
日本人の名前が付く唯一の鉱物であり、「世界三大ヒーリングストーン」でもある
[ 意外に知らない宝石の裏話 ~パワーストーン店20年監修者が教える ]
鉱物そのものの説明より、発音の説明のほうが多い外国人泣かせの石
今回は「世界三大ヒーリングストーン」として名高い『スギライト』のお話をいたしましょう。
スギライト:和名『杉石(すぎせき)』、モース硬度はだいたい5.5から6.5程度です。
ついでに化学組成もご紹介したいところなんですが、あの超長ったらしい式に拒絶反応を示す方々が続出すると思われますので今回はやめておきましょう。
と見せかけて…、一応載せますと、こうなります。
(K,Na)(Na,H2O)2(Fe3+,Ca,Na,Ti,Fe,Mn)2(Al,Fe3+)Li2Si12O30
どなたが定めたのかは存じませんが、冒頭でも申し上げましたとおり、スギライトは「世界三大ヒーリングストーン」と呼ばれる石のひとつです。
残りの2つは「ラリマー(ブルーペクトライト)」と「チャロアイト」ですね。どの石も「マイナスの感情を除去し、ストレス解消に役立つ」として、パワーストーン好きのヒーラーさんには大人気なんですよ。
まぁヒーリングに役立つかどうかは置いといて、スギライトは日本人が最初に発見し、新鉱物としてIMA(International Mineralogical Association:国際鉱物学連合)に申請した石です。
新しい鉱物が発見された場合、発見者または申請者の名前が鉱物名として採用されることが多いのですが、スギライトの場合、杉健一博士が発見・調査なさった鉱物なので(申請者は彼の教え子である村上教授)こんな名前になりました。
日本人の名前が鉱物名として採用されているのはスギライトだけなんですよ!ヾ(´▽`)ノ
※余談ですが、海外のWikipediaもMINDAT(The Mineralogy Database:世界最大の鉱物データベース)も、スギライトに関する記述の中で「すぎらいと」という発音の正確性についてかなりの行数を費やしています。
「Sugiの”g”の音は”ginger”(ショウガのこと)の”g”じゃなくて”geese”(ガチョウのこと)の”g”だ」とか「”gene”(遺伝子のこと)の”g”のようなソフトな発音にするんじゃない」とか、鉱物そのものに対する説明より、正しい発音に対する注意事項のほうが多いんじゃないかと思うほどです。
特にMINDATは「スギライトの人気が高まるにつれ、誤った発音が宝石業界に定着しつつある。これは人名なのだから正しく発音しなくてはいけない」と注意を促してくれています。人名が鉱物名として採用されている例は多いのですから、我々も海外の方の名前が採用されている鉱物名を正しく発音出来るよう心掛けねばいけませんね!
※余談の余談ですが、海外で「すぅー(←この音は強め。アクセントはここ)がぁ(←この音は超弱め)らぁぃと」って石を勧められたら、それ、スギライトです。須賀さんちゃうがな、杉さんやがな (´・_・`)
南アフリカ産の紫色が出るまで日の目を浴びなかった
まぁそんなこんなで外人さん泣かせなスギライトですが、現在市場に流通しているスギライトはだいたいこういう色合いのものが多いですね。

しかし、杉博士が発見なさった「最初のスギライト」は、上記のものとは似ても似つかぬ石だったんです。

「え!こんな地味な色の石があのスギライト?」と驚かれる方も多いことでしょう。皆さんが見慣れていらっしゃるスギライトは、こういう色合いの石ですよね?

実はこの2つは同じ石なんです。南アフリカ産のあの美しい紫色を誇るスギライトは、最初に日本で発見された地味なうぐいす色をしたスギライトの『変種』なんですよ。
IMAに認可された当時はその地味な色のせいでマイナーな石でしたが、その後南アフリカの北ケープ州にあるウェッセルズ鉱山にて、マンガン(Mn)を含んだ(正確に言うならマンガン鉱床から採掘された)美しい紫色のスギライトが発見されたことにより、一気にメジャーにのし上がりました。
スギライト自体は日本や南アフリカ以外だと、イタリアのリグーリア州やトスカーナ州、オーストラリアのニューサウスウェールズ州、インドのマディヤ・プラデーシュ州でも産出するのですが、この濃い紫色を出すにはスギライトにマンガンが含まれていることが絶対条件なので、やはり現在の一番人気は南アフリカ産のものですね。

