
大人が変われば子どもも変わる! ~「不足」を「伸びしろ」だと考えるのが秘訣
[ 今度こそうまくいく!自信を無理なくつける方法 ]
10月半ば、秋本番ですね。いかがお過ごしですか。4回にわたりスペインから日本に来たサッカーの名監督・ミゲルさんから、子供たちへあるいは部下に自信をつけるための方法をたくさん教えてもらいました。皆さん、ミゲルさんの教えを実践されているでしょうか。
ミゲルさんは最後に、最も重要なことを私たちに伝えて日本を去っていきました。それは「大人が変われば子どもも変わる」という教え。それはどういうことなのか? 大人は何を変えればいいのか? ミゲルさんに代わってお伝えします。
できないことを「不足」ではなく「伸びしろ」だと考える
ミゲルさんは、普段注目を浴びることのなかった子供たちのプレーに光を当てました。その当たり前のプレーがなければ、点数も入らないし勝つこともできない。そんな側面を明るみにすることで、誰もがチームに役に立っていることに気がつかせてくれました。だから、子どもたちに自信が生まれてきたのです。
この当たり前のプレーに光を与えることができるのは、ミゲルさんが子どもたちのできていないプレーを、「不足」と考えず「伸びしろ」と考えていたからです。
人は相手の足りないものに対して、ネガティブな感情を抱きます。不安や焦りを感じることもあれば、いてもたってもいられずイライラすることもあります。
さらに、不足しているものが仮に手に入ったとしても、やっと当たり前になったのだとして、素直に喜べません。こうして、褒めることもなくなってしまいます。相手はせっかく頑張って、不足分を埋めたというのに…。こうして相手は、自分をできない人間だと決めつけ、どんどん自信がなくなってしまうのです。
しかし、「不足」を「伸びしろ」と意識すれば、ポジティブな感情に変わります。例えばその子を伸ばすために、自分はこの子に対して何ができるかという考えに切り替わります。すると、子どもに決断させたり、ミスをしてもそこから学べばいいと寛大な気持ちになったりすることができるのです。
ミゲルさんは、プレーを通じて子供たちだけではなく、親たちにもできないことを「不足」と考えるのではなく「伸びしろ」だと教えていったのです。

「北風」ではなく「太陽」になれ
実は、子どもたちの自信の量が底をついた原因は、プレーが上手くいっていないからだけではありませんでした。親からのプレッシャーで押し潰されていることも原因だったのです。
このプレッシャーは、親たちが子供たちのできないプレーを「不足」と考えていたからでした。だから親たちは、子供たちに文句ばかりを言ってプレッシャーを掛けてしまっていたのです。
できないことを「伸びしろ」と考える意識は、目の前にいる子供のありのままを受け止める気持ちが必要です。この気持ちがない限り親の期待は、文句の状態から脱せず、子どもにとってプレッシャーになってしまいます。
プレッシャーという恐怖の中では、子どもは自信を付けることができません。ですから子どもに自信をつけるためには、親が子どものありのままを受け止めてくれているという安心が必要です。
イソップ童話の『北風と太陽』に例えると、あれもこれも「できなきゃいけないでしょ!」と文句ばかりを言っているお母さんお父さんは、まるで北風のよう。極寒の日に無理やりコートを脱がせよとしているのと同じです。それでは、お子さんは親から嫌われていると勘違いして、寂しくてコートにくるまりながら涙を流してしまいます。
逆に「今のままでいいのよ!」とありのままを受け止めてくれるお母さんお父さんは、太陽のような存在。コートを脱ぐにしても、自ら納得して決心しながら実行に移すことができます。
ミゲルさんに教えてもらったお母さんお父さんは、ありのままの子供たちを受け止めて、できないところを「不足」ではなく「伸びしろ」と意識を変えることで、子どもたちの太陽となることができました。子どもたちも親から文句を言われなくなったことで、伸び伸びとサッカーに、そして勉強にも集中できるようになっていったのです。

大人は子供にとっての将来の自分、上司は部下にとっての将来の自分。彼らの期待を裏切るな
これは、私から大人のみなさんへのお願いです。子どもにとって大人は、未来の姿そのものです。
大人が自分に自信がないように振舞っていると、子どもは自信がないように振舞い続け、いつの間にか本当に自信のない子になってしまいます。
会社でも上司が自信のないように振舞っていれば、部下も自信がないよう振舞います。子どもにとって大人は自分の未来です。部下にとっても上司は自分の未来の姿となります。
だから、大人や上司は自分に自信を持ってほしい。とはいっても、完璧な人間になる必要はありません。
私を含めて誰もが、いいところもあれば、ポンコツなところも持っています。ミゲルさんが言っているように、最初はできなくたって大丈夫です。
大事なのは、ポンコツな自分も素直に認めて、それを伸びしろと考え、ゆくゆくは伸びていくように焦らずコツコツと続けていくことが大事なのです。こうしたことを親や上司が実践して手本となれば、子どもあるいは部下も同じように真似して、伸びしろの分だけ成長していくでしょう。
そして、家族やチームの信頼関係を築こうと努力し、自らの役割の責任を果たし、本を読んだりセミナーに参加したりして自分を成長させるようにしてください。そんな姿を必ず子どもや部下は見ているもので、きっと真似してくれるはずです。
頑張る自分を褒め続ければ、それを見た子どもや部下も自信を持ち続けることができる
マザー・テレサもガンジーもキング牧師も、最初はほんの小さなことから実践していました。ただ、その小さな実践が積み重なり、最終的には偉大なことを成し遂げています。キング牧師は、「I have a dream(私には夢がある)」と夢を持ち続けたから、周囲も夢を持ち続けることができました。

「ポンコツなところもあるけど、ここまでやってきた」「まだまだかもしれないけど、みんなのために力を尽くしてきた」。そう思うことで、せっかくここまで頑張ってきた自分を褒めてあげてください。
あなたがあきらめずに前に進んでいる姿こそ、子どもや部下への輝かしい未来と自信の源になります。
ですから私もあきらめずに、読者の皆さんのお役に立てるコラムを書き続けますね!
最後に宣伝になってしまうかもしれませんが、拙著『部下が変わる本当の叱り方』(明日香出版社)の「伸びしろスイッチをポチっと押す」の項も、きっと参考になると思います。よろしければ、こちらもご覧ください。

人の可能性を最大化させ、日本を再び世界のリーダーにする」という未来実現のために、全国の企業に対し「会社の未来を担う次世代リーダーを育成する」ための活動を行う。
吉田裕児さんの紹介ページは→こちら
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