
北の大地を中心に愛されてきた、光を閉じ込めたとされる石「ラブラドライト」
[ 意外に知らない宝石の裏話 ~パワーストーン店20年監修者が教える ]
補助犬や警察犬としてもなじみが深い
今回は『ラブラドライト』のお話をいたしましょう。
『ラブラドライト』:和名「ラブラドル長石(ちょうせき)」、モース硬度は6から6.5。そこそこ硬い石ですね。なんでこんな「ラ」だらけの名前になったかと申しますと、この石が最初に発見されたのがカナダ北東部のラブラドル半島だからです。
じゃあなんでカナダのラブラドル半島はそんな「ラ」だらけの名前なのかと申しますと、その地を最初に探検したのがポルトガルのジョアン・フェルナンデス・ラヴラドール(João Fernandes Lavrador)さんだからです(´・_・`)
※ジョアンさんの本名は「ジョアン・フェルナンデス」なんですが、ラブラドル半島をはじめとする北米北東部を航海しその海域の地図を作成した功績により、当時のポルトガル王から「ラヴラドール」という称号を与えられました。
『ラヴラドール(lavrador)』とは ポルトガル語で『地主』という意味です。ジョアンさんは、未知の海域を探検・調査したその功績により、自分が発見した土地の所有権をポルトガル王より与えられたので、「(ジョアンさんが)地主(ラヴラドール)になった半島」=「ラブラドル半島」って名前になったのです。ちょっとややこしいよね。
ちなみにこの半島出身の有名な狩猟犬が「ラブラドール・リトリバー」です。「リトリバー」とはRetrieveする犬、つまり「(獲物を)回収する犬」という意味です。
あの人懐こくて賢いワンコさんのご先祖様である「セント・ジョンズ・ウォーター・ドッグ」は、水を恐れない&泳ぎが上手な性質を持っていたので、魚網から零(こぼ)れ落ちたニシンやタラを人間に代わって回収する作業に使役されていました。
その「人間のお手伝いを積極的に引き受けてくれる」穏やかな性質は、子孫である「ラブラドール・リトリバー」にも見事に受け継がれたようですね。今では彼らは魚を拾う代わりに、身体に障害をお持ちの方の補助犬(盲導犬とか)や警察犬として大活躍していますよ。

おっといけない、今回は石の話でしたね!
大急ぎで『ラブラドライト』の解説に移りましょう。
鮮やかな「スペクトロライト」は、フィンランド産のみに許される名称
ラブラドライトは光を当てると虹色の効果(専門用語で『ラブラドレッセンス』または『シラー効果』と言います)を示す美しい石です。
この石は『長石(ちょうせき)』という鉱物グループの中の『斜長石(しゃちょうせき)』グループに属する『曹灰長石(そうかいちょうせき)』の一種。
ただ、長石グループは地殻(地球の表面を覆う地層のようなもの)中に存在する鉱物の中で一番量が多い(ついでに種類も多い)グループなので、詳しく解説を始めるとそれだけでこの記事が終わってしまいますから、ここでは軽く流していきましょう。


有名産地はやはりカナダのラブラドール州(ラブラドール州沖のポールズ島)ですが、先ほども申し上げましたとおり、ラブラドライトが属している長石グループは、地殻中における存在量が最も多いグループなので、カナダ以外でもポーランド、ノルウェー、フィンランド、マダガスカル、中国、オーストラリア、アメリカなど、結構あっちこっちで産出します。綺麗な石ではありますが、珍しい鉱物ではないってことですね。
ラブラドライト自体は珍しい石ではないんですが、フィンランドでのみ産出するラブラドライトに「スペクトロライト(Spectrolite)」と呼ばれる品種があります。この石は結構レアですね。主に青・緑・灰色の色調を示す普通のラブラドライトよりもずっと鮮やかな色をしているんですよ!

