正式名称じゃないの?とイラッとしないで! ストレス解消にぴったりなんだから

[ 意外に知らない宝石の裏話 ~パワーストーン店20年監修者が教える ]

灰曹長石の一部の俗称である

今回は周りからリクエスト頂いておりました「サンストーン」についてお話することにいたしましょう。

サンストーンは和名「日長石(にっちょうせき)」、モース硬度は6から6.5です。

いきなりですが、「サンストーン」とは流通名にすぎません。ここはちょっと話がややこしいので順にご説明いたします。

サンストーン(日長石)は「長石(フェルドスパー)」という鉱物グループに属する石。その長石グループは「アルカリ長石(アルカリフェルドスパー)グループ」と「斜長石(しゃちょうせき:プラジオクレース)グループ」の2つの鉱石群に大きく分類されます。

その「斜長石グループ」はさらに6種の鉱物に分類されるのですが、そのうちの1種が「灰曹長石(かいそうちょうせき:オリゴクレース)」。そしてサンストーンとはその灰曹長石の中でも宝石級に高い品質を持つ石を指す名前なんです。

つまり「サンストーン」とは、あくまでも灰曹長石の宝石質の物に対する流通名であって正式な鉱物名ではありません。ま、分かりやすく言うなら「俗名」ですな。

※さらにややこしい話をしますと、現在では「灰曹長石(オリゴクレース)」ではなく、「曹長石(そうちょうせき:アルバイト)」を鉱物名として採用することが多いようです。長石グループは本当に種類が多いので、うかつに手を出すと頭がこんがらがること間違いなしですよ。分類分けを変更するならする前に、あたしに一言あってもいいと思うんだけどな!o(><o)(o><)o

色数は少ないくせに、名前の種類はやたらある…

日本語だけではなく、英語でもサンストーンはややこしいことになっています。宝石屋さんなら「サンストーン(Sunstone)」で通用しますが、鉱物となると「アベンチュリンフェルドスパー(Aventurine Feldspar)」とか「アベンチュリンオーソクレース(Aventurine Orthoclase)」と表現したほうが、話が早いこともあるほどです。

鉱物名と流通名の乖離(かいり:かけ離れるってこと)が激しい例として「タンザナイト(鉱物名:ブルーゾイサイト)」がありますが、サンストーンはその代表格ともいえるでしょう。

日本国内でこの石をお求めになる場合は「サンストーン」と言えばまず大丈夫ですが、海外で購入される際は上記の言い回しの他に「ヘリオライト(heliolite):ギリシャ語のヘリオス(太陽)が語源」という言葉も覚えておかれるといいでしょうね。

(『ヘリオライト』と記載されているサンストーン)

つまり、サンストーンとはカラーバリエーションは少ないくせにネームバリエーションがやたらと多い、ある意味「石屋泣かせ」な石だということです。やれやれ(´・_・`)

オレゴン産は一目置かれる存在

そんなこんなのサンストーンですが、さっきも言いましたとおり、カラーバリエーションは少なめです。赤色、オレンジ色、黄色(金色)、緑色、無色透明くらいですかね。

有名な産地はノルウェー、スウェーデン、オーストラリア、アメリカのオレゴン州など。中でもオレゴン州のサンストーンはその独特の色合いから「オレゴンサンストーン」と呼ばれ、別格の扱いを受けています。お値段も別格ですよ (´・_・`)

(オレゴン州産のサンストーン。サンストーンはオレゴン州の「州の石」でもある)

ま、サンストーンはオレゴン州産でなければそこまでお高いものではありません。ビーズにも加工される石ですしね。しかしその美しい独特の色合いは、多くの人を魅了して止みません。名前はややこしいけれど本当に綺麗な石なんですよ!

(サンストーンの原石)

(ルースに加工されたサンストーン)
(ビーズに加工されたサンストーン)

石の中でキラキラと光っているのはヘマタイト(赤鉄鉱:せきてっこう)です。ヘマタイトだけではなく銅やゲーサイト(針鉄鉱:しんてっこう)、パイロフィライト(葉ろう石)などが入ることもあります。

要するにいろんな鉱物の微細結晶が入り込んでいることが多い石なのですが、それがサンストーンの「欠けやすさ」の元にもなっています。ビーズ品を扱う際には特にご注意ください。

赤いものには要注意!

