
トルコで採掘されないのに「トルコ石」。色が変わるだけで恐れられる存在
[ 意外に知らない宝石の裏話 ~パワーストーン店20年監修者が教える ]
ティファニーとの意外な関係性
今回は12月の誕生石についてお話いたしましょう。
12月の誕生石は4つほどございます。まず『タンザナイト』『ターコイズ』『ラピスラズリ』、そして『ジルコン』ですね。
タンザナイトは以前、別の記事で取り上げたことがございますので、今回は『ターコイズ』のお話をいたしましょうか。
ターコイズ 和名:トルコ石。
「トルコの石」という名前がついているくせに、実はこの石、トルコ共和国では産出しません。
17世紀頃、この石がオスマン帝国(14世紀から20世紀初頭にかけて南東ヨーロッパ・西アジア・北アフリカの大部分を支配した帝国のこと。「オスマントルコ」とか「オスマン朝トルコ帝国」と呼ばれていた)を経由して十字軍遠征でわちゃわちゃしていたヨーロッパに持ち込まれたため、「la pierre turquoise(フランス語で“トルコの石”)」と呼ばれたことが語源だと言われております。
要するに流通における経由地の名前が、産地の名前と間違われちゃったということですな。
ターコイズのモース硬度は大体6弱。ガラスよりわずかに硬い程度です。熱にも日光にも弱いデリケートな石なので、真夏の車内に放置したりしないで下さいね。物理的な衝撃にも弱いので、取り扱いに関してはそれなりにご注意ください。
ターコイズの色は、不透明な水色~緑色です。コマツグミ(American Robin)という鳥の卵の色が最も美しいターコイズ・ブルーだとされていて、ターコイズの色の品質を示すひとつの指針として使われています。


※ちなみにこのツグミさんの卵の色こそが、宝飾メーカーのティファニーさんが1998年に商標登録している「ティファニー・ブルー(別名:ロビンズ・エッグ・ブルー)」の色なんです。逆に言うなら、ティファニー・ブルーとはターコイズ・ブルーのことですね。
話をまとめると、この、コマツグミさんの卵みたいな色をしたターコイズが、最高級品質のターコイズってことなんです。
アルミか鉄かで、色が変わる。アメリカ国内だけでも産地で名前がバラバラに
ターコイズの化学組成はCuAl6(PO4)4(OH)8・4H2O…あ、逃げなくて大丈夫ですよ! 今回はトパーズの回みたいにそこまで化学組成どっぷりの話じゃありませんから!
実はターコイズの青色は、含まれている銅(Cu)による発色です。
で、その銅の次のアルミニウム(Al)の一部が長い年月の間に鉄(Fe)に置き換わることがある(専門用語で「置換:ちかん」といいます)のですけれども、この鉄の割合が大きくなればなるほど、ターコイズの色は緑色に近づきます。緑がかったターコイズもまた美しいものですよ!
ターコイズの色は産地によって様々です。一部ご紹介いたしましょう。




ね?いろんな色があるでしょう?
アメリカ産のものはその産地ごとに別名がついているのですが、それも他の石にはないユニークな特色ですね。
(あたしが知っているだけで40種類以上ありますからね、別名)
最も有名なのはコマツグミさんの卵にそっくりな色をした『スリーピング・ビューティ』でしょう。

なんでこんな名前がついているかっていうと、この石はアメリカ・アリゾナ州にある「スリーピング・ビューティ」鉱山から出るからです(´・_・`)

この鉱山からは、ターコイズにありがちな「網目模様」が少なく、均一で明るい青色の石が産出します。ターコイズの中では一番人気&最高額で取引されている石だと思いますね。
もちろんアメリカ以外でもターコイズは出ますよ。別名がつかないだけで!




