
鉄道会社という名の食品会社が密かに企むこと
[ 銚子電鉄 with WEB車掌SEKIDAI by デジタルデン(前編) ]
ずっと赤字経営で存続の危機を乗り越えてきた銚子電鉄。さらに最近は、台風、そしてコロナ…。嵐がやむ気配はなさそう。そこで銚子電鉄は、鉄道以外にも、映画、食品、アパレルと、多角経営を展開。しかも、斬新でユニークなものばかりで、単に儲けるという枠を超えて、私たちをいつも楽しませてくれているようにも思える。
その銚子電鉄の代表を務める竹本勝紀社長に「英語車掌」こと関大地氏が、鉄道以外の事業について根掘り葉掘り質問してみた。先に少しタネ明かしてしまうと、そこには日本人の武器である「おもてなし」の精神が宿っていることが発覚したのだ。
オリラジの中田氏が銚子電鉄をジャック
関 銚子電鉄さんは映画も撮られましたよね。僕も拝見させていただいたのですが『電車を止めるな!』。ものすごく感情移入させられた作品です。何回泣いたかわからなくなるほどです。
竹本 本当に嬉しいです。「電車冥利に尽きる」とは、まさにこのことですね。
関 自分が鉄道員だったということもあるのですが、鉄道員としてのプライドやお客様への気持ちがスクリーンから伝わってきて、終始目頭が熱くなりました。
竹本 ご覧になった皆様が楽しんでくださっていたら、ありがたいです。オーディションを2年前に開催したんですけど、200人もの方が出演を希望して来てくださって、感謝の気持ちで一杯です。その中から主要キャストを選ばせていただくのは、本当に大変でしたね。結局メインのキャストは10人ほどでしたけど、魅力的な方が多くて最後まで悩みました。
関 オリエンタルラジオの中田敦彦さんも出演されていましたよね。
竹本 友情出演という形でですね。『電車を止めるな!』の原作本の出版社はPHP研究所さんなのですが、そのPHPさんからほぼ同時期に、中田さんがご著書『労働2.0』を出されて、コラボが始まったのがきっかけでした。雑誌などで対談記事を載せていただいたりして、その後に中田さんは銚子にお越しになり、シンポジウムを開いてくださったりしました。その流れで、映画も、ということになりました。出演料をお支払いする代わりに、電車ジャックということで、ポスターやヘッドマークに中田さんの本『労働2.0』を載せて、銚子電鉄で1週間、『労働2.0』一色で染めたんですね。

関 中田さんのような全国的に名が知られた著名人、YouTuberなど、非常に多くの方から、銚子電鉄さんは応援されていますよね。
竹本 本当にありがたいことですよね。YouTuberといえば、当社でも半年前からYouTube『【銚子電鉄】激つらチャンネル』を開設しました。鉄道YouTuberとしては特に知られたスーツさんにもご協力いただきまして、「赤字ローカル線を1日だけ黒字にしてみた 【銚子電鉄】」という動画をアップしてくださったりして、その動画は90万回以上再生されまして。それに伴って当社の知名度もアップし、おかげさまでネットショップの売り上げもグンと伸びたんですよね。
関 スーツさんが切符をたくさん買われて、その運賃収入だけで黒字にするって動画ですよね!
竹本 女性YouTuberのカコ鉄さんも人気急上昇中なのですが、YouTubeの投げ銭機能のスーパーチャット(スパチャ)で得た収益を、全額当社に寄付してくださいました。このようにたくさんの方にご支援くださる中で、今回は関さんにアナウンスという素晴らしいツールをご提供いただくことになりまして。銚子を多くの方に楽しんでいただけるように、関さんにもとても期待を寄せています。
「卵が先か、鶏が先か」「鉄道が先か、食品が先か」
関 銚子鉄道さんは、お菓子をはじめ食品のラインナップも充実していますよね。
竹本 皆さん、誤解されているかもしれませんが、当社はれっきとした食品メーカーです。食品メーカーとしてのプライドをかけて開発した商品です。
関 えっ、鉄道会社ではないんですか…?
