サファイアは青色だけにあらず。そして、偽物のバリエーションも非常に多い…。

[ 意外に知らない宝石の裏話 ~パワーストーン店20年監修者が教える ]

ダイヤモンドの次の硬さを誇る

今回は9月の誕生石である「サファイア」のお話をいたしましょう。いやー、残暑厳しい盛りに、涼やかな青い石の話をするのはなかなかオツなものですな!
 
サファイアの和名は「青玉(せいぎょく)」または「蒼玉(そうぎょく)」。どっちに転んでも「青い宝石」ってことです。
「サファイア」という名前はラテン語の「sapphirus(サッフィールス:「青色」って意味)」が由来なんですが、そのラテン語の”sapphirus”は古代ギリシャ語の” σάπφειρος” (サッフィーロス:「貴重な宝石」って意味)が語源となっているんです。
ま、要するに歴史の古い石ってことですな。モース硬度はなんと9! モース硬度最高峰「10」を誇るダイヤモンドの次に硬い石なんですよ。

ピンク、黄色、緑、紫、透明。これ全部サファイアです。

青い石とは申しましたが、実はサファイアには様々なカラーバリエーションがございます。
ルビーとサファイアは「コランダム」という鉱物に属する石なのですが、このコランダムの化学組成はAl2O3、要するに酸素とアルミニウムがくっついた石です。
ですので本来なら無色透明のはずなんですが、そこにクロムや鉄、チタンなどが混ざりこむことによって、ルビーのように赤い石になったり、サファイアのように青い石になったりするわけです。

ちょっとサファイアからは話がそれますが、コランダムの中で「血のように赤いもの」を「ルビー」と呼びます。ルビーはコランダムの構成元素であるアルミニウムの一部がクロムに置き換えられることによって赤く発色するのですが、その「赤く発色している石」全てが「ルビー」というわけではありません。
ルビーとは「血のように赤い色をしたコランダム」にのみ冠される名称です。(“Ruby is a blood-red colored gem variety of the mineral Corundum.”)
それ以外の赤系の色、例えばピンクがかった赤色のコランダムは「ピンクサファイア」と呼ばれるべきなんです。最近ここらへんの線引きが宝石業界でもあいまいになってきておりますが、一応定義としてはそうなっているんだということを皆さんも頭に入れておいてくださいね。

ま、今回はルビーのお話ではありませんので、とっとと話をサファイアに戻しましょう。

つまりサファイアとは、コランダムに属する石の中で、「血のように赤いもの」以外の全ての色に対する名称なんです。
おかげさんで、無色透明・ピンク色・朱色・黄色・黄緑色・緑色・青色・紺色・青紫色・紫色と、前回のフローライト顔負けの凄まじいカラーバリエーションとなっております。
一番人気なのはもちろん濃い青色ですが、それ以外の色もちょっとお見せしましょうかね。

(パープルサファイア)
(グリーンサファイア)
(ライトグリーンサファイア)
(イエローサファイア)
(オレンジサファイア)
(ライトピンクサファイア:パパラチアサファイアと呼ばれることもある。「パパラチア」とはスリランカの公用語のひとつであるシンハラ語で「蓮の花」って意味。)
(ピンキッシュオレンジサファイア:パパラチアサファイアと呼ばれることもある)

スター効果(光を当てると六条の光を放つこと)のあるサファイアは「スターサファイア」と呼ばれます。超きれいだけどお値段も超お高いですよ!

(スターサファイア:特定の方向からカットしないとスターが綺麗に出ない)

養殖ものなら高くないから安心して!

サファイアの有名産地はタイ、ミャンマー、スリランカ、カシミール地方(中国・インド・パキスタンの三国が分割統治中)などです。マダガスカルやオーストラリア、中国でも出ますよ。
カシミール産のコーンフラワーブルーサファイア(矢車菊のような透明感のある青色)と、ミャンマー産のロイヤルブルーサファイア(イギリス王室のオフィシャルカラーである鮮やかな濃い青色)は特に高額で取引されます。スター効果なんかついてた日にゃ、ドえらいお値段になりますよ(´・_・`)b

「じゃあ濃い青色のサファイアなんて庶民には夢のまた夢なのね!」とお嘆きの声がここまで聞こえてきそうですが、まぁ落ち着いて! 上記はあくまでも「天然サファイア」の場合の話です。
サファイア…というよりコランダムは、人工的に製造が可能ですので、そういうものならお手頃価格でお求め頂けますよ。宝石も魚も一緒です。天然モノはお高いけれど、養殖モノなら安価でしょ?

