実は簡単! 感情をコントロールして、相手の自立まで促せる「効果的な伝え方」

[ 今度こそうまくいく!自信を無理なくつける方法 ]

怒るという反応は、カンマゼロ秒では起きない

できない部下やスタッフ、あるいは言うことを聞かない子供を見ると、感情的になってしまうことが多くあります。実は、私もその一人でした。

そもそも、なぜ感情的になってしまうのか? それは、前回の記事でお伝えしたように脳のメカニズムによるものです。こうなって欲しいと考える「思考」を司る大脳新皮質が機能する前に、「怒り」という感情を司る大脳辺縁系が反応してしまうからです。

そんな話を論理立ってすると、「感情的にならず冷静になるのは、無理ってことじゃん…」と諦めたくなってしまいますが、チャンスはあります。実は、刺激を受けて怒るという反応まで、一瞬だけ時間があります。ほんの一瞬です。よく怒りを抑える方法として「6つ数を数えなさい」と言われているのがこの例です。

自分を実況中継してみる

この「6つを数える」方法も有効ですが、私の一番のお勧めは、自分を実況中継する方法です。

「え、実況中継?」と思われた方もいるかもしれません。スポーツ番組でアナウンサーが実況中継しているところを思い出してみてください。例えば、駅伝でランナーが走っているとき、アナウンサーがランナーのことを「体調も良さそうか、気持ちよく走っています」「もう限界か? 苦しそうです」と、ランナーを観て感じたことを言葉にして私たちに伝えてくれます。

これを真似してください。自分がアナウンサーになったつもりで自分を実況中継してあげるわけです。「今は体調も良く快適です!」「う~ん、今日は体調不良で何もやる気が出ない様子…」などと言葉にします。この感情を言葉にする一瞬が、思考を司る大脳新皮質を機能させるチャンスとなるのです。

怒っている自分を認めると、なぜ自立をサポートできるのか?

例えば、部下が企画書の期限を守れなかったとき「今、私は怒っている」と自分の感情を言葉にします。思考を司る大脳新皮質が機能します。そして、つかさず「いつも期限を大事にしている私が期限を守らない部下に怒るのはもっともだよな~」と怒っている自分を認めてあげてください。これを妥当性承認といいます。

怒っている自分を認めてあげることで、感情を司る大脳辺縁系が穏やかになります。こうなれば、思考を司る大脳新皮質の出番。「私のやりたかったことは何だっけ?」とやりたかったことを思い出すことができます。
「企画書の提出期限を守れなかった部下を怒って、凹ませることが私の仕事だろうか? いや、絶対に違うだろう! 部下が自分で考えリカバリーしていくことをサポートするのが、本来の私の仕事だろう」と冷静になれます。

冷静になれれば、「○○さん、期限を守れなかったことは残念。でも、ここからが大事。この先、どうする?」と次のするべき行動を考えさせられます。部下は自分の責任を感じ同じ過ちを繰り返さないように注意しつつも、次の行動を考え実践することができます。これが自立への一歩です。

ゲームばかりしているお子さんも同じ対応でOK

親も同じです。お子さんがゲームしかしていないとき、「ゲームばかりしてないで勉強しなさい!」と怒りたくなってしまいます。

そのときも、自分を実況中継してあげるのです。「私は怒っている」と自分の感情を言葉にしてあげれば少し冷静になれます。そして「勉強して欲しいと思っている私が怒るのはもっともだ」と怒っている自分を認めてあげてください。
すると「私のやりたかったことは何か?」と自分のやりたかったことに気づくことができます。

そうすれば、怒ることなく「ゲームをしてても○○ちゃんが好きなことには変わらないけど、勉強する○○ちゃんは、もっと好き。だから両方できるように、ゲームをする時間と勉強する時間を決めようか?」と攻撃的ではない提案をお子さんにすることができます。

ただ、最初から自分の実況中継がうまくいくわけではありません。最初は一勝九敗になる可能性もあります。
でも、「伝え方がうまくなりたい!」という目標を忘れなければ大丈夫で、普段から自分の実況中継をやり続ければ、必ずできるようになります。やり続けることで習慣になり、自分の感情を自然とコントロールできるようになります。

怒ってしまうのは悪くない。自分が大切にするものに気づくチャンスだから

自分を実況中継するメリットは、他にもあります。それは、自分の大切にしていることに気づけること。

妥当性承認のところでお伝えしましたが、怒るのは、部下が期限通りに企画書を提出するという望みや、期限が大事だという自分の価値観が、蔑(ないがし)ろにされたからです。

そうなんです。自分の価値観や望みを蔑ろにされたとき怒ってしまうのです。
とはいっても、価値観や望みは自分を動かすエネルギー。価値観の使い方は別の機会にお伝えするとして、自分の価値観に気がつけることは、自分の怒りの琴線がどこにあるかもわかります。

何か刺激があったとき、「だから私は怒るんだ」と、自分を実況中継できて感情的にならずに済みます。

このように怒りの生まれるメカニズムを理解できれば、怒りという感情が優先しないようにできます。怒りが発動するまでのタイムラグを使って、自分を実況中継してあげれば、部下やスタッフ、お子さんに攻撃的ではなく自立を促す効果的な伝え方ができるようになります。
ぜひチャレンジしてみてください!


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