与えているようで奪っている自信の芽 ~「花」よりも「種」をあげましょう~

[ 今度こそうまくいく!自信を無理なくつける方法 ]

ジャガイモ畑で教えてくれた父の教え

今頃になると、私は小さな庭にジャガイモを植え付けます。悪天候や害虫に負けず立派なジャガイモに育ってくれるよう、期待を膨らませながら。そして、ジャガイモを植え付けると思い出すことがあるのです。

それは私が小さい頃、父が裏庭で野菜の育て方を教えてくれた時のこと。父は何から何まで自分でやってしまうのではなく、私に土を掘らせたり種芋を植え付けさせたりと、私に色々とやらせてくれました。失敗はあったかもしれませんが、ジャガイモの収穫時になると自分で育てたという喜びを今でも忘れられません。

父がやればすぐ終わるしもっと上手にできるところを、温かく見守ってくれました。きっと我慢して、私のやることを見ていたのではないかと思います。自信をつけるためには、与えすぎず見守ることが大切であること、これを今回はお伝えします。

よかれと思って助ける。これ、貴重なチャンスを奪っています。

子供や部下が上手くいかなくて困っている時、すぐに正解を出そうとしていませんか。親や上司なので、子供や部下が困らないようにすることは親心であり上司心を出しているので、当たり前のように思ってしまいます。私もそうでしたので、その気持ちはよくわかります。

でも、よく考えてみると、お子さんや部下が上手くいかなかった原因を考えることや、上手くいかなかったことから経験する「ああやってみよう!」「こうすればいいかな?」と試行錯誤する機会を奪ってしまっているかもしれません。

子供の頃やまだ新米社員だった頃を思い出してみると、成長でき自信がついたのは、失敗して先生や上司に怒られ、悲しい思いや恥ずかしい思いをして、その悲しさや悔しさをバネに上手くなれた時ではないでしょうか。

上手くいかなかった時の試行錯誤こそが、その子や部下の成長であり、悔しさから立ち直った実感こそが自信につながります。

私の連載では何度か申し上げていますが、自信とは、自分で自分を認められることであり、自分を好きになれることです。

失敗という困難から自分でなんとかやり遂げた自分は、誇らしく思え、自分を強く好きになることができます。

しかし、多くの親や上司はよかれと思って「こうやればいいよ!」と正解を与え、失敗する体験の機会を奪ってしまっています。

成長とコミュニケーションの機会を奪ってはならない

お子さんや部下が答えが出なくて困っている時は、すぐに答えを与えるのでなく、少し待ってあげれば、自分で考える機会を与えることができます。

例えば、公園で見つけた蝶々(ちょうちょ)に子供が興味を持って「あれ何?」と聞かれた時。すぐに「これはアゲハ蝶だよ」と教えてしまうと、「ああ、そうなんだ」と、子供の好奇心はそこで満たされ進展することはありません。

一方、「きれいな蝶だねー。あとで一緒に図鑑で調べてみようか?」と答えてあげると、子供の好奇心は、親と一緒に図鑑を観てみる楽しさが生まれ、図鑑を熱心に眺めようとし、その蝶々を見つけた喜びとともに解説もしっかり読もうとする、というふうに拡がっていきます。蝶々の名前を知って終わるのとは、得るものも行動することも段違いとなります。

その子はこれからもきっと、何かを見つけたら好奇心を持って自分で調べる習慣が続くでしょう。さらに嬉しいことは、公園でもお家でも、親子のコミュニケーションが増えるようになることです。

部下にしても、会議の司会をやらせて上手くいかない時、すぐに「あれは、こうすればよかったよ」と注意してしまうと、「すみません。気をつけます!」で終わり、あまり自分事として振り返ってくれません。

一方、「今回の司会は、振り返ってどう思う?」と聞いてみれば、部下は自分のミスを探そうとして気づき、自分で修正して自分事にできるので、成長度合いも大きくなります。しかも先の子供の蝶々の例と同じく、自分で考える習慣がいっそう身に付きます。もし必要であれば、部下が答えを出したあとにアドバイスをすればいいのです。

良かれと思って与えている答えやアドバイスが、相手の思考する時間や行動する機会を奪ってしまってしまい、成長や自信の芽を潰してしまっているかもしれません。さらには、親子あるいは上司と部下との大切なコミュニケーションの機会までも奪っている可能性があります。

放ったらかしではなく進捗を見守る

とはいっても、放ったかしにしろと言いたいのではありません。毎日、お子さんや部下を気に掛けることは忘れないでください。

「おはよう!」「どう?」と挨拶したり、表情を見たりして、変化に気づいてあげましょう。違和感があった時には、「何かあった?」とまずは聞いて、状況を把握してください。そのうえで、どこまで考えさせるか、どこから助けの手を差し伸べるのかを考えるといいでしょう。

実は、声をかけるだけでもかなり大事なのです。というのは、人は気にかけてもらっていると思えると、安心できるから。安心は自信をつけるための第一歩です。

でも、いくらやってみてもできない時があります。そんな時は、「頑張ったね!」と励ましてください。「何か手伝えることはない?」と手を差し伸べてあげるのもいいでしょう。お子さんや部下は再起して、またチャレンジすることができますから。

こうして子供や部下は、自信をつける道へ進むことができるのです。どうしようもない時、そばに誰もいないと心が折れてしまいますが、この励ましがあるだけで頑張れるものです。

子供や部下に「答え(花)」を与えることが、本人の自信につながるとは限りません。子供や部下が自らの手で「可能性(種)」を蒔き、「答え(花)」を咲かせるまでの挑戦という試行錯誤の過程で生まれる好奇心や喜びこそが、本人にとって最も大切なことです。それが自分を好きになれる自信にもつながるのです。

最後に、「花」よりも「種」をくれた父に感謝です。ありがとう!


人の可能性を最大化させ、日本を再び世界のリーダーにする」という未来実現のために、全国の企業に対し「会社の未来を担う次世代リーダーを育成する」ための活動を行う。
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