竹本 社名は確かに「銚子電気鉄道」で、100年近くも鉄道も走らせていますけどね。でも鉄道を維持するのは非常にお金がかかるんですよ。鉄道部門は常に赤字なんですが、その赤字分を食品の製造・販売でまかなってきたというのが、現在の当社のビジネスモデルになっているんですよね。
関 珍しいですよね。
竹本 オンリーワンといえば格好よく聞こえてしまうかもしれませんが。それなりに誇りを持って、食品事業に毎日全力で取り組んでいます。鉄道を存続させるためではありますが。とはいっても存続自体が最終ゴールではなく、存続を通じて地域に貢献できる、そんな企業でありたいなと思っています。
関 「食」もそうですが、衣食住の「衣」も取り組まれていますよね。マフラーも発売されていたりで。
竹本 マフラーも意外に好評です。『穴あきマフラー』という商品で、小さなハートの穴が空いているんですけど。弊社のオンラインショップでは「寒くなった懐を暖めることはできませんが、眺めているだけできっと心が温まります。経営に穴があいた銚子電鉄より心を込めてお届けします。」と案内しております。
関 『【銚子電鉄】激つらチャンネル』でも、そのマフラーはご紹介されていまして必見です。

おもてなしの精神が、味も本格派の菓子を生み出した
関 ぬれ煎餅も今度、新商品を出されるのだとか。
竹本 こちらもおかげさまで好評をいただいておりまして、ぬれ煎餅は2つの味が同時発売となりました。一つは生地にかつお節を練りこんだぬれ煎餅でして、厳しい経営状況に「喝を(かつお)入れる」という自戒を込めた商品となっています。
関 味を追求だけでなく、意味も持たせていますね!
竹本 もう一つは、「ひ志お」味。銚子の伝統発酵調味料に醤(ひしお)というのがあり、濃厚な旨味を持つ固形の調味料なのですが、これをミキサーにかけたものを表面に塗った非常に手の込んだ煎餅で、銚子らしさを打ち出したものです。銚子電鉄「救済」への願いを込めて、931円(税込)にて販売です。
関 こちらも美味しそうですね!
竹本 さらに言うと、「ひ志お」味には秘伝のダシが入っているのですが、このダシの正体を近日、YouTube『【銚子電鉄】激つらチャンネル』でドラマチックな動画でアップして明らかにしますので、ご期待ください。


関 「食」といえば、ぬれ煎餅以外にも『まずい棒』、たい焼きなども発売されていますよね。
竹本 『まずい棒』も新商品が発売します。『岩下の新生姜』のパウダーを惜しみなく使ったピリリとくる味です。パッケージには「激辛」と書いてありますけど、実際に食べてみるとそんなに辛くないんですよ。「激しく辛(つら)い」ってことなのでしょうか? 『激つらチャンネル』に共通するテーマにもなるんですけどね。鉄道存続のために、辛さに耐えて頑張る、そんな意味を込めた『まずい棒』を4月17日に発売します。
関 出たら、すぐに買いに行きます! 銚子電鉄さんは次から次へと新しいニュースが出てきますので、いつも楽しみです。
竹本 近いうちに、社名変更しようかと思ってます。「銚子製菓」とね。4月1日はエイプリルフールですし、「調子悪い電鉄」とかにして、次には「銚子製菓」にして、2段階で社名変更しようかな?と。そんな感じで面白おかしく、皆さんにも楽しんでいただいければ幸いです。
関 銚子電鉄さんは「日本一のエンタメ鉄道を目指す」という標語を掲げていらっしゃいますよね。
竹本 「エンターテインメント」という言葉には「おもてなし」という意味もあります。銚子に来てくださった皆様に笑顔でおもてなしをして見送りをし、銚子に何度でも来てお金を落としていただく。これが当社に課された使命かな? と思いますね。もっとたくさんの方に、ぜひ銚子に来ていただきたいですね。
関 最後に重大発表があります。竹本社長にも『デジタルデン』に参加していただくことが決まりました! YouTube『【銚子電鉄】激つらチャンネル』は動画ですが『デジタルデン』では活字で、想いなど様々なことを竹本社長に綴っていただけることになりました。
