
名指揮官・ミゲルの哲学「当たり前こそ大事なことを、関係者全員が共有する」
[ 今度こそうまくいく!自信を無理なくつける方法 ]
真面目な子や部下のほうが、自信を失いやすい
この子は、あるいはこの部下は、真面目なんだけど要領が悪いのか、どうも結果が出ていない…。そんなことはないでしょうか。真面目に取り組んでいるのに結果につながらないのは、本当にもったいない話です。
なのに、そんな真面目な子や部下に向かって「なにもたもたしているの!」とか「早くしなさい!」なんて言ってしまいます。さらに、お子さんや部下がその否定的な言葉で思考停止しているのに、「あなたは何やっているの!」と怒ってさらに追い打ちをかけてしまうのも珍しくありません。言われたほうは、なかなか活躍できません。

真面目な人ならなおさらで、言われた言葉にも、何もできない自分にも、人一倍気にしてしまい、やる気も自信も削がれていくのです。親(上司)も、子ども(部下)も、全員がストレスをどんどん抱えるだけで、状況は一向によくなりません。
では、真面目な子や部下を活かすために、どんな対応を親として上司としてとればいいでしょうか。長年人材育成を経験した私は、親や上司のかかわり方に一つの秘訣があることを見つけました。それは、自分が役に立っていると思えるようにすることです。
このことも、これまで本連載で登場したスペインから日本にやってきたサッカーの名監督・ミゲルさんも見事に実践していました。ミゲルさんのやってきたことを例に、今回も一緒に学んでみましょう。
当たり前のことこそ、とても大事であることを伝える
いつものように学校の校庭で、子供たちとミゲルさんはサッカーの練習をしています。背も高くて運動神経の良いストライカー(ゴールを決める選手)のシオンくんがゴールを決めます。シオンくんは自慢気にとても嬉しそうです。

ただ、まわりを見回してみると、他の子供たちは嬉しそうではありません。サッカーもチームプレーと言いながら、ゴールする子は一人、ゴールした子だけが輝いて、ほかの子たちはなんとなく喜べません。
流石のミゲルさんは違います。シオンくんがゴールを決めると「今の誰のゴール?」とメンバーに聞きます。「今のゴールは、ネイマールのいいパスがあったから」「あと太郎のドリブルで守りから攻めに変わったから」、そんな声が次々と出てきて、ゴールが決められた今までの流れをみんなで思い出せます。すると普段光の当たらないメンバーが、シオンくんのゴールをサポートしていることがわかってくるのです。
ミゲルさんは、ネイマールくんや太郎くんの肩に手を当て、「今のゴールは太郎やネイマールのゴールでもあるよ!」と一緒に喜んでいます。すると、ネイマールくんも太郎くんも「自分がしたパスやドリブルがゴールに繋がっているんだ!」と満面の笑みを浮かべて喜んでいます。自分が役に立っているという感覚を持つことができた瞬間です。この感覚が、自分にもできるという自信につながっていくのです。
サッカーをやっているんだから、パスやドリブルをするのは当たり前のことだろうと思っていると、その当たり前のことをしている子には一生光が当たりません。でも、この当たり前をやってくれる人がいなければシュートは打てないので、点数は入りません。
普段、見逃しがちな当たり前のことでも、誰かの役に立っているもしくは何かの役に必ずなっています。そこを見逃さず、「できているね!」「いいね~」「ありがとう☆」とちょっとした声掛けをしてあげると、なくしてしまった自信の扉も開いてきます。
当たり前をした真面目なメンバーは自信がつき、チームワークは強化される
ミゲルさんはシュートを打ったシオンくんにこそ、「今のゴール、誰のゴール?」と、必ず聞いて考えさせます。すると、シオンくんは首を傾げながら、「ネイマールのパス、太郎のドリブル…」と考えを巡らせながら、メンバーそれぞれのサポートがあったからゴールができたことに気付きます。「そっかー。僕のゴールは、みんなのサポートがあるから決められたんだ!」と、メンバーの貢献へ感謝の気持ちが生まれてきます。
実は今までシオンくんは、メンバーのパスやアシストをいつも当たり前のように思っていました。でも、ミゲルさんに言われてはっと気づきました。自分は誰かに支えられているんだと。
そしてシオンくんは、ネイマールくんや太郎くんに「いいアシスト、ありがとう!」と感謝を伝えます。ミゲルさんに加え主役になっていたシオンくんからそう言われることで、ネイマールくんや太郎くんは、いっそう自分のやっていることに価値を感じ自信が生まれてきます。
人は誰でも自分のことを認めてもらいたいと思っています。また、自分でも自分のことを認めたいと思っています。だから真面目な子でも、その真面目な取り組みを認めてもらい、その取り組みが価値あるものだとわかれば、嬉しくて猛烈に動き出します。
同時に、メンバー同士の絆が深まりチームワークが生まれてくるのです。このときが、最強なチームが生まれる瞬間となります。

通学や通勤にも、当たり前はある。それを親や上司が大切にするだけで状況は一変する
一方、家庭や仕事ではどうでしょう。学校へ行くことも、帰ってくることも当たり前のことです。でもそんな当たり前にも、ミゲルさんがパスやドリブルをした選手に接したのと同じように愛情を持って「おかえり!」と言ってあげてください。子どもはそう言ってもらえると、嬉しいものです。
学校だっていつも楽しいことばかりあるとは限りません。テストで点数が悪かったり、先生に怒られたり、同じクラスの子からひどいことを言われたり、学校で嫌なことがあったかもしれません。そんなとき親から笑顔で「おかえり!」と言ってもらえれば、先生や友だちとは距離ができてしまったと感じていたとしても、自分を受け入れてくれる人がいることに安心するはずです。

会社でも同じです。会社に来ることは当たり前かもしれません。でも、満員電車に揺られ仕事の悩みを抱えながらも、会社に来ているかもしれません。会社に来たとき、上司が笑顔で「おはよう!」と言ってくれれば、憂鬱な気持ちも軽くなります。こんな風にして見逃してしまっている当たり前に光を当てると、自信の芽が生まれてきます。
まだ無理かもしれなくても、あえてやらせてみるのも自信につながる
もう一つ、「勉強が忙しいからお手伝いをやらせない方がいいのではないか」「あいつはまだ力がないからあの仕事は無理だな」と思って、何かを任せることに遠慮していないでしょうか。
家庭でも、ミゲルさんのように家族を集めて一度、ゴミ出しや皿洗いや買い物を手伝ってほしいとお願いしてみたらどうでしょうか。無理に押し付けることなく、一つでも何か手伝ってもらうことで、自分は家族の役に立っていると思える機会をつくることができます。

そして、手伝ってもらったときに、「ありがとう!」という感謝を伝えられる機会をつくることができます。それは職場でも同じことです。家庭や職場の中で自分が役に立っていると思える役割を持つことが、自信を付ける上で重要になってきます。
今回の自信をつけるポイント
・当たり前のことに光を当てる
・役に立っていると思える機会をつくる
・「ありがとう!」と感謝を言える機会をつくる
続きは、次回のお楽しみに・・・!(^o^)v
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