ほとんどの俳優が思っていること「悪役を演じたい」 ~主演俳優・コウガシノブ氏に直撃インタビュー!(後編)~

映画『電車を止めるな!~のろいの6.4km~』の主演を務めるコウガシノブ氏。自身初となる鉄道会社社長役を演じたわけであるが、これまでたくさんの映画や芝居を経験してきた中で、楽しかったことや辛かったことなど、胸中をここに明かす。

普段私たちが知ることのできない、映画や舞台の裏側を根掘り葉掘り聞いてみた。どのようなキッカケで役者を目指したのか、一体どうしたら役者になれるのかという質問をぶつけた。これから俳優や役者を目指す方には必読の内容が盛りだくさんだ。テレビや映画の舞台裏をのぞいてみよう。

出演キャストも驚く、映画『電車を止めるな!』の異例のスケジュール

:僕たちは映画を作る側になったことはありません。シナリオやスケジュールの決め方などの業界ルールがあると思いますが、差し支えない範囲で教えていただくことはできますか?

コウガ:はい。僕はメインが舞台役者です。普通の映画は大手プロダクションの間で話が決まるので、僕のように、どこのプロダクションにも所属していない、いわゆる「無所属」の役者はテレビドラマや映画などに出る機会はめったにありません。その僕が主役に抜擢されたということは本当に異例だと思います。

:そういうことがあるんですね。

コウガ:はい。そして今回の『電車を止めるな!』に関しては全てのセオリーを覆した現場でしたね。映画って規模にもよりますけれども、通常撮影期間が2~3カ月あって、それから編集などを行い、上映されるまでに1年くらいかかるんですよ。それを『電車を止めるな!』では「1カ月間で撮影を終えて、2か月後に上映します」と言われたんですよ。

:すごっ!!

コウガ:「ウソでしょ!?」って思いましたね(笑)。「Vシネマか? そんなことできるの?」と思ってたら、一応1カ月で本当に撮り終わったんですよ。しかし、出来上がったものを観て修正していくうちに結局半年くらい掛かりました。

:すごいですね。良い映画を作るためには期間が掛かるのですね。僕は出来上がったものを何も考えず観ていましたが、これからはちょっと映画に関する考え方が変わりそうです。

上京するも何も結果を出せず…。28歳で転機が訪れる

:さて、これまで映画のお話を伺ってきましたが、コウガさんが役者になろうと思われたキッカケやエピソードを教えていただけますか?

コウガ:僕が芸能界に興味を持ったのは20歳の時に、テレビドラマの『あぶない刑事』で柴田恭兵さんが楽しそうに芝居しているのを観たのがキッカケです。元々柴田さんが好きだったのですが、いつしか「観る側から観られる側にいきたい」と思うようになったんです。

:観る側ではなく観られる側になりたい! 

コウガ:そうなんですよ。それから大学に通いながら、俳優養成所に通い始めたんです。そして、結果的に出席日数が大学よりも俳優養成所のほうが多くなって、無事に卒業できたのが養成所のほうだったという…(涙)。大学は4年まで行って中退しました。

:もう、その頃から俳優への道へのめり込んでいったのですね。

コウガ:それで25歳にときに福岡から上京して俳優を目指すわけなんですが、初めて一人暮らしをしたのですけど、今まで親に生かされていたんだな、とそこで実感しました。一人で生活するのが大変すぎて、芝居どころではなくなってしまったんです。

:そうだったのですね。

コウガ:そこからアルバイトで食いつなぐ日々が続いて、気が付いたら28歳になっていました。30歳を目前に何もできない現実と向き合ったら、急に恐怖が襲ってきまして…。「30歳になっても今のままだったら、一生変わらないな」と。そこでスイッチが入りました。

:スイッチとは?