このように、ターコイズの色はその産地によって様々です。いろんな表情のある石なんですよ!
宝石の価値は、値段で決まらない。では、何で決まるか…?
ぶっちゃけ、どのターコイズが一番『宝石として価値がある』かは決められません。現在ターコイズ市場で一番人気なのは「スリーピング・ビューティ」です。人気があるので取引価格も高額です。
だからといって、緑がかったターコイズや網目模様のあるターコイズが、そうじゃないターコイズに比べて『価値が低い』かと聞かれれば、あたしは決してそんなことは無いと即答するでしょう。
実際、「キャリコレイク」や「ランダーブルー」、「ローンマウンテン」「ナンバーエイト」などのターコイズは採掘量が少なかったり鉱山がもう閉山していたりするので、今後宝石としての価値は「スリーピング・ビューティ」よりも上がると思います。
ただそれは、あくまでも「売買時の価格」としての価値。第三者がその石を見た時の「価値」です。
真の石の価値とは所有者が決めるものだとあたしは思います。その人がその石を好きかどうか、それに尽きると思うんです。
たいして好きでもないくせに、その石の「取引価格が高額だから」というだけのつまらない理由で、第三者から見られた時に「あの人お金持ちなのね!」と思われたいからというだけのくだらない理由で、好きでもない高額な石を指に飾るというのは、10本しかない指の無駄遣いであるとあたしは思います。
あたくしの左手中指には、グリーンのパライバトルマリンが輝いています。何年も探してやっとたどり着いた大好きな石なんです。
けっして大ぶりな石ではありませんが、品のよいミントグリーンの中に金色のインクルージョンがちらちらと光っています。
あたしはこの石を見るたびに幸せな気持ちになるのです。誰がどう思おうとそんなことどうでもいいのです。
あたしがこの石を好きだから、あたくしの指に飾っているんです。石の価値とはそういうものなんじゃないでしょうか。

世界中で宗教の垣根を超えてあがめられていた
おっといけない、今はターコイズのお話でしたね!
ターコイズは大昔から人々に愛されてきた石です。有名どころだと古代エジプトとか古代アステカ(コロンブスさんがアメリカ大陸にやってくる以前、「メソアメリカ(メキシコ、中央アメリカ北西部とほぼ重なる地域)」の一時代を築いた国家)の人々は、この石を宝飾品としてだけではなく、宗教的な意味合いも込めて大切にしてきました。
古代アステカの方々はターコイズを火が具現化したものだと考えており、火の神シウテクトリ(Xiuhtecuhtli)のマスクをターコイズで飾り立てました。ちょっと見た目がグロいのですが驚かないで下さいね。

古代エジプトでは、ターコイズはハトホル女神(天空の女神:太陽神ラーの奥様)の石だと考えられており、ファラオの埋葬マスクを飾る石としてカーネリアンやラピスラズリなどと共に使用されました。

それ以外の国々でもターコイズは大人気でした。
たとえばペルシャ(今のイラン)では、モスク(イスラム教の礼拝堂のこと)などの宗教上重要とされる建物は、外側も内側もターコイズで美しく装飾を施されました。とっても綺麗なんですよ!