最近、こういう「青や緑系の色以外の色調を示すラブラドライト」に対して『スペクトロライト』の名称がつけられ高値で流通していることがありますが、スペクトロライトはフィンランド産のみに冠される名称です。
色が派手で綺麗だったらなんでもかんでも『スペクトロライト』呼ばわりしていいわけじゃないの! マダガスカル産のラブラドライトを扱う業者さんは、結構そこらへんアバウトなので皆さんもご注意下さい。

兄弟分の「アンデシン」は、よく一緒にされる
あと注意すべきなのはこういうやつかな(´・_・`)


これらは『ラブラドライト』の名称で流通している石なんですが、いくら『ラブラドレッセンス(シラー効果:光を当てると虹色に見える現象)』を示しているからといって、「透明なラブラドライトですよ!」って高値で売りさばくのはどうかと思います。
これ、『アンデシン』のカラーレスというもので、別物。
まぁアンデシンとラブラドライトは同じ斜長石グループに属する兄弟のような関係ですから、あまり厳密なことを言ってもしょうがないんですけれど、せめて『ラブラドライト-アンデシン』と両方の鉱物名を併記すべきだとは思いますね。
※専門的なことを言うと、曹長石と灰長石の比が30:70から50:50の間のものを「ラブラドライト」、50:50から70:30の間のものを「アンデシン」と呼びます。アンデシンの人気の色はやはり赤色ですので、こういう無色透明な石は高値で売れません。
しかしラブラドライトでここまでインクルージョン(内包物)の無い無色透明な物はレアですから、ラブラドライトの名称で売ったほうが高く売れるのは事実です。
でもね、『ガーネット』の時と同じく、どちらかの鉱物名に割り振ることが難しいのなら、「ラブラドライト-アンデシン」と両方の鉱物名を併記するほうが良心的だとあたしは思いますね。
直観力や予知能力を伸ばす石とされてきた
さて、そろそろラブラドライトにまつわる面白い伝承をご紹介いたしましょう。
アラスカやカナダ、グリーンランドに住む先住民『イヌイット(わかりやすく言うとエスキモー)』さんたちは、ラブラドライトは「オーロラを閉じ込めた石」だと考えていたようです。
とあるイヌイットの戦士が、岩の中に閉じ込められたオーロラを発見し、それを解放しようと槍で石を突いたところ、大半のオーロラは空へ還ったけれど、一部が石に残り、そのまま「オーロラを宿す石」になったんですって。
彼らはその石を「火の石(ファイアーロック・ファイアーストーン)」とも呼んでいたそうです。
北欧神話では、「ミズガルズ(人間の世界)」と「アースガルズ(神々の世界)」を結ぶ『虹の橋(ビフレスト:ぐらつく道って意味)』はラブラドライトで出来ていると言われていたそうです。
カナダやフィンランドが名産地なだけあって、虹色の石ラブラドライトの伝承も北の地域に多く残っているようですね。
古代バビロン(メソポタミア地方の古代都市)の神話では、月明かりが小川のそばの石に落ちてラブラドライトになったと言われているんです。だからその石は光に当てると「中に宿った月明かり」が虹色に輝いて見えるのですって。
上記のような各地の伝承を見てみると、今も昔も人々はこの石の虹色の光に魅了されてきたことがよく分かりますね。光に当たると孔雀の羽のように鮮やかに輝く色の効果「ラブラドレッセンス(シラー効果)」の名前の元になった石だけのことはあるというものです。

「オーロラが閉じ込められている石」や「月明かりが落ちてきた石」という伝承を見てもわかる通り、この石は「(なんらかの)光を宿す石」だと考えられていたようです。
そのせいか、現代ではラブラドライトは「直観力を養う石」「洞察力や予知能力を伸ばす石」としてヒーラーさんやパワーストーン愛好者さんたちに大人気な石なんですよ。
ビーズ加工品も大量に流通していますので、よほど高品質な品でない限り、わりと安価で入手可能です。「狂気を諫める(いさめる:正す・改めるってこと)石」である『アメシスト』と組み合わせて「冷静さを保ち直観力や洞察力を養う」ブレスレットなどを作ってみてもいいですね。
アメシストの紫とラブラドライトの透明感溢れる青の色合いはとてもよく調和すると思いますよ!ヾ(´▽`)ノ

さて、では『ラブラドライト』のお話はこの辺にいたしましょう。
それではまた!

1980年代より占術、呪術に興味をもち、独学にて勉強を始める。その後、3人の有名・無名な師匠につき、占術・呪術、およびそれに附随する基礎知識、語学、歴史学、民族学、脳科学などを広く学ぶ。紫乃女さんの紹介ページは→こちら
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