コウガ:20歳の頃は変なこだわりがありまして、舞台とかミュージカルが大嫌いだったんです。急に歌い出したりとか、そういうのが自分には合わないなって。でも、28歳になって藁にもすがる心境ですよね。何でもいいからチャレンジしないとダメだと思って、ネットで調べまくりました。

:28歳がターニングポイントだったのですね。

コウガ:はい。そうこうしているうちに、劇団に所属している友達から「舞台に一緒に出てみない?」と連絡があって、今までは断っていたのに、その時は即答で「やる!!」と言っていましたね。それが時代劇の悪役だったんですけれども、実際に出てみたらおもしろかったんですよ。お客さんの反応が直に伝わってきますし、撮り直しのきかない一発勝負の世界に惚れこみました。失敗しても続けなくてはいけないし、失敗自体をお客さんに気付かせないテクニックを身に付けたりだとか。

:確かに。舞台にテイク2とか無いですもんね!

コウガ:その緊張感があったりしたことで、ドラマより、舞台の方が気持ちが入れやすいんです。映画とかドラマって、ほぼ順番通り撮らないんですよ。いきなり最終回から撮ったり(笑)。最初から順番に撮っていけば気持ちが入れやすいんですけれど、そこが難しいところなんですよね。

:全然知りませんでした。

コウガ:一方、舞台は「起承転結」そのままストーリーが進むので感情が入れやすいんです。ですから、演技が好きな方は舞台をやりたがるんですよね。それ以来、舞台にハマっちゃって現在に至りますね。

意外や意外、俳優が楽しいと最も感じるのは悪役のとき!

:では、これまでに演じた中で、楽しかった役や難しかった役など、印象に残っているものはありますか?

コウガ:これは僕だけじゃなく、様々な俳優さんも言うと思いますが、悪者を演じているときが一番楽しいんですよね。

:悪者ですか? カッコいい正義の味方みたいな役ではなくてですか?

コウガ:その中でも、本当にクレイジーで一癖も二癖もあるようなジョーカーのような“超悪者の役が大好きで、いつかそういう役をやりたいですね。今までもタチの悪いIT企業の社長役や、時代劇で悪の武将を演じたりしたのですが、めちゃくちゃ気持ち良かったですね。僕、武将とか侍とか時代劇が好きなんですよ。

:時代劇って、“やる”か“やられるか”の世界だと思うんですが。そういうスリリングな役がお好きなんですか?

コウガ:はい。なんかこうキリキリした臨場感がたまらないですね。

:逆に、これまでに苦労した役などはありますか?

コウガ:そうですね。苦労というか苦手だったのが自分とは真逆な役で、天然キャラを演じたときですね。観ている人を笑わせるのは得意なんですけど、「狙って笑わせにはいかないで」と言われて…。僕、見た目がこんなんじゃないですか? それなのに、天然のボーッとしている頼りないような、僕に全くないキャラを求められるわけですよ。あれは二度とやりたくないですね(笑)。

役者を目指している人必見。最も大切なことはコレだ!!

:役者さんって大変なんですね。本当に勉強になります。って、これから役者さんを目指すというわけではありませんが(笑)。また、僕のような素人にとっては、台本1冊分のセリフや動きを覚えて演じるのは、とてつもないことに思いますが、才能でしょうか、それとも慣れでしょうか? もし、トレーニングをしたら僕にもできるでしょうか?

コウガ:できますよ! 役者って資格があるわけでもないので、極端な話ですが、今から始めることもできますし、どんな小さな舞台でもいいので一回でも出演すれば「役者」って名乗れますから(笑)。もちろん慣れはあります。セリフを覚えたり、舞台慣れしてるかどうかなど。年々歳をとる度に、セリフが頭に入ってこなくなりましたけどね…。

:色々出てきましたが、一番大切なことは何だと思いますか?

コウガ:そうですね。やっぱり「センス」ですかね。

:センスですか?

コウガ:別にキッチリ演技の基礎を叩きこんで、名門の〇〇塾だったり、〇〇座と呼ばれているところに入門してということではなく、センスや感性がある人は面白い芝居をしますよ。

:TV番組で、台本の中に「(ここはアドリブで)」と書いてあるというのを見たことがあるのですが、そういうところでセンスや感性が出てくるのですか?