実は、合成(人造)コランダムは、用途が宝石限定ってわけじゃないんです。高級時計なんかの風防ガラスや半導体の基板(絶縁性と熱伝導率が高いから)、身近なところだとiPhoneのカメラのレンズなんかにも使われているんですよ。なんとあの重力波望遠鏡「KAGURA」の鏡も合成サファイアです。

そういう工業用途に使われるコランダムは無色透明ですが、そこに鉄やチタンなどの添加物を加えて青いコランダムを作れば、宝飾用のサファイアの出来上がりです。
ただしその青い色は内部まで浸透しないことが多いので、表面を再研磨するとまた無色透明に戻ってしまいます。
こういう「外側だけ青い」サファイアは非常にお求めやすい価格で販売されているんですよ。ぱっと見じゃわかんないですしね。

チタンではなくベリリウム(Be)という元素を添加物として加えたものは、比較的内部までその色が浸透します。
ベリリウムを加えたコランダムは、明るいピンク色~明るいオレンジ色、金色、黄色になりますので、パパラチアサファイアとしてお手頃価格で販売されていますね。
つまり、「非加熱」と明記していない安価なパパラチアサファイアは、ベリリウム拡散加熱処理が施されていると考えてまず間違いないでしょう。

それ以外にも発色の悪い天然サファイアに、単純加熱処理(添加物無し)を施して青い色味を引き出すこともあります。加熱処理で得られた色味は退色することが無いので、そういう意味では安心ですね。

また、よく行われる処理としましては「ガラス充填処理」というのがあります。サファイアは高価な宝石なので、原石の段階で傷や穴があっても、そこを削り落とさずに大きくカットしておいて、後からその傷や穴にガラス樹脂などを充填して目立たなくするという処理です。
この処理が施されているサファイアはお値段もかなり下がります。お手頃価格のサファイアには、この処理が施されているものだと考えておいたほうがいいでしょう。
ただ、ルース(指輪などの台にセットされていない状態の石)を入手したいならともかく、サファイアのアクセサリーが欲しいだけなら、そういう石でも十分美しいと思いますよ。装飾品なんだもの、見た目が美しければそれで事足りるでしょう?

天然要素ゼロの「なんちゃってサファイア」も存在する…

ま、サファイアを国内でお求めの場合は上記の注意事項程度で十分なんですが、海外でお求めの場合にはもうひとつ気をつけて頂きたいことがございます。信じられない話かもしれませんが、海外ではとんでもない「サファイアもどき」が実際に流通しているんですよ。

その「サファイアもどき」の正式名称は「ダブレットサファイア(synthetic sapphire doublet)」。要するに、色味がいまいちな天然サファイアの上に、美しい合成サファイアの薄いスライスを貼り合わせて、厚みのある大きなサファイアのように見せかけた石のことです。
逆のバージョン(下の部分は合成サファイア+上の部分は天然サファイアの薄いスライス)もあります。
酷いものになると、色付きガラスの上に合成サファイアのスライスを貼り付けていることもあるんですよ! 天然サファイアの要素が皆無です…。
「そんなサファイアもどきを掴まされそうになったら、どうすればいいの!」というお声がここまで聞こえてきそうですが、まぁ落ち着いて! とても簡単な見分け方がございます。
 
その石を真横から見て下さい(´・_・`)b 接着剤でくっつけているだけなので、真横から見れば接着面が一目瞭然なんです。

でも、真横からその石を見ることができないように台などにセットされている場合は、店先でとっさに見極めるのは難しいと思いますので、海外では安価なサファイアには容易に手を出さないようお気をつけ下さいませ。自衛も大事ですよ?