このように、ターコイズは昔から様々な国で、「聖なる石」「幸運をもたらす石」として人々に愛されてきたのです。この空色の宝石は着用者を「不自然な死」から守るお守りとして信じられてきました。
この石が色を変えた時、着用者の運命を変えるような、何か大きな不幸が迫ってきているのではないかと恐れられていたほどです。
※現代人である紫乃女からの注釈:ターコイズは多孔質(表面に目に見えない小さな穴がたくさんあいていること)の石なので、汗や皮脂などによって変質しその色を変えることがよくあります。今時流通しているターコイズはこの変質を防ぐために樹脂によるコーティング処理が施されていることがほとんどですね。未コーティングのターコイズの色が変わったからといって「何か大きな不幸が!」と恐れる必要はありません。それは単にあなたの扱いが雑なだけです。
この4条件を満たすことで最強になる。しかし難易度極めて高し
ま、不幸うんぬんはおいといて。
ターコイズがお守りになるというのは現代でも信じられていることですが、実はこの石、ある『4つの条件』をクリアすると、素晴らしい『幸運のお守り』になると言われているんですよ。
その『4つの条件』とは下記の通りです。
1.他人からターコイズをもらうこと。自分で手に入れてはダメ。
2.他人から譲り受けたターコイズに「代価」を支払ってはダメ。
それが代金であろうと、他のモノであろうと、お礼をしてはダメ。
3.純粋にあなたのことを想っている人から譲り受けなければダメ。
4.自分から「譲ってくれ」とせがんではダメ。
この中で一番クリアが難しいのは3番目の条件です。
純粋にあなたのことを想って”その石をくれる人を見つけなければなりません。
「そんなの彼氏(彼女)にもらうからいいもーん」と、そこで呑気にしているあなた。
あなたはまだまだ修行が足りませんな(´・_・`)
彼氏があなたにその石をプレゼントしてくれたと仮定しましょう。
なぜプレゼントしてくれたのでしょう?
何か見返りを期待してのことではないでしょうか。
以前、あなたのご機嫌を損ねたことがあるから、そのお詫びとして贈ってくれたのであれば、それはダメです。結果的に石をあなたに贈ることによって、自分の免罪を期待しているわけですから、「純粋にあなたのことを想って」贈ってくれたことにはなりません。自分のためにしただけです。
そもそも男性が女性に何か装飾品を贈る場合、その男性はその後の「見返り」を期待している可能性が非常に高いです。
「これをプレゼントするからさぁ、他の男ではなく俺と遊んでくれよ。俺のこと気に入ってくれよ。ついでに今度一晩一緒に過ごしてくれよ…」
そんな想いがちらっとでもその男性の心をかすめていたのならば、その石は「純粋にあなたのことを想って」あなたに贈られた石ではありません。その男性がオイシイ思いをしたいから、つまり自分の今後のためにあなたにくれただけのことです。
ま、いわば一種の「投資」ですな。これじゃダメです(´・_・`)
じゃあお友達とターコイズをお互いが買ってそれを交換するってのはどうでしょう。
これは上記の条件に全て反します。
まず、もらうターコイズの代償としてこっちもターコイズを渡すわけですから、自分でその石の代金を支払ったも同然です。自分が買ったようなものです。
おまけにお友達もあなたも、「自分が」ターコイズが欲しいからお互い取替えっこしただけで、それは相手を想っての行動ではありません。
しかも取替えっこということは、どちらかが取替えっこしようよと話を持ちかけたわけですから、相手にせがんだも同然です。
このケースではぜんぜんダメですね(´・_・`)
ではお父さんやお母さん、お兄さんやお姉さんにもらうというのはどうでしょう。
これは場合によりOKです。あなたが「買ってよー」とせがんだのでなければね。
または「今度○○するからさー」などと交換条件を出したのでもなければ。
純粋にあなたが可愛くて、そしてそんなあなたがターコイズを欲しがっていたからというだけの理由で、あなたへと贈られたターコイズは最高のお守りになるでしょう。
だってあなたに石を譲ったからといって、親は何の見返りをあなたに期待するでしょうか。ターコイズが幸せを呼ぶ石だと知り、「我が子に幸せが訪れますように」と親が心から願って子に贈ったターコイズには『無償の愛』が溢れています。
親でなくても構いません。
あなたの愛する人が、またはあなたを愛している人が、この石の効用を知っていて、そして純粋にあなたの幸せだけを願って贈ってくれた石なら、それは最高のお守りになるでしょう。
でもね、なかなかそんな人はいませんよ。
一切の見返りの感情を持たず、つまり「その石を無償で君にあげる僕っていい奴だろ?」という自己讃美の気持ちすら持たずに(持っていた場合は条件違反です)、ただただ純粋にあなたのことを想って贈ってくれる人。
そんな人はそうそう見つかりません。
で。
もしも、親御さんやご家族の方以外でそんな人をあなたがもう見つけていたら…
あなたはすでに史上最高の「お守り」を手に入れていることになりますよ。
その人こそがあなたにとっての『幸せを運んできてくれるお守り』です。その人を大切になさって下さいね。どうかお幸せに!
そうそう。
ターコイズを愛するあなたにあたしからひとつプレゼントです。
古代エジプトで太陽神と同一視され、再生と復活の象徴となった『スカラベ』と、『生きよ・繁栄せよ・健やかであれ』という3つの祈りの文字を組み合わせた護符の画像をここに貼り付けておきますね。
よろしければお守り代わりにどうぞお使い下さいヾ(´▽`)ノ

おや、すっかり話が長くなってしまいましたね。失敬失敬。
ではターコイズのお話はここらへんでおしまいにいたしましょう。
それではまた!

1980年代より占術、呪術に興味をもち、独学にて勉強を始める。その後、3人の有名・無名な師匠につき、占術・呪術、およびそれに附随する基礎知識、語学、歴史学、民族学、脳科学などを広く学ぶ。紫乃女さんの紹介ページは→こちら
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