「70点に到達したこと」「30点足りないこと」、どっちに注目するのが正解?

[ 今度こそうまくいく!自信を無理なくつける方法 ]

まもなく11月ですね。今年もあと2か月、少し忙しくなる季節です。忙しいからとついお子さんや部下に厳しく当たっていませんか。今回は私のエピソードからお子さんや部下に自信をつける方法をお伝えします。

上司の仕事は部下を責め立てることでなく、部下を動かすこと。その当たり前に、意外に気づかないもの

もしお子さんがテストで70点をとってきたら、どんな言葉を掛けてあげますか? さぼっていたわけでもなく、本人もそれなりに頑張っていたようです。
「なんで、あと30点とれないんだ?」
でしょうか。それとも
「70点とれたんだ。頑張ったね!」
でしょうか。読者の多くの方は後者だと思います。

しかし、建設現場の所長をしていた時代の私は前者でした。満点でないと、できないところを徹底的に責めていました。その結果、部下は心が折れてしまったのです。できないところを注意するのは当たり前だろうと思っていました。ただ、これは後で知ったことなのですが、実はそうではなかったのです。それは私にとって人生初の失敗でした。

それから、「所長の仕事とは何か」と真剣に考え、所長の仕事は部下の心を折ることではなく、部下を活かして仕事を終わらせることだと気づきました。

その事件から3年ぐらいが経って、ある建物の完成が近づきお客様の検査を受けることになりました。検査の準備のため一週間前に協力業者の担当者に頼んでおいた検査書類が、どこまでできているかを確認しました。そんな難しい書類ではないので100%に近い出来を期待していましたが、まだ70%の出来だったのです。

「あと一週間で、本当に完璧にできるのか?」と言いたくなる気持ちが頭を一瞬過ります。でも昔の苦い経験を思い出し、まず「おつかれさま!」と声を掛けることができました。私の仕事は、書類が100%終わっていない彼を責めることではなく、検査に無事合格することだと思い出せたからです。

彼も任された仕事が100%できていないことを自覚していました。だから「残りの30%をどうすればいいだろうか?」という私の問い掛けにも、前向きに意見を出してくれました。そして、残りの仕事を終わらせるために力を尽くしてくれました。

彼は70%をやるために一生懸命に頑張ったのかもしれません。何か困ったことがあったのかもしれません。でも、その理由も聞きもしないで「なんでできないんだ?」と問い詰めたら、彼の自信とやる気は失われていたかもしれません。

大事なことは、彼のできていないことを叱責することではなく、彼を動かすこと。その後、担当の彼は一生懸命に頑張ってくれて、お客様の検査では書類も完璧に仕上がり合格にすることができました。

できていない30%を叱責するよりも、できている70%を認める

多くの上司や親は、できていないところを見て、「なんでできていないんだ?」と叱責します。その気持ちはわかりますが、一生懸命に頑張ってきた「頑張り」や「成果」を認めずに叱責してしまうと、認めてもらえない部下やお子さんは自信を失ってしまいます。

それでは仕事は終わらなくなってしまいます。勉強もしなくなってしまいます。上司や親に認められた「頑張り」や「成果」が、部下やお子さんの自信の源泉になるのです。

人は相手を評価するとき2つのタイプに分かれます。100点満点から相手の欠点を減点していく「減点方式」と、0点から相手のよい部分を足していく「加点方式」の2つです。あなたはどちらのタイプでしょうか。ミスが気になるような場合は、減点方式で評価しています。

赤ちゃんのことを思い浮かべてください。笑ったり寝返りをうったり、ちょっとした成長でも「できたね!」「すごいね~」と手放しで喜びます。そこに、減点方式はありません。あるのは、ひたむきに取り組む赤ちゃんの頑張りと、できたことを素直に喜ぶ大人たちの愛情です。

多くの会社では減点方式かもしれません。でも、あなたの部署やあなたの家庭だけでも、できていないところを叱責する減点方式はやめて、できているところを認める加点方式に変えることができるはず。それだけであなたの部署全員のやる気が上がり、仕事も楽しくなって活気が出て、今までよりもよい成果を収めることだって十分にあり得ます。実際にそのようにしてV字回復した企業も珍しくありません。そして家庭は、笑顔が絶えない幸せな空間に変わるはずです。

私のエピソードの続きになりますが、プロジェクトが終わって、しばらくしてから担当者の彼が訪ねて来ました。「検査にさしかかった時期に、あんな接し方をされたのは初めてでした。今思えばあれが吉田さんなりの叱り方で、とても愛情にあふれていて本当に嬉しかったです。ぜひうちの会社で、その叱り方の講演をしてくれませんか」と講演依頼までいただきました。

私は結果を出すことができ、講演依頼までいただき、これほど嬉しく幸せなことはありませんでした。

しかし、できていることを素直に認めることができなかった昔の私を、今はとても恥ずかしく後悔しています。だから今こうして、読者の皆さんにそうなってほしくないと願って、自信のつけ方をお伝えしています。

最後におさらいです。
×「部下やお子さんのできて“いない”ところを真っ先に“責める”」
〇「部下やお子さんのできて“いる”ところを真っ先に“認める”」

ですから、
「減点上司より加点上司」
「減点ママより加点ママ」(ママはパパにも置き換えられる)
ですよ!
自戒を込めて言っていますが(笑)。


吉田裕児

人の可能性を最大化させ、日本を再び世界のリーダーにする」という未来実現のために、全国の企業に対し「会社の未来を担う次世代リーダーを育成する」ための活動を行う。
吉田裕児さんの紹介ページは→こちら



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