ま、天然サファイアと合成サファイアの見分け方とかもあるんですけれど、10倍ルーペを持参して宝石店へ赴く方ばかりじゃないと思いますので、超簡単で一番確実な方法をひとつお教えしておこうと思います。

その石の鑑定書を見せてもらいましょう(´・_・`) そこに「天然コランダム」と書いてあったらそれは天然のサファイアです。これが一番確実で誰にでも出来る「見分け方」ですよ。覚えておいて下さいね。

地球の土台、神の樹に使われたと言い伝えられている

…ちょっと夢の無い話ばかりが続きましたね。ここら辺で何かサファイアのロマン溢れるエピソードでもご紹介しておかねば(´・_・`)

サファイアが歴史に最初に登場するのは、なんと紀元前800年頃です。その頃の古代ペルシャでは、「地球は平面だ」と考えられていたのですが、その地球を支える大きな台座はサファイアで出来ており、その色の反射で空が青く見えるのだと言われておりました。
この考えは古代ギリシャの人々にも受け継がれ、サファイアのあの濃い青色は「日没から数分後の澄んだ空の色(“the blue of a clear sky just minutes after sundown”)」と称されてきました。

また、サファイアは「霊界と繋がる力を与える」とも信じられており、アポローン神(ギリシャ神話の音楽の神様)の巫女たちは、彼の神託(神のお告げ)を得るためにこの石を身に着けていたそうです。

他の地域だと、ヒンズー教に出て来る「カルパヴリグシャ(Kalpavriksha)」という「あらゆる願いを叶える神の樹」の根っこは、サファイアで出来ているんだそうですよ。ちなみにこの樹の葉は珊瑚で、真珠の花が咲くんですって。ゴージャスな樹ですよねぇ!

また古代エジプトでは、サファイアには解毒作用があり、特に目の病気に対して効果があると信じられていたそうです。ファラオのミイラのマスクの目の部分が青く塗られているのは、そのせいでしょう。まぁあの顔料自体は、ラピスラズリの粉ですけどね。

ハリボテではなく、心底納得のいく「誠実さ」を身に着けましょう

話をまとめますと、大昔からサファイアは、高貴・真実・誠実さのシンボルとされていて、魔を遠ざけ邪を祓う力があると考えられてきました。
歴史的にも、聖職者や王侯貴族に愛され続けてきた「神の祝福」を象徴する石です。
一説ではキリスト教の神が預言者モーセに与えた十戒は、サファイアの石板に彫られていたそうですよ。
(※十戒そのものがフィクションなので補足するには及ばないとは思いますが一応。いくら「青く美しい石板」だったとはいえ、サファイアはやりすぎでしょう。神はモース硬度9の石板に文字を彫れるかもしれませんが、モーセ氏は後にそれを怒りのあまり2つに叩き割っています。そんなことが人間の力で出来るとは思えません。せいぜいラピスラズリでしょうね。)

ま、そんなわけで、サファイアの宝石言葉も「誠実」「真実」「慈愛」「一途な想い」など、上記の逸話にちなんだものになっています。婚約指輪にサファイアがよく使われるのも頷ける話ですね。

もしこれらの言葉にあたしが何か付け加えるのなら、それは「視点」でしょう。誰の目から見た「誠実さ」なのか、誰の目から見た「真実」なのか、ということです。
誰かに「あの人は誠実な人だ」「あの人は正直な人だ」「あの人は慈愛に富んだ人だ」と思われるためにサファイアを身に着けたいのなら、それはお勧めできませんね。

あなたはあなたに「誠実」であるべきだ。
あなたはあなたに「正直」であるべきだ。
誰かに愛されることを望む前に、まずはあなたがあなたに慈愛の心で接するべきだ。

誰かの目を意識しての「誠実さ」なんて、「ダブレットサファイア」のようなハリボテに過ぎませんよ。
あなたがあなたに対して堂々と胸を張れるのなら、そんなあなたにこそサファイアは「神の祝福」を与えてくれると思いますよヾ(´▽`)ノ

おっと、話が長くなってしまいましたね。失敬失敬。
名残り惜しいですが、サファイアのお話はここらへんでおしまいにいたしましょう。

それではまた!


1980年代より占術、呪術に興味をもち、独学にて勉強を始める。その後、3人の有名・無名な師匠につき、占術・呪術、およびそれに附随する基礎知識、語学、歴史学、民族学、脳科学などを広く学ぶ。紫乃女さんの紹介ページは→こちら

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