そしてもう一つ重大発表が。今回収録したアナウンス音声ですが『CAMPFIRE』を通じてクラウドファンディングを行います。ご支援くださった皆様には音声をプレゼントし、支援金は銚子電鉄さんにもお届けします。銚子電鉄さんは多くの新たな試みに挑戦されていますので、僕も今回はアナウンスでしたが、今後も様々な形で協力できたらと思っています。
竹本 当社は創業して98年。もう少しで100年です。コロナもそうですが、去年は台風で大変に厳しい状況になってしまい、経営は追いつめられています。そんな時に、関さんのようなイケメンに協力いただきまして、本当に皆さんのお力で今まで存続できました。存続が最終目的ではないのですけど、昨今の厳しい状況では当面は存続できるためには何ができるのか?を、常に考えていろんなことに挑戦していきたいと思います。
もし機会がありましたら銚子に来ていただいて、銚子電鉄に乗って、ぬれ煎餅なども買っていただければと思います。犬吠駅には美味しいたい焼きも売っています。旬の海の幸も、沿線のたくさんのお店で味わえます。銚子で観光をぜひ楽しんでください。
竹本勝紀(たけもと・かつのり)
1962年、千葉県生まれ。慶応義塾大学卒。税理士事務所を経て、2009年に竹本税務会計事務所を設立。500社近い企業に対し、税理士として活躍。銚子電鉄は顧問税理士から付き合いが始まり、2012年に代表取締役に就任。千葉科学大学で財政学、マーケティング論の非常勤講師としても活動している。著書に『崖っぷち銚子電鉄 なんでもありの生存戦略』(寺井広樹と共著/イカロス出版)がある。
関大地(せき・だいち)
1984年生まれ。JR東日本にて保線担当の技術職、乗務員を経て、株式会社PLEASURE HUNTERを起業し代表取締役に就任。鉄道員から作家、YouTuber、セミナー講師などに転身した。最近では、TBS系列全国放送や関東ローカルテレビ番組にも出演。出身地の群馬県吾妻郡中之条町でPR大使も務める。JRの車掌時代は、高崎線で肉声による英語放送が話題を呼び、YouTubeは600万回再生。「英語車掌」のニックネームで親しまれている。著書に『乗務員室からみたJR 英語車掌の本当にあった鉄道打ち明け話』(ユサブル)、『車内アナウンスに革命を起こした「英語車掌」の英語勉強法』(ジョン レイナーが監修/ベレ出版)がある。
杉浦博道(すぎうら・ひろみち)
神奈川県出身。東京理科大学を卒業後、東京都立大学大学院で都市計画を専攻し、全国のJRと私鉄は全区間乗車済み。ラーメン屋さんは1000軒訪問と食べ歩きマニアでもある。ゲーム誌、モノ雑誌、ライフスタイル誌など雑誌編集を経て、現在はアダルトと小説以外はほぼ全てを手掛ける書籍編集者。一生出せない編集者も多い10万部突破を9年間で10点出す(30万部突破は2点で、Amazonと楽天で総合1位も獲得)。企業、専門学校等で、本の編集&販促のセミナー講師経験は多数。大学で書籍編集を事例にマーケティングの授業、学童で小学校低学年向けの講座など、ユニークな形式にも対応。ラジオ、新聞、雑誌の出演経験もアリ。
【銚子電気鉄道】オフィシャルサイト
https://is.gd/zrbelH
【銚子電気鉄道】オンラインショップ
http://chodenshop.com/
【銚子電鉄】激つらチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC1KLrK4CUBDw5QkeDoMcLlQ
【本文中で紹介した書籍】
『労働2.0 やりたいことして、食べていく』(中田敦彦/PHP研究所)
https://is.gd/m8c4aM
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