
アマゾンで産出されない『アマゾナイト』。退色せず頑丈で、ストレスもたまらない!
[ 意外に知らない宝石の裏話 ~パワーストーン店20年監修者が教える ]
要は、緑色~青色をしたマイクロクリンのこと
今回はリクエストを頂いた『アマゾナイト』のお話をいたしましょう。
アマゾナイト 和名:天河石(てんがせき)化学組成:KAlSi3O8 モース硬度は6から6.5です。
アマゾナイトは『サンストーン』の記事の時にちょこっとご紹介したことのある「長石(ちょうせき:フェルドスパー)」に属する鉱物です。
長石グループの分類は、隕石やガーネットよりややマシな程度のややこしさ(要するに結構ややこしい)なので、ここではできるだけ簡単にご説明いたしますね。
長石は「アルカリ長石:カリウムが含まれている」と「斜長石(しゃちょうせき):ナトリウムが含まれている」の2つに大きく分類されます。
その「アルカリ長石」は「正長石(せいちょうせき):オーソクレース」「玻璃長石(はりちょうせき):サニディン」「微斜長石(びしゃちょうせき):マイクロクリン」「曹微斜長石(そうびしゃちょうせき):アノーソクレース」の4つにさらに分類されます。
この4種の違いは、それぞれの鉱物が形成される時の温度の違いから生じているんですが、今回の『アマゾナイト』は「微斜長石(びしゃちょうせき):マイクロクリン」に分類される石なんですよ。
この「マイクロクリン」という単語は今後何度も出てきますので覚えておいてくださいね!
アマゾナイトは「微斜長石:マイクロクリン」の中の変種のひとつです。緑色~青色をしたマイクロクリンのことを『アマゾナイト』と呼ぶのだと言えばいいですかね。

なんでこんな名前になったかと申しますと、1847年にJohann Friedrich August Breithaupt(ヨハン・フリードリヒ・オーガスト・ブライトハウプト)というドイツの鉱物学者さんによって「アマゾン川流域でよく発見される石だから」という理由で「アマゾナイト(アマゾンストーン)」と名付けられました。
ただ、残念なことに、実はアマゾン盆地のあたりではアマゾナイトは出ないんです。多分別の地域の緑色の鉱物と混同しちゃったんでしょう。(アマゾン周辺でよく出る緑色の石はネフライトなのでそれと間違っちゃった可能性が高いですね。)
アマゾナイトがよく産出するのは、こないだの隕石の記事でご紹介したロシアのチェリャビンスク州ですね。あとは中国や南アフリカ、アメリカのコロラド州でしょうか。
中でもチェリャビンスク州のイルメンスキー(Ильменскиегоры)山脈はアマゾナイトの採れる場所としては一番有名ですので、もしもこの石を正しく命名し直すのだとしたら、アマゾナイトではなくイルメンスキーナイトということになりますね(´・_・`)
「ピンク・アマゾナイト」は『アマゾナイト』ではありません!
なぜアマゾナイトが緑色~青色をしているのかと申しますと、微量(最大で1.2%)の鉛(PbO:一酸化鉛)が含まれているからです。緑色の石は銅(Cu)やクロム(Cr)による発色であることが結構多いですが、アマゾナイトの緑発色は含まれる鉛と水のせいです。
2010年の研究では「鉛だけじゃなくて鉄(二価鉄)も関係しているんじゃない?」っていう意見が出ていますが、まぁ鉛発色であることのほうが一般的ですね。
ここ、小難しいでしょうけれど、この後の話に関わる大事な部分ですのでよく覚えておいてください。



先ほど、アマゾナイトとは「微斜長石:マイクロクリン」の中で、緑色~青色をした変種だと申し上げたと思いますが、実は、最近市場に「ピンク・アマゾナイト」という名前の石がちらほらと出回っているのです。


