
怒ってもいいんです。大事なのは、怒ったあとに何をするか
[ 今度こそうまくいく!自信を無理なくつける方法 ]
落ち葉が舞い散る季節、今年も1か月あまりになりましたね。多忙を極める師走も近づいてまいりました。周囲が慌ただしくなると、どうしても怒ってしまうシーンが増えていませんか。お子さんがイタズラをしたり、部下が失敗したりすると、どうしても怒りたくなってしまいますよね。
怒るのは、相手を大切に思っている証拠
ここまで[自信を無理なくつける方法]シリーズを読んでこられた皆さんは、怒ることはいけないと思っているかもしれません。でも、怒ってしまうことは仕方がないことなのです。というのも、自分の大切なものを守りたいという本能が働くから。
だから、「怒ってはいけない」と自分を責めないでください。自分を責めることで、さらに自分をイライラさせてしまいます。すると、必要以上にお子さんや部下を怒ってしまうという負のスパイラルに陥ってしまうでしょう。
つい怒ってしまうのは、繰り返しになりますが大切にしているものを守りたいからなんです。相手に「こうなってほしい」「そこから逃げてほしくない」という想いが湧いてくることによります。
元世界的テニスプレーヤー・松岡修造さんが主催するテニス合宿をご存じでしょうか。生徒たちが、松岡さんのもとを訪れ合宿を行い、テニスの腕を磨きます。錦織圭選手もこの合宿を経験しています。テニスが上手になるばかりではなく、精神的にもたくましくなって帰っていきます。

松岡さんの素晴らしいところは、怒ってもちゃんと生徒たちに最後まで向き合うこと。その姿は、感動すら呼びます。
練習中に生徒が自分には才能がないと諦めてしまったとき、プレーを止めて
松岡「何しにここに来たのか、わかるか?」(怒りながら生徒のゴールの確認)
生徒「テニスが上手くなりたくて来ました」
松岡「このまま帰ってもいいのか?」(怒りながらもゴールの再確認)
生徒「……」泣きながら首をヨコに振っている
松岡「君のテニスのやりたい気持ちは、そんなものだったのか?」(生徒の気持ちの確認)
生徒「……」泣きながら首を振っている
松岡「君は、そんな人間じゃないだろう?」(自分の期待をぶつけて励ましている)
生徒「……」泣きながら首をタテに振ってうなずいている。
松岡「あきらめんなよ。俺は君の何倍も悔しい!」(自分の悔しさを伝えている)
生徒「……」泣きながら首をタテに振ってうなずいている
そして生徒は、コートに戻って練習を再開します。
さて松岡さんは、どんなことに注意しているのでしょう。
「いつも冷静でいろ」なんて、誰もできない
松岡さんは、決して冷静な態度でいるわけではありません。それは怒りにも似た感情ではありますが、「大切な生徒がテニスを諦めることから救ってあげたい」がゆえに、諦めることが許せないのです。だから、生徒の目指すゴール、自分の期待、自分の悔しさを真正面から向き合って伝えているのです。
生徒の目指すゴールや自分の期待こそが、この時に松岡さんが守りたい大切にしていることになります。

よく怒ってはいけないと言われます。「怒るとことは自分の感情をスッキリさせるだけだから、相手のためになっていない。だから、相手のことを思って叱りなさい」と言われます。それはそれで重要なことです。
でも、誰もがいつでも聖人君子のように冷静でいられるわけではありません。お子さんがイタズラをしたり、部下が失敗したりすれば、悲しかったり、悔しかったり、残念だったり思うでしょう。いろいろなネガティブな感情が湧いてきますよね。これって当たり前のことなんです。
相手が傷つくのは怒り放しだから
だから、思わず「なにやってんの!」とか「ちゃんと言ってあったでしょ!」と、つい怒鳴ってしまうこともあるでしょう。こんなことを言ったら、相手が傷つくと心配されるかもしれません。でも、相手が傷つくのは、怒った後のあなたの向き合い方次第なのです。
怒られあとに放置されると子どもは、パパやママが自分のことが嫌いになったと思ってしまい、子どもは悲しくなってしまいます。
そうではなく、「怒っちゃったけど、そんなイタズラをしない○○ちゃんが大好きなの!」だと言って抱きしめてあげれば、イタズラをしない○○ちゃんになっていきます。

部下も同じです。「怒ったけど、君にはできると思ったから言っているんだ」と怒った理由をちゃんと説明してあげればいいです。そうすれば、部下は納得します。
怒ったあとに放置しちゃうから、親や上司が何を考えているのかわからないと、子どもも部下も不安になるのです。
「罪を憎んで人を憎まず」というのにも似ています。やったことが問題なだけであって、その人自体の人格に問題があるわけではありません。怒りっぱなしにすると、行動ではなく自分の人格を否定された感じになって自己肯定感が下がってしまうのです。こうして子どもや部下の自信は、みるみると低下していきます。
私に自信をつけてくれた親も先生も上司も、怒ったあとの行動が素晴らしかった
前回の記事で登場した私を思い切り叱ってくれた亡き父も亡き恩師も上司も、最初は怒ったに違いありません。でも、怒ったあとに一緒に謝ってくれたり、なぜいけないのか説明してくれたり、あなたはそういう人間じゃないという想いを伝えてくれていました。だから私は、人の道を外すこともなく、自信を失わずに生きてこれました。

だから、怒ってもいいんです。でも、そのあとにちゃんと向き合うことがすごく大事。子供も部下も、分かってくれます。その向き合い方が強いつながりをつくり、守られているという安心感が生まれ、自分にはできるという自信につながります。
(※参考文献 吉田裕児著『部下が変わる本当の叱り方』明日香出版社)

人の可能性を最大化させ、日本を再び世界のリーダーにする」という未来実現のために、全国の企業に対し「会社の未来を担う次世代リーダーを育成する」ための活動を行う。
吉田裕児さんの紹介ページは→こちら
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