コウガ:そうです、それこそ感性ですよ。実はミュージシャンやお笑いの方って芝居ができる方が多いんですよ。作詞作曲したりネタを書いたりするときに、イメージを膨らませているわけですから。役者って想像力が大事なんですよ。その世界に入り込める方が向いています。


:これから役者を目指す方に、この記事を読んでもらいたいですね。「役者になりたい!」と思ったらどんな努力が必要でしょう? 入口がわからない職業NO.1という感じがしますが。

コウガ:普通の仕事って、努力すればしただけ結果が返ってくることが多いじゃないですか。しかし、役者は唯一“やった努力が必ず報われるとは限らない仕事”で、どんなに頑張っても、報われない人は報われないんです。努力って何だろうと感じます。だからと言って努力しなければ夢は叶わないし…。でも才能とセンスがある人は、努力しなくても上に行けちゃう人もいるんです。そんな世界なので、人によって入口はバラバラです。

:物凄く過酷な世界ですね…。

コウガ:でも、そんな中でもオススメできることがあります。「ワークショップ(参加者が主体となる体験型講座)」です。とはいっても、片っ端から受けるのが良いのか?というわけではなくて、“誰が主催者なのか”にこだわったほうがいいです。映画を数多く撮られている監督さんがやってたりするものもありますが、そういうのがオススメです。監督にアピールするチャンスもあるし、気に入ってもらえればその監督の作品に出られるかもしれませんからね。

:人間関係作りって大切なのかもしれませんね。

コウガ:そうなんです。その監督の下で知り合った役者の紹介でお仕事をもらえることもありますから、人脈作りには最適です。ですので自分が観て、すごいと感じた劇団や監督が主催しているワークショップに行ってみることをオススメします。

:これは物凄く有益な情報ですね。

コウガ:あとは、芸能プロダクションって本当にたくさんあるのですが、安易にどこでもいいからって入らない方がいいです。小さい事務所はマネジメントが行き届かないこともあります。逆に大きいところはライバルが多すぎて、自分の面倒を見てもらえないこともあります。ですので慎重に選んでください。

:本当に貴重なアドバイスをいただき、ありがとうございます。現在はSNSが普及していますが、有名になって芸能界デビューしたい方も多くいらっしゃるからだとも思います。今後のコウガさんの映画や舞台についてお聞かせいただけますか?

コウガ:インターネット番組『鳥越アズーリFM』という毎週金曜16時から生放送『ウソでしょっ!もう金曜日?』のメインパーソナリティをやらせてもらっています。アーカイブもご覧になれますのでよろしくお願いいたします。

:これは皆さん、是非ご覧ください。最後に、銚子電鉄さんと読者、ファンの皆さまに一言お願いいたします。

コウガ:銚子電鉄さんとは一心同体です。今後もできることがあったら何でもしていきたいと思います。また、読者やファンの皆さま、これからも皆様に喜んでいただけるような作品作りに励んでまいります。コロナ禍ではありますが、エンターテインメントで皆さまを笑顔にしていけたらと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

:コウガさん、本日は誠にありがとうございました!

コウガ:ありがとうございました。

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 電車を止めるな!公式サイト
 
https://www.dentome.net/
 
 上映スケジュールは
 公式サイトよりご確認ください。
 みなさまのご来場をお待ちしています。

 

コウガシノブ
1974年生まれ、福岡県出身。高校卒業後に大学に進学するも演劇の世界に魅了され、大学ではなく俳優養成所を卒業することを選ぶ。その後、単身上京し、2000年に初舞台を踏む。役者仲間とユニットや劇団などを作るも後に解散し、フリーで様々な劇団に出演。現在は舞台にとどまらず、イベントやパーティーのMC、ラジオパーソナリティー、演出、イベントプロデュース、そしてタレントの西脇理恵と音楽ユニット「無礼講・委員会」を結成するなど、幅広い活動を展開している。


本記事は「作家たちの電脳書斎デジタルデン」編集部作成、2021年7月10日掲載記事を転載したものです。内容・状況などは記事作成当時のまま掲載しています。

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