んだかと申しますと、昔々、南アメリカのペルー辺りに、「インカ帝国」っていう国が栄えたことがあったんですよ。13世紀から15世紀くらいの間でしょうかねぇ。
そのインカ帝国の人々、ケチュア族という民族なんですが、この人たちが掘っていた鉱山で、タイトル画像のような「層状になったロードクロサイト」が発見されたので、その美しい石のことを「インカの薔薇(インカローズ)」って呼ぶようになったんです。

※層状になったアルゼンチン産ロードクロサイト:別名「インカローズ」。アルゼンチンの「国石(その国を代表する石のこと)」であり、アメリカのコロラド州の「州石」でもある

なのでまぁ、厳密に言えば「南アメリカで産出していない」&「層状ではないロードクロサイト」はインカローズと呼ぶべきではないってことになっちゃうんですけど、そこまで厳しくしなくてもいいかなーと個人的には思います。
何より「インカローズ」って名前のほうが「ロードクロサイト」より断然覚えやすいもんね!

インカローズじゃないロードクロサイトって、どんなもの?

じゃあちょっと「層状ではないロードクロサイト」が、どんなものなのかを示す写真をお見せしましょうかね。

きれいでしょ? イチゴゼリーみたいで、なんとなく美味しそうだよねー。

この赤い部分がロードクロサイト。黒いゴツゴツした母岩は「テトラヒドライト:安四面銅鉱(あんしめんどうこう)」って呼ばれる石です。

こういう「縞(しま)がなくて赤味が強い」ロードクロサイトは美しいのでルース(裸石:その石だけの状態)に加工されることもありますが、透明度が高いものはあまりお目にかかれません。
稀にお目にかかれてもお値段はなかなかお高いものであることが多いですね。でもオパールなんかに比べたら、全然安いけどさ!

※透明度はいまいちだけど26カラット。でかい! お値段は9万円弱(現地価格)

「指輪にしたいわ♪」。いえいえ、それが非常に困難な事情がありまして…

「少々お値段が高くても、こんなきれいな石ならぜひ指輪にしたいわ!」と目を輝かせる女性の方もいらっしゃるでしょうけれど、そんなあなたにアタクシ・紫乃女から残念なお知らせがございます。

この石は「マンガンの炭酸割り」(ひどい表現だ!)だって言ったでしょ? 硬いわけがないじゃないですか。
前回の「スフェーン」もモース硬度が5から5.5、つまりダイヤモンドの半分程度の硬さしかないって言いましたけど、ロードクロサイトはそれよりもさらに下、なんと3.5から4程度なのです。つまり、傷つきやすい石だってことなんですよねぇ。

しかもロードクロサイトの成分である「マンガン」は酸化しやすいという性質を持っていますので、入手した時にはきれいな結晶でも、時間の経過とともにだんだんと表面が黒ずんでゆくことがあるんです。
たまにスピリチュアル系の方で「石は流水で浄化しなくちゃ♪」って主義の方がいらっしゃるんですけど、酸化しやすい石を水に漬けたりしたら表面に褐色の皮膜が形成されちゃいますよ? “浄”化のつもりが“酸”化だなんて一文字違いで大違い! うわははははは!ヾ(´▽`)ノ
 
いや、笑っている場合じゃないな…。
ついでに言いますと、太陽光(紫外線)で退色(色があせること)もしますので、あまり日に当てるとまずい石でもあります。これもたまにスピリチュアル系の方で「石は太陽の光で浄化しないと♪」って主義の方がいらっしゃるんですけど<以下略。さっきと同じオチなので
 
さらに言いますと、この石を使ったアクセサリーを超音波洗浄機にかけないほうがいいですよ。理由は簡単。もろいからです。モース硬度「10」のダイヤモンドが超音波洗浄に耐えるからって鉱物最高峰の硬さを誇る石と一緒にしないでやって下さい。

パワーストーンとして愛用したい方に、一つ忠告しておきます

そういえば昔、あたしの親父が、「女性と機械はデリケートに扱え。どちらも壊れやすく、壊れたら元の状態に戻すのが面倒だからだ」とよく言っていたものですが、あの親父にしては名言だと思いますね。皆さんも女性と機械とモース硬度の低い石の取り扱いはデリケートにお願いしますよ(´・_・`)b
 
ま、そんなわけで、取り扱いが少々難しいロードクロサイトですが、そこまでびっくりするほど高価なわけでもない(縞があるやつはわりと安価)ですし、ビーズ品も結構流通しておりますので、これを機にパワーストーンと呼ばれるものに手を出してみようかとお考えの方には気軽にお勧めしたい石でもありま…あ、いや、ええと、うんまぁ、「大人」な方々には気軽に…気軽でいいのかな、まぁ適度に気軽にお勧めしたい石でもあります。
 
なんで急に言葉を濁(にご)しているかと申しますと、ロードクロサイトってね、恋愛運上昇に役立つ石だって言われているから。
いいことだとは思うんですけど、その「恋愛」っていうのがね、「清いお付き合い」の範疇(はんちゅう)を超えた「大人な関係」のほうにまで踏み込んだ「恋愛」なんですよねぇ。
しまった、この石を題材に選ぶんじゃなかったな。未成年の読者さんがいらっしゃったら、ここで回れ右して下さいね!
 
「大人なので大丈夫です!」という方々向けにさらに説明いたしますと、相性がいいのは同じく恋愛運上昇に役立つと言われている「ローズクォーツ(紅水晶)」です。こいつも太陽光で退色しやすいので気をつけてくださいね。

※左側が縞のあるロードクロサイト。右側が薔薇型にカットされたローズクォーツ

色合いもロードクロサイトとばっちり合うので、可愛いブレスレットになると思いますよ。

組み合わせにぴったりな「アメジスト」で冷静さをプラスできる

「恋愛運が上昇するのはいいけど、変なのに引っかからないようにもしてほしい」という贅沢な悩みをお持ちの方には、ちょっとだけアメジスト(アメシスト:紫水晶)も入れてみるといいかもしれませんね。
アメジストは「狂気を諫める(いさめる:改めるよう忠告すること)石」と言われているので、ホレタハレタで舞い上がったあなたのHOTな脳味噌に、冷静な判断力を戻してくれると思います。やっぱり石も人間も上質なのを選ばないとね!ヾ(´▽`)ノ

※紫色が美しいアメジスト

ロードクロサイトの「恋愛運上昇」は、現在お相手がいらっしゃる方にもこれから広く募集なさる方にも効果がございますので、大人な皆さんは是非お試し下さいね!

そんなわけで今回は、小難しい専門用語を出来るだけ使わないようにしてきれいな石をご紹介してみました。いかがでしたか?
でも「モース硬度」「化学組成」「へき開性」などの用語は鉱物を説明するうえで避けて通れない道ですので、ゆっくりでいいですから慣れていってくださるとうれしいです。

それではまた!


1980年代より占術、呪術に興味をもち、独学にて勉強を始める。その後、3人の有名・無名な師匠につき、占術・呪術、およびそれに附随する基礎知識、語学、歴史学、民族学、脳科学などを広く学ぶ。紫乃女さんの紹介ページは→こちら

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