偽物の判別は、意外に簡単
一般的には紫色が濃いもの&不純物が少ないものほど高額で取引されますが、スギライトの人気が高まるにつれ、「なんちゃってスギライト」もそれなりに(そこまで多くない)流通するようになりました。
しかし本物かどうかは割と簡単に見分けがつきますので、あまり心配なさる必要は無いでしょう。
ちなみに、ターコイズ(トルコ石)のような網目模様があるスギライトは天然の品ではありません(練りスギライト)。
あとは「Natural」と銘打っておきながら染色モノを販売している海外の店舗もあるにはあります。ただし先ほども申し上げましたとおり、よくよく見れば違和感を抱く品であることがほとんどですので、そこまで警戒なさることもないでしょう。


自己意識改革運動で世界中でもてはやされ、人気が急上昇
スギライトは1974年にIMAに認可された歴史の浅い石です。しかも南アフリカで紫色の変種が見つかるまではドマイナーで人気もなかったので、ルビーやサファイアのように神話にも登場しませんし伝承らしい伝承もありません。
そんな「知る人ぞ知る」石がどうして「世界三大ヒーリングストーン」として注目されるようになったかと申しますと、20世紀後半にアメリカで『ニューエイジ(新時代って意味)』と呼ばれる自己意識改革運動が起こったんです。
その運動はあっという間にイギリスやヨーロッパ各地、オーストラリア、ニュージーランドなどに広がり、「物質的な世界によって見えなくなってしまっている神聖な真実を取り戻す」ことを目標とした人々が爆発的に増えました。いやもうほんと爆発的と言っていい勢いだったんですよ。
で、イギリスだけならまだしも、アメリカでもてはやされるモノは日本でも諸手を挙げて受け入れられるのが常ですから、アジア諸国ではまず日本、次いで韓国とフィリピンにもこの『ニューエイジ運動』は広がりました。
現在、どっちを向いても「スピリチュアル」という単語を目にするようになったのは、この運動のせいです。
で、その「新時代の意識に目覚めた」方々が目をつけたのが『ラリマー(ブルーペクトライト)』『チャロアイト』『(紫色の)スギライト』でした。
この3種の石は天然石の中でも特にリラックス効果が強く、使用者に愛と調和をもたらし、不安や恐怖などのマイナスな感情から守ると言われて、スピリチュアル業界の方々に重要視されたんです。
おかげさんでこの3種の石の人気はうなぎのぼりになり、お値段もそれに伴い高額になりました。
ニューエイジ運動が落ち着いた今でも、他の石に比べるとお高いですよ。
ただまぁ需要が増えたことにより、ビーズ加工品や装飾品などの流通量もぐっと増えた(でもお高い)ので、入手自体は容易です。Amazonでも売っているほどですね。
※余談ですが、チャロアイトがご入用の方は、入手を急いだほうがいいでしょう。あの石、ロシア連邦サハ共和国にあるチャロ川流域でのみ産出する石なので、ウクライナとの戦争が一段落しないと市場に再度流通しないと思うんです。それに鉱床が枯渇するのも時間の問題だと言われていますしね。
ストレス社会の救世主
まぁ、あたくしこと紫乃女は普段から呪詛(じゅそ:呪いのこと)屋の看板を掲げておりますので、「癒し」だの「ヒーリング」だのには無縁の人間でございます。
ですので、この石が人を癒したり愛や調和をもたらしたりするのかどうかはちょっとわかりかねますね。
ただ、個人的な感想としましては、『スギライト』は、「所有者を【達観(たっかん)】させる」石だと思うんです。細かいことに迷わされず、動じない心を養う石なんじゃないかと。
そういう「達観した心」は目先の小さな出来事にいちいち揺らいだりしませんので、結果として、スギライトを愛でる方々は、物事全体の情勢や将来性を見通せるようになるんじゃないかと思います。
細かなことにいちいちショックを受けて傷つくことが減れば、「ストレス軽減」にも役立つでしょうしね。現代人には使い道の多い石だと思いますよ。

では、『スギライト』のお話はこの辺にいたしましょう。
それではまた!

1980年代より占術、呪術に興味をもち、独学にて勉強を始める。その後、3人の有名・無名な師匠につき、占術・呪術、およびそれに附随する基礎知識、語学、歴史学、民族学、脳科学などを広く学ぶ。紫乃女さんの紹介ページは→こちら
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