それ、応援じゃなくて強制です。――自立を促すには、理想の未来の語り合いが大事

[ 今度こそうまくいく!自信を無理なくつける方法 ]

「自立」って言葉で説明できますか?

自立するとは、そもそもどんなことでしょうか。自立は大事なことだと分かっていても、多くの人が言葉で表現することが難しいと思ってしまうでしょう。

例えば、会社であれば上司の指示なく、部下がチームの目標達成に向けて、誰に言われることもなく自分のできることを精一杯にやり出し、できないことにもできるように挑戦している。
お店であれば、店長に言われなくてもお客様が来店されたらスタッフが笑顔でお出迎えして、お帰りのときは丁寧にお見送りし、お店が汚れていたらすぐに掃除する。
こんなことを実践している状態が、自立しているといえます。

お子さんなら、自分からすすんで勉強したりお手伝いをしたりするようになれば、自立しているとなるのではないでしょうか。

一方、自立できないと、上司は部下に、店長はスタッフにやらなければならないことを一つ一つ指示しなくてはなりません。思った通りにできない部下やスタッフを見ては、イライラすることもあるでしょう。親であれば、「なんで、うちの子はこうなの!?」と、怒ってばかりのパパやママになってしまうことも…。

「目指したい環境・自分の姿」を語ってもらう。一流に触れさせるのも大事

では、部下やスタッフ、お子さんが自立していくために何をすればいいでしょうか。

上司であれば、「こんなチームにしたい」と目指す理想像を伝えましょう。「メンバーがそれぞれの力を出し合って助け合うことで、ゴールを達成し笑顔で輝き続けているチーム」にしたいと。

そして、部下たちには「〇〇さんは、どんなチームにしたい? どんな自分でいたら嬉しいかな?」と問い掛けます。アイデアを取り入れながら「そうか、いいね! そんなチームにしていこう。〇〇さんの活躍している姿が想像できるよ」と伝えてください。

店長であれば、「お客様が楽しい雰囲気の中、私たちのサービスを受け感動して帰っていく。こんなお店にしたい!」と伝えます。
スタッフには「〇〇さんは、どんなお店にしたい」と聞きながら「それ、いいね!」とアイデアを取り入れます。

「そうすると、〇〇さんはこのお店でどんなふうになれたら嬉しいの?」と、スタッフ自身のなりたい姿も聞きます。「そうなりたいのか。楽しそうに接客している君の姿が想像できるよ」とスタッフが活躍している姿をイメージさせてあげましょう。

であれば、こんな家族にしたいというのを例えば、「パパもママも笑顔で仲よくしている家族にしたい」と伝えましょう。「〇〇ちゃんは、どんなふうになれれば嬉しいかな?」と、必ず聞いてあげてください。「僕は(わたしは)パパとママが喜んでくれるようになりたい」と答えてくるかもしれません。

そんなとき「パパとママは、どんな〇〇ちゃんだと嬉しいと思う?」と優しく聞いてあげるのがポイント。ただしここでは、勉強とかお手伝いをして欲しい気持ちは捨てて、お子さんに忖度(そんたく)が働かないようにしてあげることが大事です。お子さんの素直な気持ちが出てくるようにしましょう。

お子さんが、スポーツ観戦や音楽、芸術の鑑賞などに興味を持ち始めることになれば、一流のものに触れさせてあげてください。「こんなふうに活躍したい」「こんな世界があるんだ」と、子供心に感動を味わわせて、なりたい自分のイメージをさせてあげましょう。

脳をうまくだますのが大事

次に、どんな自分になりたいか言葉にさせてあげます。
部下もスタッフも、頭の中で思っていてもなかなか言葉にできません。だからこそ対話を重ねながら、なりたい自分を少しずつ具体的にしてもらいます。

上司や店長「そうなんだ。お客様から信頼される人になりたいんだ」
部下やスタッフ「そうなんです。お客様の困ったことを解決できるようになりたいです!」
と対話を重ねながら、丁寧に部下やスタッフがなりたい自分のイメージを言葉にできるようにしてあげましょう。

部下やスタッフは、なりたい自分の姿が鮮明になってきます。脳科学の世界では、脳は現実と想像を区別できないといわれています。だから鮮明なイメージをつくることで、脳は勝手に「なりたい自分」になろうとします。それが自立への一歩となるのです。

「悪魔や鬼になりたい!」と言われても応援する

お子さんの場合はどんな自分になりたいかと聞くと、アニメの影響もあるせいか、『鬼滅の刃』の炭治郎や、『プリキュア』の和実ゆいなどと答えるかもしれません。

でも、アニメや漫画だからとあきれ返ったりしないで、「そのキャラクターになってどんなことをしたいの?」までしっかり聞くようにしましょう。「世の中をよくしたい!」とか「学校とかで、みんなと助け合うようにしたい」と、キャラクターの先にある想いを言ってくれるはずですので。

注意してほしいのは、どんな「なりたい自分」でも否定しないこと。悪魔や鬼になりたいと言ってきたら、ビックリするかもしれません。しかしここは我慢して、「そうなんだ…」と受けて止めてください。

いったん深呼吸してから「どうして、悪魔(鬼)になりたいの?」と聞いてあげましょう。
「悪魔になって、悪い奴らをやっつけるんだ。世界を平和にするんだ!」と、悪魔になりたいお子さんの本当の想いが出てきます。

親の期待する「なりたい自分」が出てこなくても、それを否定せずに、その先にある想いを聞いてあげてください。必ず、誰かのため、思いやり、成長したいという良心があります。大切にしてあげましょう。

「自立の強制」ではなく「応援」にするために…

「なりたい自分」が言葉にできたら、上司も店長も親も、「なりたい自分」になれるように応援してあげましょう。
「『なりたい自分』と違っているときは、『違っているよ』と声を掛けるからね!」と笑顔で伝えてください。
そのような声掛けは、自立の強制ではなく応援になりますから。

次回から、具体的な伝え方と心構えをお伝えしていきます。お楽しみに!

※参考文献:拙著『部下が変わる本当の叱り方』明日香出版社


人の可能性を最大化させ、日本を再び世界のリーダーにする」という未来実現のために、全国の企業に対し「会社の未来を担う次世代リーダーを育成する」ための活動を行う。
吉田裕児さんの紹介ページは→こちら

【吉田裕児さんの著書、そして最近ハマっているものをご紹介します!】

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。