これ、『アマゾナイト』じゃありません。
アマゾナイトとは、緑色~青色に発色するマイクロクリンの一種です。それ以外の色をしている時点で『アマゾナイト』と呼ぶべきではないのです。
じゃあこれは何かと申しますと、これは「微斜長石:マイクロクリン」です。マイクロクリンには透明・白・淡い黄色・赤レンガ色・緑色と様々な色がございます。こういう淡いサーモンピンク色の石もあるでしょう。
この石にあえて名前をつけるなら「ピンク・マイクロクリン」です。『アマゾナイト』という名前は使うべきではありません。
しかし、「マイクロクリン」などという聞き慣れない名前よりも、認知度の高い『アマゾナイト』という名前のほうが顧客の目に留まりやすいでしょう。
そしてアマゾナイトは一般的には青緑色をしているはずなのですから、ピンク色の『変種』となれば物珍しさで買う方もいらっしゃることでしょう。実際、「ピンク・アマゾナイト」の価格は普通のアマゾナイトよりも若干お高いですしね。
でもね、世の中にはやっていいことと悪いことがあるのです。
「コランダム」という鉱石の中で、血のように赤い色をしているもの“だけ”を『ルビー』と呼び、それ以外は『サファイア』と呼ぶ。
そういう決まりがあるのと同じように、マイクロクリンの中で、鉛由来の発色で緑色~青色のものを『アマゾナイト』と呼ぶと決まっている以上、それ以外の色をしているマイクロクリンを『アマゾナイト』呼ばわりしてはいけません。

しかもですよ、あの「ピンク・アマゾナイト」のピンク発色の原因は、含まれているヘマタイト(赤鉄鉱:せきてっこう)の微粒子のせいじゃないですか! 鉛関係ないやん…。
『アゲート』の時も言いましたけど、みんな見た目で好き勝手な名前つけすぎ。もっとちゃんと組成とか調べてから名前つけるようにして! んもー!(ノ*`´)ノ⌒┻━┻
まぁあまり興奮していても話が先に進みませんので、ここらへんで『アマゾナイト』のお役立ちな使い道をご紹介いたしましょう。
寛大すぎる女神に結び付けられた石で、心を平静に保つ効果が期待できる
アマゾナイトは歴史の古い石で、古代シュメール(紀元前3500年頃)の人々はこの石で装飾品や円筒印章(筒状の円柱の周りに彫刻を施し、それを粘土板上に転がすことによって連続した紋様を速やかにつけるためのもの)を作っていました。
古代エジプトの有名なツタンカーメン王のお墓からも、この石で作ったスカラベ(コガネムシ/フンコロガシ)の指輪が発見されています。

シュメールの人々はアマゾナイトを原初の海の女神「ティアマト」と結びつけました。
まぁ青緑色をした石っていうのは、大体どの文明においても、水とか空に関連付けられることが多いんですが(ターコイズは天空の女神「ハトホル」だったでしょ?)、アマゾナイトもご多分に漏れずそのパターンです。
ティアマト女神は異形の竜の姿をした怪物と考えられることが多いですが、彼女はとても優しくて寛大な方だったとあたしは思います。
若い神々がうるさく騒いで煩わしい想いをしても咎めることなく辛抱し、旦那さん(アプスー神)が「若い連中やかましいな。皆殺しだ!」と怒り狂った時も彼をなだめすかし、若い神々が旦那さんをだまし討ちで殺してしまった時も若い神々に理解を示し、「アプスー神の仇討だ!」と暴走する旦那さん配下の神々VS若い神々の戦いに巻き込まれ命を落とすことになっても、敵に2つに裂かれたその身から天と地を、乳房と眼球から山と川を最後に世界へと残した女神さんなんですよ。
こんないいひと(神)いないよ! ギリシャの神々は、ティアマト女神の爪の垢でも煎じて飲むべきだと思う。

この心優しい海の女神と結びつけられたアマゾナイトも、「苛立った心を静める」とか「メンタルの不調を安定させる」など、癒しの効果が期待できる『希望の石(ホープ・ストーン)』として現代人に人気のある石です。
アマゾナイト単体でもいいですが、ブルーレースアゲートやアラゴナイト(霰石:あられいし)、ベリル(緑柱石:りょくちゅうせき)などと組み合わせても、ストレス解消・防止に役立つと思いますよ。

そうそう、直射日光に当てると退色する石が多いなかで、アマゾナイトは日光によって色が濃くなる(Sunlight can sometimes enrich the color of genuine amazonite.)ことがあるんですって! アマゾナイトのアクセサリーをお持ちの方には朗報ですよね。
モース硬度も6以上はありますし、気軽に身に着けられる石としてアマゾナイトはお勧めだと思いますよ!ヾ(´▽`)ノ
では『アマゾナイト』のお話はこれくらいにいたしましょう。
それではまた!

1980年代より占術、呪術に興味をもち、独学にて勉強を始める。その後、3人の有名・無名な師匠につき、占術・呪術、およびそれに附随する基礎知識、語学、歴史学、民族学、脳科学などを広く学ぶ。紫乃女さんの紹介ページは→こちら
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