さて、この連載で恒例の「偽物はあるのかないのか」に関するお話なんですけれど、あるにはあるんです。サンストーン…というか斜長石に「銅拡散処理(石に銅の微細な結晶を人工的に浸透させること)」を施して、ルビーのような赤い見た目に加工したものが高額で取引されたという実例がすでに何件も報告されています。

ただ、その加工品は販売時にはサンスト―ンより売値が高くなることが多い「アンデシン(斜長石の仲間)」という別の石の名前をつけられていることがほとんどですので、あくまでも「サンストーン」をお求めならば「偽物を掴まされる心配はしなくていい」のかもしれませんね。

まぁ、モンゴル産またはコンゴ産と称される真っ赤なサンストーン(実は中国による加工処理品)を勧められた際にはご注意くださいませ。
なお、オレゴン州産なら赤色~濃い朱色系のサンストーンは珍しくはありません。ただしオレゴン州産はお値段も高めですので、購入前に鑑別書を見せてもらうようになさってください。売り手の言う「No Treatment(未処理)」を信じないこと!

太陽の位置を知るための石だからって、「サンストーン」にしちゃダメでしょ!?

サンストーンにまつわる伝承はいくつかございますが、その中で最も有名なのは『バイキングのサンストーン』というお話。「分厚い雪雲が空全体を覆うような日に、船で長距離を移動するバイキング達が太陽の位置を知るための一種の航行機器として『サンストーン』を用いた」という内容です。
実は当時バイキング達が用いた「サンストーン」とはアイスランドで採れる「方解石(ほうかいせき:カルサイト)」のことで、今回の主題である斜長石グループのサンストーンではないんです。
太陽の位置を知るための石なので「サンストーン」と呼ばれていただけなんですって。紛らわしいったらありゃしない!

その代わりと言ってはなんですが、ネイティブアメリカンの伝承には、「矢で負傷した偉大なる戦士の血がサンストーンに滴(したた)り、彼の魂をその石の奥深くに宿らせた」というものがございます。
戦士の血によりサンストーンは赤く色づき、神聖なる力を得たそうです。その石を持つ戦士には、過去の偉大なる戦士の勇気と加護が与えられるということで、戦う男達のお守りとして大切に扱われてきました。

インドには「サンストーンは邪を払い、魔を跳ねのける聖なる石である」という言い伝えが残っています。また、古代エジプトや古代ギリシャでは、この石はその名の通り太陽神に関係する石だと考えられており、所有者の肉体と精神を活性化し、より良い状態へと改善させるのだと信じられていたそうです。

心がモヤっとしたら、ぜひ手に取ってみて

そんなわけで、サンストーンの石言葉も「勝利を呼ぶ石」「持ち主をポジティブにする石」「自己肯定感を与えてくれる石」という、前向きな感じのやつが多いですね。

そこにあたしなりの考えを付け加えるならば、太陽はその中心核において熱核融合反応を起こすことにより太陽外部へ光と熱を放出する恒星ですので、その名を冠するサンストーンもまた所有者の感情などを外部へ発しやすくする石なんじゃないでしょうか。
鬱憤(うっぷん)が溜まりやすい方のストレス発散や、引っ込み思案の方が自分の考えを述べたり行動を起こしたりするのにも役立ちそうですね。

そういう場合の石の組み合わせとしましては、サンストーンと同じく「中のモノを外へと発散させる・放出する」「エネルギーの方向性を内から外へと変換する」ことに役立つ「カーネリアン(赤メノウ)」や「シトリン(黄水晶)」、ささくれだった気持ちを和らげることに役立つ「アマゾナイト(サンストーンと同じ長石の仲間)」や「ブルーレースアゲート(メノウの一種)」などがお勧めです。

「最近どうもストレスが溜まりがちで、うまく発散できない」とか「近頃イライラすることが多くて気分が沈みがち」という方々は、ぜひこの組み合わせをお試し下さい。色合いもカワイイですしね!ヾ(´▽`)ノ

(ブレスレット中央より、シトリン・ペリドット・カーネリアン・サンストーン・ブルーレースアゲート・サーペンティン・アマゾナイト・サーペンティン・ブルーレースアゲート・アラゴナイト・カーネリアン・ペリドット・シトリン)

ではサンストーンのお話はこれくらいにいたしましょう。
それではまた!


1980年代より占術、呪術に興味をもち、独学にて勉強を始める。その後、3人の有名・無名な師匠につき、占術・呪術、およびそれに附随する基礎知識、語学、歴史学、民族学、脳科学などを広く学ぶ。紫乃女さんの紹介ページは→こちら

【紫乃女さんの最近ハマっているものをご紹介します!】

関連記事一覧

  1. 卍dancen卍

    リクエストにお応え頂きありがとうございます!
    (それ以前にいつも叡智をありがとうございます)
    元々大好きな石ですがコラムを拝読して一層愛着が湧きました。
    次回の更新も楽しみにお待ちしております。